2-7.エピローグ:人蛮、心相容れず


■戦闘後処理:人蛮、心相容れず


リアトリス : 「はい、おわり」マリーナが敵を倒したのを確認して、にっこりイグちゃんを見て微笑み。

イグちゃん : 「え~と。てへぺろ☆」ごまかした~い。

リアトリス : ごまかさせなーい。「で、敗者は勝者にどうするの?」

イグちゃん : 「……すんませんでしたァ。」土下座ァ


戦後早々に、イグちゃんを囲むPCたち。

分が悪いと悟ったか、イグちゃんは華麗な土下座を決めたのでした。


ルイス : 「すげぇ、先輩の土下座初めて見た!うける!」

マリーナ : 「うばう~」これが名実共に負けヒロインちゃんですか~

アミ : 「イグ……アンタねぇ……」土下座するイグに白い目

“ヘーゼル” : 「流石に、嫉妬とはいえ限度というものがございますのでね」と言いつつよしよし。


土下座したイグちゃんを前に、打ち上げモードに入っているチーム蛮族。

このまま地下室に来る前のような、和気あいあいとした雰囲気に戻るかと思いましたが……


ガイゼリック : ……ゆらりとイグの行く手を遮る。本気で怒ってるよここは。

PL一同:あ~……

ガイゼリック:ゲンコツを一発脳天に入れる。「この、馬鹿者が!!!!」多分初めての怒鳴り声。

マリーナ:いたそ~……

イグちゃん:「いたい! うう~、暴力反対です、お爺ちゃん!」

ガイゼリック : はあ!? お主――

リアトリス:この状況でそれは無いだろ、そもそも――


ほぼ同時に、なにかに対して怒りを表明するガイゼリックとリアトリス。両者声を上げるものの――


ガイゼリック:「人死にが出かねなかったことがわかっているのか!? 童が虫を縊り殺すような残酷さと力を人に向けるでない!!」

リアトリス:「力で挑んで力で負けたんだから、敗者は敗者らしく全部受け入れろ! 「暴力反対」とか恥ずかしい言い訳すんな!」


ガイゼリック・リアトリス:……あ????

他PL一同:お?


両者、怒ってるポイントが全然違った。

一瞬二人してイグから視線を外し、お互いを「あ?」と見やる事態に。


ガイゼリック・リアトリス:(顔を見合わせる)

ガイゼリック : 「リアトリス、揚げ足取りならば他所でやってくだされ。」

リアトリス : 「揚げ足? 私は大真面目な……。……?」 あれ?と首を傾げたうえで、眉根を上げます。

ガイゼリック:全然通じてないので怪訝な顔をする。


ここで何が起きていたかというのを整理すると。

ガイゼリック→嫉妬という一時の感情に任せて、軽いノリで他人を死なせかけない戦闘をしかけてくるような『イグの生命に関する価値観』自体に”人族として”怒っている。

リアトリス→リベリオン(蛮族集団)の一員として、自己表現として暴力に訴えていたはずなのに、イグがその直後に「暴力反対」と言い放ったため『暴力に対する態度の矛盾』に”バルバロスとして”怒っている。

……なので、そもそもの観点がずれまくっていたという状況。


ルイス/SGM:はっはっは。いやほんと”人蛮卓”って感じ。


ちなみに、ここで念のためイグに「なんで怒られてたと思ってた?」と聞いてみたところ、

イグちゃん→人肉製造機に関してパーティ内の分断を煽りかねない言い方をした上に、騙し打ちのようにエネミーをけしかけた『PC達に対する自分の行動』が怒られてたと思ってた

だったので、誰の認識もあってなかったからもう大変。

笑うしかない。


PL一同:あー……(どうしようかな、という雰囲気)

ガイゼリック : 「そも、寄ってたかっての叱責は儂の意図するところではない。ここは儂に――」

リアトリス : 「いやそもそも叱責とかじゃ、……あー、いやわかった。先にそっちでやってくれ」ここで争っててもしょうがない。こっちの方が多分怒りのボリューム低いし、いったん退散する。子犬、足でも揉んで。

ヘーゼル:は、はーい……!!


