第2話③Island in Georgia~ジオ④フォトショップキラー出現
ジオにはかつての人格の記憶がなかった。
島での行動が最初の記憶になった。
だから、酷いことも出来た。
普通に考えれば、それが法とか倫理では絶対許されないことであってもだ。
だから、島を護衛する兵士たちは彼女に絶対服従した。
博士の権力は絶大で、何か1つの記憶を与えるだけでジオは更に汚い仕事も平気で引き受けた。
しかしあるとき彼女は変わった。
はっきり変わった。
記憶の6割程度が連鎖的に戻ってきた頃。
偶然、かつての自分とよく似た境遇の少女を見かける。
そこで(ウイルスによる)感染爆発したクルーズ船をたった独りで生還した少女だと紹介する。
すると、彼女は何も疑わずそれを信じた。
当時を冷静に考えればとても芝居染みたものでこれも実験の一部と考えるべき内容だったが。
その結果、記憶の90%を彼女は 復元する。
しかし未だ完全とは言えない。
その鍵を握る人物はこの博士をおいて他にいない。
なぜなら彼女の記憶にない部分をこの博士は知っているからだ。
タワーの邸宅が破壊された。
グループ通話で身の振り方を改めて話し合うことになった。
島を脱けたとき、指示を出したのはジオだった。
「タップは欠席だって」
タワーが言う。
「カフェのトイレで、何が欠席」
「言わないで」
「宿泊するつもりじゃないのに、何故三部屋?」
「六部屋予約したんじゃなかった?」
「二部屋で充分、いえ話し合うだけならさっきの公園でも済んだ!」
「バカね。これから大切な人に出逢うかもよ」
「はぁ~い。みんな黙って、今日だけよ。こんな船以外の相部屋も。タップとタワー以外はしばらく乗船するかも知れないけど」
「それはノーマーク、あんたの指図は受けないわ」
「あたしだって好きで進行役してる訳じゃなくてよ。ジオが無口だから」
「ジオなんか言ったら?」
小声でゴニョゴニョ言うジオをスピが気遣う。
「満室だから逆に泊まりでなければ相部屋を勧められたってジオ、声が小さい!そしてスピ却下よ。却下」
「で…でも、」
ジオが頑張って大きな声で話す。
「これから話すことは道端で話せる内容じゃない」
と、通話を切った。
ジオは潮らしく「ノーマーク?」
と、尋ね「進行役助かる」
と、言った。
「ジオ、ノーマークはずっと先よ?聞こえてないわ。車椅子押してあげるから、それとも大声出せる?あの調子ならホテルに一番乗りよ」
ホテルに着くまでは、あっという間だった。
一番のんびりしていたカフェ組もまるで瞬間移動したみたいに(タワーはケーキ皿を持ったままだけど)受付に加わった。
発音は分からないけど「リスボー」と読めるホテルで結局宿泊することになった一行。
二人組は移動車の中で徹夜で張り込んでいた。
「空き部屋は三部屋、狭いから相部屋は二人まで」
「奴らをこのホテルに誘い込むために何百人マネキンに変えたか分かるか?通りのオバチャンまで使ってだ。なのに悠々ホテルに入りやがる」
ジャンは、レジナルド・ロスに絡む。
「そこは問題じゃない。時間は充分頂戴した。臨時の清掃員なんてのも、いや、やっぱりお断りだな」
青い色の制服を脱ぎ捨てる。
「肝心なのは、この五枚の写真」
「爺さんこの計画大丈夫か?」
「手力男が道を付けた」
一つ息を吐き、レジナルドは答えた。
「ま、とくとご覧あれだ」
写真で切り取られた世界はこの「フォトショップキラー」が自在に操作を可能とする。
ホテル、部屋、ドア、水槽、洗面台の蛇口の写真を軽く指で弾く。
「先ずは鳥かごのゲージを閉めようか?珍客は我々に歓迎されないからな」
写真に鳥かごの絵を描きClosedの文字を足した。
「転送はここからドアへと働くtransfer」
「部屋は目となる」
eyesと書きかけ、
「目だけじゃ充分とは言えない」
「爺さん、どうして三部屋の中の一部屋にしか罠を掛けなかったんだ?」
「いいか?マネキン使いジャンよ。空振りの方が大事なんだ」
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