第18話

人間は、動物だ。

力の許す限り、どこへでも、行ける。

自分の行きたいところへ…


危険な場所から、安全なところへ…


もっと幸せに暮らせるところへ…


たとえ、宇宙の果てだろうと…


たとえ、別の宇宙だろうと…


幸せに生きて行けるのなら、そこへ行けばいい。


彼女は、虹色の泪をこぼして、訊いた。


「黄色キ大地ノ国で栽培や飼育や養殖している生き物たちを、みんな避難させるには、どうしたらいいのかしら?」

「大陸間鉄道の輸送力で、何人分の食料を外国に運べるか、計算してみます。

1人が1日に食べる必要のあるカロリーを3000キロカロリーとします。

主食のジャガイモで概算します。

3キログラムあれば足りるはずです。

大陸間鉄道で、黄色キ大地ノ国から灼熱ノ岩流ルル国に、1日に33000人運べます。

仮に、灼熱ノ岩流ルル国に40万人移住者がいるとすると、毎日40万人分の食料を大陸間鉄道で運ぶ必要があります。

人間の代わりにジャガイモを運ぶとすると、座席ひとつに12.12人分のジャガイモを載せると、1日に40万人分のジャガイモを運べます。

12.12人分のジャガイモは、37キログラム以下で、人間1人の体重の平均値よりも大幅に軽いので、列車の積載可能重量に余裕を持って収まります。

体積も、座席に余裕を持って載せられます。

なので、この想定なら、移住者全員の食料を大陸間鉄道で運べます。

移住者の半数が、熱キ水出ル国にいるとすると、ざっと、往復に2日かかるので、列車の半数を割り当てると、1日に運べる量が半減します。

灼熱ノ岩流ルル国にいる20万人分は、前の想定と同じように運べます。

熱キ水出ル国への輸送量を増やすために、ジャガイモを2倍載せると、座席ひとつに74キログラム以下のジャガイモを載せることになります。

これでも、列車の積載可能重量に余裕を持って収まります。

体積も、2倍になっても、座席に十分収まります。

つまり、この想定でも、移住者全員の食料を、毎日、大陸間鉄道で輸出出来ます。」

「じゃ、巨大噴火が予知されるまでは、自給自足が続けられるんだね!!」

「40万人みんな移住しちゃったら、食料を生産する人がいなくなっちゃうから、1万人くらいは、居残って、生産を続けることになるわね!!」

「1万人いれば生産を続けられると思います。」

「噴火が予知された日から噴火までのことを考えてみようよ。

食料のほとんどは、カロリー的にも、重量でも、体積も、ジャガイモなので、それだけ考えてみるね。

40万人分フルに生産しているから、どれくらいの量のジャガイモが、地上の農場と地下農場にあるか…

ジャガイモの苗は、芋を一部切って埋めるだけで、また収穫出来るようになる。

苗を植えてから、収穫出来るまで、60日間いるとすると、作付け面積の60分の1ずつ、毎日、収穫することになる。

1日に収穫するジャガイモの量は、40万人分とする。

3キログラム×40万=1200トンだね。

もし、1万人の人が、農場にあるジャガイモ全てを、苗や育っている途中のものも含めて、一緒に持って、列車に乗れれば、全部のジャガイモを、大陸間鉄道で運べることになる。

1日分を1万人で分けると、ひとりあたり120キログラムになる。

苗の重さは、概算で考えると、1日分の約30倍ぐらいかと思う。

つまり、ひとりあたり120キログラム×30=3600キログラムのジャガイモを運べればいい。

大陸間鉄道は、1日33000人運べるから、3日で99000人運べる。

1万人乗ると、ひとりあたり9.9席使える。

1席あたり120×30÷9.9≒364キログラム載せれば、運べる計算になるけど、リニアモーターカーの大陸間鉄道の積載可能重量を、多分オーバーしてしまうね…」

「ひとりあたりどれくらい載せられるの?」

「乗客一人で100キログラム、カバンなどの手荷物は、列車の荷物用スペースに積むのですが、100キログラムとして、合計200キログラムまで載せられます。」

「…

引き裂カレル大地ノ国に行く路線が完成すれば、ざっと、使える座席が2倍になるから、ひとりあたり19.8席使える。

そのうちの1席は、人が座って、その手荷物スペースには、その人の荷物を載せるとすると、ジャガイモを載せられるのは、18.8席とその手荷物スペースということになるね。

