アルナイル

ぼんやりとただやんわりと、まるで懐かしいものを見るような感覚で……そう、これは……夢を見ていた。

自分の視界の低さに夢だと確信がつく。

誰かが腕を引く。

顔ははっきりとは見えないけど、ゆらりと揺れる肩までの髪でその子は女の子だと悟った。

現在の自分よりも遥かに小さい彼女に腕を引かれるまま歩みを進める。

周りはもう真っ暗でこんなに幼い子達が出歩くには遅すぎる時間のように感じた

しばらく歩いているとそこには深い緑が生茂る裏山に辿り着いた。


「ママとパパにプンプンされちゃうよ……」


傍観者であり当事者である自分の口からは幼く辿々しい声が漏れる。


「そうなったら、私が何とかしてやるよ!」


怒られてしまうことに不安になった自分の視界は段々と曇りぼやけていく。


「でもさ、見てみろよ!ほら」

「う、うわぁー、キラキラだ!」


その声に引き上げられる様に見上げれば満点の星空が広がる。

その光景に惹かれて思わず魅入ってしまう。

言葉が出ずに息を呑む。


「きて良かっただろう?」


まるで輝いた風に聞こえたその声に惹かれ、彼女を見つめれば彼女はニコリと笑って見せた。

ふわりと柔らかい風が吹き始める。

それまで気にしてなかったのに、急に古本の懐かしい香りが鼻腔をくすぐった。

その香りに誘われ心音が高鳴る。


「また、来ような……。」


‘また。、、の、、、な、るに……‘


途切れ途切れの声が遠くなる。

なんとなくでしか覚えていない、僕の大切な思い出。

この日が無ければ僕はいつまでもウジウジと弱虫のままだった。

それを変えてくれた君は僕のシリウスなんだよ。

本人には、とても言えないけど。

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