第6話 ⑪厳しい世界 ⑫どろっとしたスープ
ジオの運命は博士の残忍な実験のせいでとても罪深いものになった。
いつまでも活動を起こさないジオの体には幾つもの管が通され、酸素マスクとボルテージマックスの電気ショックが何十回となく与えられた。
ほとんどの機能不全の原因はジオの精神疾患によるものだった。
だがジオは重圧の軽減を望んではいなかった。
症状が始まると博士はジオの記憶を消しにかかった。
しかし次第にジオの記憶の喪失は難しくなる。
そればかりかジオの意思のある行動が博士の邪な考えをドンドン跳ね返していく。
やがて絶対服従の暗示が薄れ、雪どけの雪のように融け出した新たな想いがジオの心を幾分か立て直す。
そして清らかな静けさを残し、流れは勇気に変わった。
すると傍らで苦虫を噛み潰したような顔の博士は記憶消去を止め、今度はジオの記憶に眠る正義の心を悉く嘘で塗り固め上書きした。
博士ほど全く残忍ではないが厳しい世界はここにもまた存在している。
この6人の女子の食生活は究めて変わっている。
ジオはサラダを中心とした菜食主義者(循環器系の年齢は5歳児のまま、健康体)であり、
スピは三食キッチリお米とお味噌汁の和食派(よく眠りよく食べる)。
タップは雑食でファーストフードを好んで食べる選ばれし偏食人間(だがストレス値は0 陽気なのは食べ物のせいじゃないと言い張る)。
タワーはアジアン料理専門、激辛料理に目がない。
ノーマークは殆ど食事を採らない。
ノーマークのボディはビタミン剤を始めとする数百種類の栄養剤が主成分。
ロンは中華料理、かなりの肉食。お酒も強い。
ジオとは真逆を行くのがロン。
一番食べるのがタワー。
食べるのが早いのがタップ。
長時間食べていられるのがロン。
…なので朝はいつも戦争だ。
6人それぞれの個食は不経済でならないとノーマークが全員に一つの食事を推奨している。
でも実はみんなから非難囂々。
一番の抵抗勢力は何と言ってもジオ、ジオは牛肉と豚肉が食べられない。
美味しいとも思わない。
だから、朝メシは最初にキッチンを占領した人の指示に従うことになった。
これぞひと呼んで「キッチン戦争」なり。
しかし推奨した人間(ノーマーク)が一番ご飯を食べないのでこれにてご破算で御座ーい。
薄暗い街頭が仄かに灯るフランス料理店でメニューを広げるある夫婦。
妻は裕福な家の出で、贅沢三昧の生活が家計を圧迫した。
7年前、キル(吉)は、とても実直な医師だった。
その日、妻である女性を連れディナーに出掛けた。
研究熱心な夫は浮気癖の治らない妻を大変許せなかった。
だが自分には人殺しは出来ない。だから自分の妻を研究対象のモルモットに仕立てることにした。
妻は大学在学中に催眠療法士の資格を取得していた。
それは医師である夫から見れば軽いノリにしか映らない。
活用する訳でもない資格はただのお遊び、そう思っていたが…
「案外悪くない」
彼の考えは一変する。
その通り、その夜、彼は魔物と化した。
ヴィシソワーズはとてもクリーミーなスープ。
どろっとしたスープがお好みでしたら、この先に紹介するメニューを是非ご堪能下さい。
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