1人あたり200×18.8=3760キログラムまで載せられるから、3600キログラムのジャガイモ全部を運べる!!」


彼女は、虹色の瞳からこぼれた泪を拭いて、ニッコリした。


「引キ裂カレル大地ノ国への路線が完成すれば、黄色キ大地ノ国の栽培している植物や飼育している動物や養殖している生き物たちを、みんな避難させることが出来るのね!!」



人間が生まれてから、その住処すみかは、次第に広がって来た。


アフリカから始まった大いなる旅は、南アメリカの南端まで到って、そこで終わったかに見えた。


しかし、人間たちの旅は、実は、まだ、始まったばかりだった。


彼女は、泣き腫らした目を、ウルウルさせながら、訊いた。


「黄色キ大地ノ国で栽培や飼育や養殖していた生き物たちを、外国に避難させたあと、どうしたらいいのかしら?」

「主食のジャガイモについてまず考えます。

40万人分のジャガイモを毎日収穫出来る地上と地下の農場の全てのジャガイモの苗を、3日間で、畑から抜いて、1万分の1の重さの3600キログラムづつに分けて、農場から大陸間鉄道の駅まで運んで、避難する人と一緒に、19.8≒20席と、列車の荷物用スペースの乗客19.8≒20人分のスペースに載せると、全てのジャガイモの苗を、外国に運べます。」

「ジャガイモの苗を畑から抜くのを人手でやると、とうてい3日間では間に合わないだろうから、コンバインのような収穫機が必要だね。」

「回転する軸に立てたフォークで、ジャガイモの葉を引っ掛けて、畑から抜いて、収穫出来る大型の収穫機が使われています。

それで、芋の生育途中の苗も、葉がある程度伸びているものは、収穫…というか、畑から抜けるでしょう。」

「苗を植えたばかりで、葉が出て無いものや、葉が小さくてコンバインのフォークに掛からない苗は、人間がひとつひとつ抜いていくしか無いわね…」

「集めたジャガイモは、人間がひとりで運べる重さ、たとえば、10キログラムづつに分けて、片手でも持てるような袋に入れて、乾燥しないように密閉して、かご型のカートに載せて、カートをトラックに載せて、農場から大陸間鉄道の駅まで運んで、カートを駅のホームまで運んで、可能なら両手にひとつづつ、袋2つづつを持って、重いようなら、ひとつづつ持って、列車の客席ひとつに最大10個=100キログラムづつまで載せて、列車の1席分の荷物用スペースにも最大10個=100キログラムずつまで載せて、人と積むべきジャガイモを全部列車に載せたら、すぐに出発させればいいね!!」

「トラックは、毎日ジャガイモを駅に運ぶ、電動自動運転のものがあるはずです。

列車への積み込みは、もちろん、専門の人夫さんたちに任せて、出来るだけ手早くしたほうがいいでしょう。

避難する人ひとりあたり10キログラムの袋×360個づつを、列車に載せなければなりませんから…」

「外国に着いて、列車からジャガイモを降ろす時は、外国の人夫さんたちに手伝ってもらえば、助かるわね!!」

「黄色キ大地ノ国で、ジャガイモを列車に積み込む人たちは、列車の最後の便に乗って避難することになるね。」

「ひとりあたり3600キログラムを、トラック1台に積むとすると、のべ1万回、農場から駅に運ぶ必要があります。

3日間の1日あたり3333回とすると、1台が1日に11回農場と駅の間を往復すれば、約300台のトラックが必要です。

1往復あたりの時間は2時間以上取れる計算になります。」

「農場からのジャガイモの出荷は、毎日40万人分フルに行われているはずだから、可能な限り自動化されているはずだね。

いつもと違うのは、ジャガイモの芋だけではなくて、苗もパッケージして出荷することと、いつもは、1日に作付け面積の60分の1を収穫しているけど、3日間で全部収穫…というか、畑から採ることだね。

