第六十八話 目標と現状
出発の準備を整えた後、俺達はロービの家の前で、セリアとロービより見送られていた。
村の代表格として、ゴヴィンとその取り巻き達も様子を見に来ていた。
「……俺達としては、魔迷宮に入ってくれるのは願ったり叶ったりだ。魔獣が少しでも減るのならそれに越したことはないし、仮にお前らが戻ってこなけりゃ面倒ごとが一つ片付くんだからよ。だが、どれだけ危険なことかはわかってるんだろうな?」
ゴヴィンの言葉は冷たいが、誤魔化さない誠実さがある。
彼は俺達に手を貸すのはあくまで村のためで、そこを超えれば突き放す、という姿勢を常に示している。
だからこそ信用できる相手だった。
「はい、わかっています。俺達が留守の間、セリアちゃんをお願いします」
「せいぜい生きて戻って来るんだな。お前らのために言ってるんじゃない。お前らが帰ってこないとわかれば、ロービの爺が何と言おうが、あの娘は村から叩き出す。軍に引き渡すこともあると思え」
ゴヴィンは親指でセリアを示しながら、そう言ってみせた。
セリアがぎゅっと、不安げにロービの服の裾を掴んでいた。
ゴヴィンはそれを睨み、舌打ちをした。
「大丈夫だよ、セリアちゃん。必ず、強くなって戻って来るから」
「は、はい、ディーンさん」
セリアがこくこくと頷く。
俺は自信げに笑ってみせ、親指を立てた。
それから表情を引き締め、ロービとゴヴィンの顔を見てから、頭を下げた。
「ロービさん、ゴヴィンさん、それまでセリアちゃんをよろしくお願いします」
やってやる……。
軍に喧嘩を売った時点で、分の悪い戦いになるなんてわかりきっていたことだ。
勝算が残っている限り、どんなにか細い道だって走らなければならない。
俺は、俺達は必ず、魔導尉達を倒せる力を手に入れる。
元々、エッダの魔導剣はナルクの宝だとかで、一級品の魔導剣のようであった。
俺の魔導剣だって、伝説の悪魔ベルゼビュートが宿っている。
そこで俺とエッダがレベルを上げれば、魔導尉達と並ぶ闘気を得ることだってできる。
マニだってついているし、ガロックの遺してくれた闘術だってある。
ベルゼビュートだっているんだ。
きっと、魔導尉連中とだってまともに戦えるようになる。
セリアとロービとの別れを終えた後、俺達は
まだ
俺達は骸の横を歩き、崖壁の亀裂……《剣士の墓場》の前に立った。
エッダが魔導剣を抜いた。
「最初に、今の己のレベルを再確認しておけ。目標が明確になる」
俺も頷き、《魔喰剣ベルゼラ》を構える。
「《イム》!」
魔法陣が広がる。
自身の状態が、頭に流れ込んできた。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
《ディーン・ディズマ》
種族:《
状態:《通常》
Lv:30
VIT(頑丈):72+8
ATK(攻撃):78+10
MAG(魔力):59+22
AGI(俊敏):65+8
魔導器:
《魔喰剣ベルゼラ[D]》
称号:
《中級剣士[C]》《火の心得[D]》《水の心得[D]》
《
特性:
《智神の加護[--]》《オド感知・底[E]》
《暗視[E]》《自己再生[C]》
魔法:
《イム[--]》《トーチ[F]》《プチデモルディ[E]》
《トリックドーブ[D]》《クリシフィクス[C]》《シャドウゲート[C]》
《マリオネット[C]》《ブレイズフレア[C]》
闘術:
《火装纏[D]》《水浮月[C]》《闇足[E]》
《嵐咆哮[C]》《硬絶・高[B]》《邪蝕闘気[B]》
《雷光閃[B]》
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
……【Lv:30】、か。
昔の俺が知れば、さぞ驚くことだろう。
中堅以上の冒険者として充分に認められるレベルだ。
俺が運び屋をしていたギルバードが【Lv:18】くらいだったか。
入軍の最低ラインが【Lv:25】だ。
いつの間にかここまで来ていたのか、と再認識させられる。
しかし、これでは足りない。
「僕も、レベルを上げないとね……。僕のレベルは今、【Lv:16】なんだ。軍人との戦闘で少しでも健闘したいっていうこともあるのだけれど、それ以上に、
「そんなに高いレベルが必要なのか……?」
鍛冶師にとってもレベルが重要だとはよく聞いていたが、
俺の問いに、マニが頷く。
「最低でも【Lv:30】近くはないと、魔導剣は造れないと思う。せっかく
……確かに、【Lv:30】近い鍛冶師があの村にいるとは思えない。
【Lv:30】の鍛冶師となれば、生涯暮らしに困らない、軍専属レベルだと、昔そうマニから聞いたことがあった。
村で捜しても仕方ない以上、マニにレベルを上げてもらうしかない。
「口で言うほど簡単じゃないのはわかっている。でも、【Lv:30】近くになれば、僕だって一般兵相手にまともに戦えるようにもなる。絶対に、やり遂げてみせるよ」
マニは自分に言い聞かせるように口にした。
マニが一番怖いはずだ。
俺とエッダ、マニの中で、マニが一番レベルが低い。
敵わない魔獣が出てきたとき、魔獣の群れから逃げるとき、彼女が真っ先に死ぬ可能性が高いのだ。
ほぼ未開状態の魔迷宮の四階層奥地を目指そうというのだ。
これは半分、自殺のようなものだ。
超一流の冒険者だって、たった三人でこんな真似はしない。
馬鹿げていると、そう笑う冒険者もいるだろう。
しかし、今の俺達にはこれ以外に方法がないのだ。
俺は目を瞑り、深呼吸をする。
それから《剣士の墓場》へと足を踏み入れた。
「行こう、マニ、エッダ」
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