第10話 ⑲これまでとこれから⑳シャットダウン

出発の日の朝、顔を洗い、靴紐を結び直すとき、もう戻って来られない所まで私は来てしまったんだと思い返すビルギッタ・エレーン。

ドアを閉めると空が明るい。

雨にも遭うだろう。突風にも襲われるだろう。

だが私の行く手を遮る物は何もない。

ノーマークこと、ビルギッタ・エレーンがマージ4の敵とパージ11のケースを考慮した作戦案の資料を携えてジオの元を訪ねた。

ジオは船から降りたときに違和感を覚え、ある場所で引き篭もりを続けている。

これまでは真面に向き合って来なかった問題にビルギッタは容赦なく対峙していくつもりでいたが、ジオはその資料を受け取らないばかりか、まるで会話が成り立たなかった。

“いったい何があったのよ?”

と、戸惑いを隠せないビルギッタだったがノーマークはその素顔をまた偽りの自分に隠した。

説明マージ(融合係数)パージ(分離係数)

マージ1は促進剤と変わらない。

単純なパワーとして説明が付く部類。

私たちの中でなら、タワー、タップ、ロンに当たる。敵ならば手力男。

マージ2は単純な物質との融合、淡青ワンピ(ジーン)

マージ3は知的要素との融合、フォトショップキラーやマネキンがいる。

マージ3には既にパージ3から8くらいまでの要素が含まれている。


因みにパージ2(マージ1)はスピの癒しが適当でパージ10(マージ4)はまだ知られてはいない敵のヴィシソワーズがそこに当てはまる。

そして恐らくノーマーク自身のマージパージ係数は共に11を超える物であり、ノーマークらを庇い、過度な人体実験を身を挺して止めたジオの過去のデータと参照しても少しも劣るものではなかった。

“それじゃジオの決して明かさない本当の力って何なのよ?”

キッチンに立つノーマーク。

「ジオ、レモン食べる?」

するとジオはゆっくり近付いて返事をするでもなく、手渡されたレモンを丸呑みしてしまった。

まるで爬虫類が食事を済ませるが如く、素早く何事もなくユタユタと歩いていく。

ジオがおかしい。

明らかにこのときノーマークはこのジオの異常事態を認知した。




ノーマークが無断で間借りしている一軒家は見るからに旅行中で監視カメラ等のセキュリティが抜群に整った豪邸だった。

だからジオを匿うのにそれが逆に良かったとも言える。

主の顔認証、指紋認証はウェブの情報から大体予測して準備していた。

多少不安はノーマーク自身にもあったが何者にもなれるということは体を100%、その対象に合わせる術を持てるということ。

もちろん、ジオの前では変装を解いていたがジオには変装を解かなくても「ノーマークね」といつものようにノーマークは当てられていた。

ノーマークが玄関のドアを開け、室内の鍵の掛かる部屋にジオを寝かせ、

「安静にしていればあなたなら、正しい選択ができる」

と、声を掛けた。

そのとき、何かが一緒に入った。

10は液状化、11は変化、12は分裂…

恐らくパージ13は、個別に活動する何か、擬態するタイプか?それもかなりハイグレードな敵。

そばにいるのはベッドに横たわるジオのみ。

「…なるほどね。心配しなくても大丈夫よ。ジオ」




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