第13話 25.消失の謎 26.更なる真実
突然咳払いをしてロンが言うには、
「ジオ、あなたのことは何一つ心配いらない。あなたは利用されただけ、誰もあなたを責めないよ。いや、本当マジで」
タワーは、
「何でみんながあんたのことを慕っているか分からない?」
タップは、
「失うことを怖れていたら、あたしらはまだあの島にいた。でももう違う」
感激屋のスピはまた、涙をこらえて、
「…だって、みんなで来たんだよ…うっ…大好きだよ」
ノーマークは俯き、ブラッド&グリーンのチケットを握りしめ、
「さあ行くよ!ジオは留守番頼んだわよ」
「待ってよ」
慌ててジオは松葉杖で転びそうになる。
「ダメだってジオ、ここにいて。ライブハウスは狭くて暗いから危ないのよ。それにチケットは5枚。ネットのキャンセル待ちで漸くよ」
ノーマークは優しく念を押す。
「うっ…大丈夫。ちゃんと楽しむよ。ジオ姉がいないと二人分寂しいよぉ…」
「さ、もうじき始まるよ」
「入った。入った」
モギリの弥生ゆり19歳短大生アルバイトが急かす。
会場では、コールが絶えない。
「ブラッド&グリーン…グリーンオブブラッド…ブラッド&グリーン…」
ボーカルのマイクパフォーマンスが始まる。
わざとカタコトの宇宙人の口調をするボーカルのムーン。
「キョウハボクト宇宙人になろう!」
ギターのチョが、
「キミタチをさらっちゃうよ!」
女の子たちは感激の余り興奮して泣き出す。
しばらく歓声は続いた。
「じゃ次の曲は、僕等のデビュー曲、グリーンオブブラッド!」
瞬間、照明が落ち、歓声も消え、ライブハウスに人っ子一人いなくなった。
外で待つジオのため息が倉庫仕立てのライブハウスの中まで届くはずもなかった。
ここは?首を振るも数ミリ先も暗くて見えない。
ライブハウスじゃない。
でもお外のように風も感じない。
どこかの部屋…この部屋の暗闇のせいか物音まで吸収される。
まるで宇宙。
傍らに眠るエプロン姿の若い女性に自然と目が留まる。
目が開いた。いや、少し閉じかけ、やっぱり閉じた。
「…やっぱり閉じた。と、思いきや、ガッと目を見開きあたしを見たーッ」
「って何!あなた誰?」
襟首掴まれ問い質される。
「あたしはスピよ。ここにはあたしとあなた、二人きり」
近づき二の腕にすり寄ってく。
「何よ?止めて!止めなさい」
「うんうん、うえーん。みんなぁ」
涙ぐむスピ。
「何処行っちゃったの?みんなぁ何処よぉ…で、名前…」
「で…名前?、あっ、あたしは真由美よ」
「それ本当?真由美ー?」
「ええ、本当よ」
「嘘、名札に弥生ゆりって」
「バレたか」
「バレるわよ」
静かな揺れが近づき、ドワンドワンと次第に大きくなって、この弥生ゆりの耳に届く。
間髪入れず、色白汗っかきの弥生ゆりは声を張り上げる。
「何?あの音、ズンズンと軋むあの音」
「実はあの音…地下組織に蔓延る殺人鬼なのよ。足が速くて誰一人として生きて出られないっていう…」
「きゃっ」
ぴたっと寄りつく(ってかあんた凄い汗)
「そう、あれは地獄の番人…」
顔をムギュッと顰めるスピ。
「イテ」
タップが上からポンと頭を叩く。
「…な訳ないでしょ!言ってくれるねスピ」
「ああ、タップぜんぜん気づかなかった」
「そぅお?」
「本当よ」
「で、ここ何処だと思う?当ててみて」
「まさか…宇宙???」
「…な訳ないでしょ。ほら、よく見てここはあたしらがよく知る場所よ」
「ねえー今度は何処?」
「そういうこと」
「あたしらをガスで眠らせてその間コンテナ船に乗せてヤバい所へ売り飛ばそうと考えたのね」
ロンが説明する。
「首謀者はこいつら、ま、本当、本物とは似ても似つかないふざけた連中ね」
ジオは本物のライブの音源を仕入れヘッドホンでうっとりしている。
「ね、この子も連れて行こう」
スピは、弥生ゆりを指して言う。
みんなの反応は、揃いも揃っていて一言!
「誰?」
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