だから、いつもの20倍の作付け面積のジャガイモの苗を、畑から採る必要があるね…」

「コンバインの収穫スピードが重要ね…」

「収穫機は十分な台数があります。

通常は、1日に1時間以内で、コンバインによる収穫が終わります。

ドライバーを交代させて、3日間24時間フルに稼働させれば、十分可能でしょう。」

「ジャガイモを運ぶ目処は立ったね。

他の栽培や飼育や養殖している生き物たちについて考えてみようよ。

これらの生き物の重さが重要なんだ。

どれくらいになるだろう?」

「ジャガイモ以外の植物は、麦や、野菜工場で栽培しているさまざまな野菜や果実などがあります。

ただ、カロリーや重量で言えば、ジャガイモの5%以下です。

飼育している動物は、羊ですが、非常に稀少なので、早いうちに、外国に連れて行ったほうがいいでしょう。

養殖している魚や貝やエビやカニや水草なども、カロリーや重量で言えば、ジャガイモの1%以下です。

やはり、稀少なものも多いので、移住が始まった早い段階で、外国に運んだほうがいいでしょう。」

「とすると、1万人のひとりあたり、麦や野菜や果物などを、3600キログラムの5%=180キログラム運べばいいのね!!」

「ジャガイモと合計すると、3600×1.05=3780キログラムだね。

ひとりあたり3760キログラムまで載せられるから、20キログラムオーバーするけど…

それぐらいなら、乗客に割り当てられた積載荷重に収まると思う。

乗客の席に、乗客の体重を含めて、100キログラムまで載せられるからね。

体重100キログラム未満の乗客の足元に、分散して置かせてもらえばいいね。

たとえば、体重70キログラムの人の席には、30キログラムまで、野菜などを置けるから…

手荷物スペースについても、乗客一人分につき、100キログラムまで載せられるから、乗客の手荷物の重さをそれぞれ計って、食べ物に充てられる重さを計算して、その分を、手荷物スペースに載せてもらえばいいね。

たとえば、手荷物の重さが50キログラムの場合は、50キログラムの野菜などを載せられるから…

あとは、外国に着いてからどうするか、が問題だね…」

「そのまま食料に加工するのがひとつ考えられます。」

「…

それは、他にどうしようも無い場合に、最後の選択肢として考えましょ…」

「まずはジャガイモだね…

60分の1は、ふつうのジャガイモとして食料に出来るね。

収穫のタイミングだったからね。

あとの苗は、出来れば、どこかに植え直したいね…」

「…

国々で増産のための地下農場や野菜工場を拡充させているのよね…

地中を掘り拡げて…

そこに植え直させてもらえないかしら?」

「…

可能だと思います。

掘り拡げられた地下農場では、収穫したジャガイモの一部を切り分けて、苗として、畑に植えて、作付けしていきます。

それらの代わりに、運んだジャガイモの苗を植え直せば、再び生育するでしょう。

苗にするはずだったジャガイモは、余剰分として、備蓄にまわせます。」


彼女は、虹色の瞳を輝かせて、笑った。


「やった!!

黄色キ大地ノ国の栽培や飼育や養殖している生き物たちを、みんな助けられるわね!!」



人類の大いなる旅の次の目的地は、どこだろう?


北極?

南極?

海?

月?

スペースコロニー?

火星とその衛星?

金星?

水星?

小惑星帯?

木星とその衛星?

土星とその衛星?

天王星とその衛星?

海王星とその衛星?

冥王星とその衛星?