というわけで、事は一旦ガイゼリック……人族の手に渡されることになりました。



■人族老兵は人想い


ガイゼリック : 「さて、話が逸れたが、」拳骨もう一発。

イグちゃん:いた~い~!!!「う~……」

ガイゼリック : 「人を殺しかねん事を一時の感情の発露で下すなど言語道断。自分が操霊術士だからとタカをくくったか?蘇生すればいいだろうとでも思ったか?」

イグちゃん : 「……はい……。」

ガイゼリック : 「その認識を改める気がないのなら、即刻その看板を下ろせ」

イグちゃん : 「すみませんでした。」げざあ

ガイゼリック : 「二言はないな。もし、今の答えを違えることがあるならば。聞き届けた儂が責任を持って引導を渡しに行く。良いな」剣をすらりと抜く

イグちゃん : 「……お爺ちゃんこわぃぃ。」

ガイゼリック : ここまで怒ってるのは、マジにアミ殺しかけたからと言うのもあるよ。

アミ : ありがと~……

ガイゼリック:「童とはいえ、虫を縊り殺すような残酷さを、人に向けるでない」

イグちゃん:「……はい」完全に分かった、という感じとは言えないのですが、神妙な顔。

ルイス : まあ、な。先輩の気持ちもまぁわかるけどさぁ、さすがに事の起こし方と相手が悪かったわな。

マリーナ : 相手が悪い(威力表4回転連発おじいちゃん)

アミ : あまりにも相手が悪かった。


クリティカルには誰も勝てないのだ。


ガイゼリック : さて、ここは無言でいったん退場。スタスタ。


というわけで、人として正しき道を説いたガイゼリック。

次は蛮族側の手番(?)です。



■蛮族詩人は力が重い


リアトリス:んーじゃあ、ここでカメラ貰おうかな。それまではちょっと遠くから困った顔で見てた。

アミ:……ちなみにあんた、さっきギズ相手に「叱責とかじゃ」って言ってたけど、じゃあ何のつもりだったの?

リアトリス:(一瞬考え込んで) ……口喧嘩?

アミ:ああ、あんたらしい……

リアトリス:あれに反論しないのは、なんかこう、バルバロス貴種としての誇りが廃る。ただ、ギズとは違って、「叱る」的な立場にはないよってこと。……人叱れるような生活してるとは流石に思ってないし。


拳骨をもらった頭を「いたたたた」と撫でているイグに対し、近づくリアトリス。


イグちゃん : 「……ふぅ……。まさか説教されるなんて思わなかったよ……。ほんといつぶりだろう……」

リアトリス : 「みんなのおじいちゃんだからね、ギズは。優しいんだ」


『間違った行為をする者がいる、と思ったら、誰に対しても怒ってあげられる人』というのは、優しいもの。


リアトリス :「……でも、ギズはああいっていたけれど。私は楽しかったから、またどこかで遊ぼう?」茶目っ気を漂わせて、指を一本口の前で立てつつ、にこっと笑う。

イグちゃん : 「……だいぶ痛い目見たからしばらくは勘弁してほしいなア」

リアトリス : 「謙遜するなよ。君がもし『本気で』怒ってたら、私たちは今頃死んでただろ?」……これは半分PLメタ入ってるから、気のせいかもしれないんだけど。

GM:はい。

リアトリス:イグはさ。前にマリーナが魔物知識判定で実力抜いたとき、コンジャラー14レベルだっただろ? それが本気なら、もっとエグい戦い方出来たでしょ。それこそ今の我々じゃ勝ててないよ。

GM:(否定も肯定もせず)ははははは。

裏のアミ:こー言うときのGMの笑いって、怖いのよねえ……


怖い。


GM:ま、イグちゃんは「いやあ、そんなもしもの話されても困るよ」と肩をすくめます。

リアトリス : 「そう? でも、バルバロスは、強者には礼を尽くすものだから」 そっとイグちゃんの右手をとってキスをする。

“ヘーゼル” : !!!!!!


