第20話 39.Geo・Gold 40.Bad liberal

Georgia geo Raine 22歳女性…冒険家になる夢があった。海洋博士にも…

《幼少期の出来事》

「ジーナ、君がもし、どこかに大事なモノを隠すとしたらどこに隠す?」

「パパ、私、ジオよ。ジーナじゃない」

「知ってるぞ。その頑固さはママ似だな」

私の鼻の頭に人差し指を軽く押し当て、白い歯を見せるパパ。

「パパ、私ならクローゼット」

「いいかいジオ。大事な物を隠すときは名前に気を付けないとダメなんだ」

「名前?」

「そう、名前」

パパは私にいろいろ話してくれた。

パパが私にジーナと呼んだのはその一回だけ。

パパは丸い物には四角い物の名前を付け、暗い

色なら明るい色を、硬いものなら柔らかいものの名前を付けると言った。

ジーナはジョージアの女の子のニックネーム。

ジオとは誰も呼ばない。(Raine家を除いて)

私を隠していたい理由が他にあったのかしら?

4歳くらいの私には不思議がたくさんあることが妙だけど自然だった。

9歳になる頃は私が別の力で動いている存在だということを知った。

Georgia Raine(ジョージア レイン)は、確実にGeo(ジオ)あってのものとなった。


それは体の強さだったり、諦めない精神力だったり、まだ大丈夫。

あたしが失ったものは何れ何倍かにして返してもらう。

ジオの決心が漲る。

パパの決めたやり方で私はあの島を生き抜いた。

「太陽の街」はあの島で伝説となった。

太陽ではなく、月。

街ではなく、海。

マルコム・ショーあなたは自分の尻尾を追いかける犬だということを知らない。

ジーンならきっとお宝の匂いを嗅ぎ分けて島に残ると言うだろう。

だから、その前に今、船長を昔の優しかったあの人に戻さなくてはいけない!

ジオの決心は頑なだった。

「諦めが悪いな」

船長(千代田重森)は言った。

「これはママ譲りよ」

「手力男として言わせてもらう。お前はとんだ食わせ物だな」

手にした斧を縦一線振り落とす。

この動きは予測していた。

ジオは躱し船長の懐に入り回し蹴りを浴びせる。

体格の差でクリーンヒットにも関わらず吹っ飛びもせず二歩後退しただけだった。

いや寧ろ、手力男の仕掛ける攻撃がワンパターンになっている。

簡単に予測できる程、

「また、沈める気?」

「あぁ、おれの役割はジオ、お前の足止めだからな。この身が滅びようとも」

「そうはさせない」

ジオは振り降ろしたゆっくり斧を引き抜く手力男を出し抜こうと屈んだ手力男に向けて壁伝いに飛び跳ねてアクロバティックな蹴りを試みた。

ゆっくり斧を引き抜いていた手力男は応戦に苦慮することもなくあっさり撥ね除けた。

その豪腕が楯となり、ジオを床に平伏せる。

「ジオ?」

「なあにパパ」

ジオの脳裏に《幼少期の》パパとの記憶が蘇る。

「ジオ、お前はお前を信じて立ち上がるんだ。いいな?」



自分が、自分でなくなる瞬間があるとしたら、他人に批評され、判断を押し付けられた時だ。

他人は不幸にも他人だ。

自分だけでは自分の形を決められない。

こうあるものと例え決めていようとも。

手力男は何万回、この台詞を口からこぼれ出すのを両手で押さえたことか。

彼(自分)はきっと生存が確認されたら、世の中に叩かれるだろう。

だがあのときの判断は正しかった。

あの日、AM8:48 14日の月は異常な大きさを見せていた。

叩かれる?

いや、今、叩いているのはこの私の方だ。

戦闘は白熱していた。

数分で片付くと信じていた手力男がジオの反撃に苦戦を強いられた。

この一撃であの女の首を刎る。

手力男は執念に燃えた男の眼になっていた。

何故?という視線をぶつける。

「正しかったんだ。間違ってない!!」

斧を真っ直ぐにジオの日焼けしたすらりと伸びた細い首を目掛けて飛んだ。

ジオは瞬時に目を見開き、斧に向かって身を起こし、首を右に傾げ、髪がはらり数㌢零れ落ち、手力男の右手首に両手をクロスしてしかりと受け止める。

ジオの右の頬と肩を寸でで躱し、斧が掠めるも血塗れ、勢い余って斧は吹っ飛ぶ。

そのまま手力男の右手を掴み一本背負いで投げ飛ばす。

壁や床に至るところに体が打ち付けられ、狂ったように手力男は笑う。

「どこからそんな力が湧く?傷だらけだ」

「あんたは?」

「ん?」

ジオの目線が手力男に向いていない。

船の階段を駆け上がり、それを立ち上がって追いかける手力男。

「正気を取り戻すのよ。千代田船長!!」

階下に向かい怒鳴りつける!

「真の敵はあいつ。船長、あなたが沈没時刻に取った行動はすべてあいつの指示よ。甲板へ!…早く!!!」

すっかり顔色が良くなった船長は上空を見上げる。

「ななな…何なんだ?あれは、青い月、昼間なのにこんなに大きな…」

「洗脳よ」

「いったい誰が?」

「…マルコム・ショーよ」

「まさか、あの人は№4だがこれまでずっと権力に対して否定的な立場を取っていた。だから信頼できる男だと」

「それが間違い。ドクターの№4なのに信頼なんかある訳がない」

「それじゃあ、あの救出活動もすべてデマか」

「“太陽の街”が欲しいのよ」

「……」

「それは今どこにあるんだ?」

首を振る船長(手力男の表情が船長に揺らぐ)。

手力男の背後に立つ影…

「それが本音ね。マルコム」

微動だにしない船長(はっきりと船長の顔に近づく)。

銃声が一発、手力男の(船長の顔は着弾の衝撃を予測して瞬時に防御に回るもあっさり)米神を貫く。

「何てことを!」

「ああ、役立たずは消えろ」

冷たい潮風が頬を濡らす。

ジオの唇から言葉が消えた。

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