オールトの雲の彗星たち?

アルファ・ケンタウリ?

他の恒星系?

銀河系?

アンドロメダ大星雲?

他の銀河?

別の宇宙?


それとも、仮想の宇宙?


彼女は、晴れ晴れとした笑顔で、訊いた。


「黄色キ大地ノ国から外国に運んだ、ジャガイモ以外の栽培していた野菜や果物や、飼育していた羊さんや、養殖していた生き物たちは、どうしたらいいのかしら?」

「ジャガイモ以外の栽培していた麦や野菜や果物は、ジャガイモと同じように、掘り拡げられた地下農場や、拡充された野菜工場に、植え直せるでしょう。

羊は、地下の牧場で飼育されているので、そこに預けることになりそうですが、飼育施設のキャパシティーが足りないようなら、新たな地下牧場を作る必要があるでしょう。

養殖していた生き物たちは、養殖施設に預けることになりそうですが、こちらも、キャパシティーが足りないようなら、新たな養殖施設を作る必要があるでしょう。

ただ、養殖施設のほとんどは、地熱湧出地の地上の池や湖や川にあるので、拡充も新設も、地上では事実上不可能です。

新しい養殖施設は、地下に作るしかないでしょう。」

「地下牧場と地下養殖施設を新設する必要があるかもしれないんだね…」

「それらの新しい施設を作れば、今と同じ食料の生産が続けられるのね?!」

「40万人の人々の移住先は、当面、灼熱ノ岩流ルル国と、熱キ水出ル国と、引キ裂カレル大地ノ国の3カ国になるでしょうが、それぞれの国で、植え直すジャガイモの苗の数に応じて、移住する人数を決める必要がありますね…

移住先で自給自足を続けられるのが理想的ですから…」

「限リ無キ氷洋を渡る路線と、地球風に言うところの大西洋を渡る路線の、ふたつの路線の大陸間鉄道に、ジャガイモの苗を分けて載せることになると、ざっと半分が限リ無キ氷洋に、もう半分が大西洋に運ばれることになるね…

だから、移住する人数も、20万人ずつにしておく必要があるね…」

「じゃ、引キ裂カレル大地ノ国に20万人、灼熱ノ岩流ルル国と熱キ水出ル国の2つの国に合計20万人、たとえば10万人ずつが、移住すれば、それぞれの国で、植え直したジャガイモなどで、自給自足が続けられるのね?!」

「大西洋を、我々の星では、引キ裂カレル氷洋と呼びます。

地下牧場と地下養殖施設が必要な場合は、それらを新設すれば、ジャガイモだけでなく、全ての食料を、今までと同じように、自給自足出来るはずです。

移住先の国々それぞれで…」


彼女は、虹色の瞳をキラキラさせて、ニッコリした。


「黄色キ大地ノ国の人たちと、黄色キ大地ノ国で栽培や飼育や養殖されている生き物たちを、みんな助けることが出来るのね!!」



祖国の大地を離れ、見知らぬ異国に移り住むことを選んだ人たち…


そうした理由は、さまざまだろう。


ただ、ひとつ共通することがある。


彼らは、勇気ある人たちだ。


自分が生まれ育った国を離れ、異国の人たちに、自分の未来を託す勇気を持った…


彼女は、希望に満ちた笑顔で、訊いた。


「黄色キ大地ノ国から外国への移住は、いつ始めて、どう進めて、いつ終えたらいいのかしら?」

「この移住は、将来発生すると予想されている災害による被害から避難するために、ひとつの国の全ての人たちと、栽培や飼育や養殖している生き物たち全てが、別の国々に移り住むというものです。

このような移住は、歴史上、前例が無いので、対応する法律や、行政マニュアルといったものは、ありません。

したがって、今のところは、人々各個人の自由意思による、自主的な移住に任せることになります。」

「…

それだと、いつ頃までに、どれくらいの数の人たちが、どこの国に移り住むのか、予想が難しくなるし、巨大噴火が起きる前に、全員移住出来るかどうかもわからなくなってしまうね…」

