第2話:自分の気持ちに

清宮レイは太陽のような女の子だ。

彼女の周りには笑顔が絶えない。

生徒会長でもあるレイは生徒だけでなく先生たちからも慕われていた。

そんなレイが特に仲良くしている友人が矢久保美緒と柴田柚菜だ。

お昼休みや放課後になると三人は決まっていつも一緒にいる。

今日も放課後になると三人は自然と集まって、いつものようにショッピングを楽しんでいた。

もちろん、これも遥香たちのシナリオ通りなのだが。


レイと柚菜が洋服を選んでいると、美緒がレイのフードを掴みながら自分の元へ強く引き寄せた。


矢久保「この服、レイに似合いそうじゃない?」


清宮「う、うん。すごく可愛いね!」


自分にはこの洋服は可愛すぎやしないかと内心思っていたが、その場の空気を壊さないようにと何でも受け入れてしまう性格が邪魔をして、レイはすぐに肯定してしまった。

美緒がレイのために選んでくれているからこそ、なおのこと否定ができないのだ。

実はそんなレイの気持ちに柚菜は気がついていたが、柚菜は柚菜で空気を読んで口出ししないようにしていた。

一方で、美緒も必死だった。

三人でいるときの美緒は誰よりも率先して動き、どこか自信に満ち溢れているように見える。

しかし、実際はネガティブな性格をしていて、いつも不安な気持ちと戦っていた。

そんな性格を大好きな二人に悟られないようにと、必死に自分を取り繕っているのだ。

こうして三人の素直になれない気持ちが絶妙なバランスを生み、成り立っている関係性であったが、この後、そのバランスは大きく崩れることになる。


黒子の筒井はショッピングモールのエスカレーターで3階から2階へと下ると、少し急いだ様子で三人がいる洋服店へと向かった。

そして、三人を見つけると、頭巾を脱いでその姿を目の前で晒したのだった。


筒井「見~つけた♪」


矢久保「え?この子、誰?レイの友達?」


清宮「いや、私も知らない子だよ」


柴田「私も。人違いじゃないですか?」


筒井「清宮レイ。その手に持ってる服は買うの?本当にその服が着たいと思ってる?」


清宮「え?」


筒井「はっきり言わないとこれから先もずっと人に合わせてばかりの人生になっちゃうわよ」


柴田「ちょっと、なんなんですか?初対面なのに失礼ですよ」


筒井「柴田柚菜。あなたは空気を読みすぎる。今の三人の関係が崩れるのを誰よりも恐れてる。だから、私が現れて一番動揺しているのは他でもないあなたね」


矢久保「あなた、さっきから何を・・・」


筒井「矢久保美緒。随分と無理をしてるみたいだけど。いきなりおかしな格好をしたやつが現れて不安で仕方がない?二人の手前、気丈に振る舞っているけど、本当は怖いんでしょ?ほら、手が震えてる」


矢久保「・・・」


筒井「おっと、時間がないんだったわ。さあ、鬼ごっこの始まりよ」


その様子を遥香が見逃すはずはなかった。


賀喜「沙耶香の様子がおかしいと思ったら、あやめまで・・・こんなのシナリオにはなかったわ。まさか、真佑も?」



つづく。

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