一瞬雑談でヘーゼルPLが奇声を上げはじめましたが、イグちゃんはちょっとシリアスなムード。


イグちゃん : 「……話を少し戻そう、リアトリス。」

リアトリス : 「ん?」

イグちゃん : 「人肉培養器を君に渡したのはヘラ様からの指示でも何でもない、完全な私の独断だ。それだけ私は君たちに期待をしているということだよ。」

リアトリス:「……」

イグちゃん : 「それは担い手の使い方によって、人蛮融和にも人蛮闘争にもどちらにも扱える代物だ。その危険性を君たちに熟知させたうえで、私は君たちに託したんだ。……そのおもちゃ、どう扱うか、楽しみにしてるよ。」

リアトリス : 「……ん」といって、少しいつもと違う色で笑いつつ。「ま、さっきのは、私の周囲の人族たちに言ってやってくれ。人族どもに失望しないうちは、私はただのリアトリスだから」

イグちゃん : 「…………。」

“ヘーゼル” : ほほーん? なにか意味深なこというじゃないですか。イグちゃんも何か意味深な顔してますよ。なんだすかちょっと。

リアトリス:いやさ。私、別に人族が好きってわけでもないじゃん? かといってバルバロスの版図を広げるとかには興味がないじゃん?

“ヘーゼル” :まあ、そうですねマスターは。そういうお方ですね。

リアトリス:つまり私がこれをどう扱うかって、要するに気分なわけよ。今のところ変な風に使う予定はないけど、周囲の人族にイラっとしたら、「バルバロスのリアトリス」として人族の敵に有利になるように使うわ。(一同笑)

アミ:こ、こいつ~!!!

“ヘーゼル” :まあ、そうですねマスターは……そういうお方ですね……

リアトリス:というのを言うとかっこつかないので、イグちゃんに対してはシリアスに意味深っぽい顔しておきます。きりっ。

イグちゃん:ふふふふふ。



■ひと段落のあとかたづけ


さて、話にひと段落が付いた後……


GM:さて、じゃあ〆に向かいましょうか。ちょっとPCの皆さん集まってー。

PL一同:はーい?

GM:イグちゃんが「さてみんなー、お詫びといってはなんだけど、皆に渡すものがあってね」といって、一人あたり、6000Gくれますね。最初から報酬が一人分ずつ、6袋に小分けにされています。

マリーナ : 「……喫茶店閑古鳥ないてるのに、よくこんなにもってたね~」袋をかかげながら

“ヘーゼル” : 「確かに。宜しいのでしょうか……?」

イグちゃん : 「いや、これはヘラ様からあらかじm……。」ここまでしゃべってはっと口をふさぐイグちゃん。

リアトリス:……ははあ。なるほどな。

ガイゼリック : 「……、マリーナ。好きなものでも食え」マリーナへキャッチアンドリリース

マリーナ : 「え。マリーナおかねいらない~」

ガイゼリック : スタスタ行ってしまう

マリーナ:う~ん。ギズおこ~?

イグちゃん : 「それと、私のアトリエから好きな魔動具取っていっていいよ。欲しいものがあるかどうかわからないけど~」というわけでさらに追加で一人あたり8のトレジャーポイントをもらえます。チーム内の融通も可能です。


そんなわけで、わいわいとだんだん〆に向かう中で……

思うところが続いている、人族が二人。



■人族二人


アミ : みんなに背を向けて黙って剥ぎ取りをしている

ガイゼリック : 「大事はないか」いつの間にか背後に立ってる

アミ : 「だいじょーぶ。ギズが早めに勝負決めてくれたおかげで生きてるよ」背中向けたまま

ガイゼリック : 「あの金でいくらか上等な防具は見繕えるだろう。出立までに見繕っておくのが良かろう」

アミ : 「ほら、あたしって着られる防具限られちゃうから……」ちょっと苦笑気味の声

ガイゼリック : 「左様か」

アミ : 「そそ、話は終わり?剥ぎ取りに集中したいんだけど」相変わらずギズの方は向かない

ガイゼリック : 「いつになく、言葉に棘があるな」どっこいせとアミの隣に腰を下ろす「どうした」正面を見たまま問う。あえて顔を覗かない

アミ : 「……別に」

ガイゼリック : 「そうか」なにも言わずに待つ


しばらく沈黙ののち、ぽそりとアミは囁きます。


アミ : 「……イグと、分かり合えると思ってたんだけどなぁ……」小さな声で。

「……イグと話してさ、あたし思ったんだ。蛮族の側にこんな子がいるなら……って。でも結局はこれ。蛮族の仲間は結局"蛮族"ってワケね……」『蛮族』を吐き捨てるようにつぶやく