「国土が無くなってしまう可能性が高いのに、それに対応する法律が無いなんて…」

「前例が全く無いので、過去に作られたどの法律を拡大解釈しても、移住を計画的に進めることを国民に義務付ける、法的根拠にはなりません。」

「…

前例が全く無いわけでは無いよね。

64万年前に、君たちの祖先も、僕たちの祖先も、巨大噴火を経験したんだから…」

「…

その頃は、まだ、文字も無かったんだから、しょうがないわ…

無い物ねだりをしている場合じゃないわ。

出来るだけ早く、外国に移住するよう、黄色キ大地ノ国の人たちに、頼みましょう!!」

「でも、それだと、いつ頃、どの国に、どれくらいの数の人たちが移住するかが、成り行き任せになってしまうよ…

そうなると、その人たちが食べる物も、実際に移住した人たちの数を、正確に数えて、その移住先の国に輸出しないと、自給自足が維持出来なくなる可能性があるね…」

「それぞれの国に移住した人たちの数を正確に記録して、それぞれの国に、必要な食料を、過不足無く届けられるよう、毎日のように、輸出量を増やしていく必要がありますね。」

「全く成り行き任せだから、日によって、ひとりも移住する人がいなかったり、急に何百人も移住したりして、それに合わせて、食料の輸出量を調節するのは、大変だろうね…」

「…

もし、食料の不足が生じたら、移住先の国に、食料を分けてもらわなければならなくなるのね…

一時的にでも、自給自足が出来なくなることになるのね…」

「食料不足と言っても、量的にも、わずかでしょうし、時間的にも、数日で解消されるはずですから、その位の不足は、それぞれの国の余剰食料から、全く問題無く、分けてもらえるでしょう。」

「…

それは心配無いだろうけど、自給自足が維持出来なくなるのが、残念だろうね…

たとえ、移住した人ひとりの1日分でも、不足したら…

移住する人が、それぞれ、十分な食料を持って移住してくれれば、そういった食料不足は起きないだろうけど…」

「…

移住する人が、それぞれ、自分の食料を自給自足出来る数のジャガイモの苗や、他の野菜や果物や、養殖している生き物たちを、一緒に持って、外国に移住すれば、いいんじゃないかしら?」

「…

なるほど…

それなら、食料の不足は、起きようがありませんね…」

「…

移住して、すぐにジャガイモの苗を植え直せば、翌日から、毎日、その人の1日分ずつ、すぐに収穫出来るようになるから、不足するはずが無いね!!」

「ジャガイモだけじゃなく、麦や他の野菜や果物や、養殖している生き物たちも、それぞれ、植え直したり、養殖施設に預ければ、すぐに、元通りに、食料生産が出来るようになるわね!!」

「移住する人ひとりあたりの持って行く物の重さを確かめましょう。

大陸間鉄道に載せて、外国まで一緒に持って行くことになりますから…」

「えーと…

ひとりあたりの1日分のジャガイモは、3キログラムと仮定したね?

そうすると、苗の作付けから収穫まで60日の場合、苗全部の重さは、概算で、3×60÷2=90キログラムになる。

ジャガイモ以外の麦や野菜や果物の重さは、ジャガイモの5%以下だから、4.5キログラム以下になる。

養殖している生き物たちの重さは、ジャガイモの1%以下だから、0.9キログラムになる。

これらの合計は、95.4キログラム以下になる。」

「ひとりあたり100キログラムまで荷物用スペースに載せられるんだったわね?!