ガイゼリック : 「それで、アミ殿はどうするつもりだ?」

アミ : 「あたしのやることは変わらない。人族に仇為すやつらと戦うだけ。特に蛮族」

ガイゼリック : 「そうか、なら一つだけ」


一拍おいて。


ガイゼリック : 「いざ相対するまで、何が敵なのか決めつけん方が良い」

アミ : 「……そう。ご忠告痛み入るわ」と言ってまた剥ぎ取りに戻る

ガイゼリック : 「では、あとは頼むぞ」


立ち上がって歩き出したガイゼリックは、アミから少し離れたところで一人呟きました。


「カカ、それにしても年甲斐もなく本気で説教を垂れるなど、いつ以来だったか。……”奇特”か」

先のイグの言葉を口にすると、視線はどこか遠くを見つめる。

「友よ。お前の見た理想へのきざはしをようやく見出したと思ったが……」

「人蛮融和なぞ、所詮は鏡花水月なのか……?あのような薄氷の上に立つ覚悟で臨む博打が、俺が十年かけてたどり着いた予言の導きなのか?」

「なぁ、ヴェルべット=ハーヴェスよ……」

届くはずがないとわかりつつも、旧友へと向けた言葉を投げかける。




■アフタートーク


GM:……というところで、本日のセッションは終わりです!ありがとうございました!

PL一同:ありがとうございましたー!


というわけで本日はここでおしまい。

いろいろ魔域の奇妙なところが分かってきたり、蛮族優位集団の洗礼を受けて見たり、いろんな情報が出て長かった2話もこれでおしまい。

パーティ内も、いろんな意味でだんだん人蛮混合パーティ「らしく」なってきました。


次回は「エデン」に向かうパーティ一同。……人蛮統合国家とはなんでしょう?


・獲得経験点:経験点6320+各ピンゾロ

・成長回数:4回

・獲得報酬:6000G+その他剥ぎ取り分+一人当たりトレジャーポイント8


To be Continued!




----


一方その頃。

PC達がそれぞれ、色々思いを巡らす裏で、

こっちもこっちで何かを思っている人が二人。


イグちゃん : 「あ、そうそうルイス君」

ルイス : 「んー、なんすか土下座センパイ」

イグちゃん : 「……おまえまじで覚えとけよ?」

ルイス : 「こっちじゃ力が一番なんでしょ?ってことで。……んで、なんすか改まって」

イグちゃん : 「さっきルイス君も戦闘に巻き込んじゃった訳だけどさ~。実はそもそも君の分までヘラ様から報酬渡されてたんだよね」

ルイス : 「へぇ?さっすがヘラ様!」

イグちゃん : 「あいつらについていきたければ好きにすればいいってさ。ヘラ様から愛されてるねえ、妬ましい」

ルイス : 「やめてくださいよ、あんだけしでかした後にそれは殺害予告にしか聞こえないっすから」

イグちゃん : 「ふふ。……それで、ルイスくんの仕事は本来ここまでだけどどうする?」

ルイス : 「んー……ま、せっかくそう言ってもらえてるなら着いて行ってみるかなぁ。なかなか面白い後輩たちだし」

イグちゃん : 「うん、わかった、私からヘラ様に伝えとくね」

ルイス : 「どもっす」

イグちゃん : 「……ルイス君に言う必要はないと思うけど。彼らを深追いしすぎないようにね。最終的にどちら側に着くか自分で考えることだね。」

ルイス : 「またまた、そんなに真面目にうだうだ考えるような奴じゃないってパイセンも知ってるでしょ?」

イグちゃん : 「そだね、心配するだけ損だった」

ルイス : 「ま、忠告だけ聞いておきますよ」

イグちゃん : 「じゃ、いってらっしゃい」

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