載せられる!!」

「大陸間鉄道の積載可能重量は、乗客ひとりあたり、乗客の体重などで100キログラム、カバンなどの手荷物で100キログラム、合計200キログラムまで、積載可能なので、乗客の体重が100キログラム以下であれば、載せられますね。」

「…

あと、羊もいたね…

黄色キ大地ノ国には、何頭ぐらい飼育されているんだろ?」

「羊は、非常に稀少なので、多くても、1000頭以下でしょう。

1頭の重さは、人間に近いので、平均すると、重めに見積もって、70キログラムといったところでしょう。」

「1000×70キログラムを、40万人で分けて運ぶとすると、175グラムをひとりずつ、運べばいい計算になるね…」

「…

羊さんを、みんなで分けろって言うの…?」

「計算上で、大陸間鉄道で運べる重さかどうかを確かめただけだよ!!

実際には、えーと…

40万人÷1000頭=400人の移住者あたり1頭の羊を、もちろん、生きたまま、大陸間鉄道に乗せて、外国に連れて行けばいいんだよ!!」


彼女は、虹色の瞳をキラキラと輝かせて、微笑んだ。


「移住する人が、ひとりあたり95.4キログラム以下のジャガイモの苗や麦や野菜や果物や養殖している生き物たちを、一緒に連れて、大陸間鉄道で、外国に移住すれば、ずっと自給自足が出来るのね!!

移住する人400人あたり1頭の羊さんも連れてね!!」



もし、異国に移り住んでも、食べ物は、今まで通りに、慣れ親しんだものを食べられるとしたら、母国を離れた寂しさや、心細さも、少しは、癒されるかもしれない…


彼女は、決然とした眼差しで、訊いた。


「黄色キ大地ノ国の人たちに、出来るだけ早く、外国に移住してもらうには、どうすればいいのかしら?」

「移住する人が、食料を自給自足出来るような生き物たちと一緒に移住する方法には、さまざまなメリットがありますね。

まず、移住した人の必要とする食料が、長期間保証されること。

移住した人の必要とする食料を、黄色キ大地ノ国の国内で生産する必要が無くなること。

移住した人の必要とする食料を、大陸間鉄道で輸出する必要が無くなること。

移住した人と一緒に、食料を自給自足出来るような生き物たちも、外国に移るので、黄色キ大地ノ国に残る生き物たちが、自動的に減ること。

黄色キ大地ノ国で生産される食料の量は、自動的に、ちょうど、国内に残っている人たちが必要とする食料の量と一致するので、全て、国内で消費出来ること。

全国民が移住を完了すれば、自動的に、食料生産のための生き物たちも、全て、外国に移るので、黄色キ大地ノ国には、全く残らないこと。前の想定では、巨大噴火が予知されるまで、全国民約40万人分の食料を、国内で生産し続ける必要がありましたが、新しい想定では、その必要が無いこと。

巨大噴火が予知された時に、国内に残っている人たちが必要とする食料を自給自足出来る生き物たちが、国内に残っているだけなので、噴火が予知されてから、噴火までの間に、避難させるべき生き物たちが、前の想定に比べて、大幅に減ること。」

「前の想定と比べると、メリットばかりのようだね…?

デメリットは無いのかな?」

「…

デメリットは見当たらないみたいね…

どうして、最初から、この方法を思い付かなかったのかしら?」

「自分が必要とする食料を自給自足出来る生き物たちと一緒に、外国に移住するなんて、私は聞いたことが無いです…」

「個人や、集団移民や、未開の地の開拓などでは、食料の種子などを一緒に持って、移住した例があるだろうけど…

ひとつの国の全ての人たちと、自給自足に必要な生き物たちの全てが、無理無く外国に移住出来るこの方法は、君のアイデアかもしれないね?!」

「私たちの地球の日本だと、北海道の開拓をした人たちが、同じような苦労をされたはずね!!」

「とりあえず、自給自足維持型移住とでも呼ぶことにしましょう。

この方法なら、長期間の食料が保証されるので、自主的に移住しようという人たちが、どんどん出て来ることが期待出来ますね!!」


彼女は、昔の北の大地に思いを馳せながら、言った。


「私たちも、北海道を開拓した先輩たちと同じように、この星で、新しい世界を作るわ!!」


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