第二十八話 決着、黄金魔蝸
「ギ……ギ……」
恐らく、
奴の頼みの綱の中鬼(ホブゴブリン)も既に片付けた。
気に喰わないが、結果としてはギルバードが追いかけ回してくれたのがプラスに働いたともいえる。
俺は呼吸を整える。
俺も《プチデモルディ》の発動と、中鬼(ホブゴブリン)との命の取り合いで大分消耗させられていた。
俺は《魔喰剣ベルゼラ》を構えた。
「《火装纏》!」
刃から炎が走る。
これで、奴は《水浮月》で液状化しても、完全には透過することができない。
あれが回避できるのは物理的な接触のみだ。熱は無効化できない。
「《プチフレイム》!」
マニが《炎槌カグナ》から炎を生み出し、
だが、マニは避けさせるために撃ったのだ。
俺は俺の方へと接近してきた
「更に……《暴食の刃》!」
炎を纏った刃が、
「ギアァッ!」
剣は身体を通り抜けたが、炎が奴の液状化した身体を焦がす。
床に落ちた
追いかけてもいずれ追い詰められるだろうが、これ以上地下三階層を動き回りたくはない。
「逃がさないよっ!」
マニが《炎槌カグナ》を掬い上げる様に振るい、
「ギ……ギ、ギ……!」
「お前の《水浮月》は、回収済みだ!」
さっきの一撃……炎を纏った刃で、俺は《暴食の刃》を放った。
その際に、液体化して敵の攻撃を透過する《水浮月》の闘術を回収したのだ。
俺は《魔喰剣ベルゼラ》を振り下ろした。
……これで、ようやく戦いが終わった。
「はぁ……はぁ……か、勝てた……」
なかなかしぶとい奴だった。
だが、どうにか勝つことができた。
マニが笑って俺へと手を伸ばす。
俺も彼女の手を叩き、ハイタッチした。
『おおっ! ニンゲンの間では、そんなふうに勝利を祝うのであるな! いつだったかは忘れたが、聞いたことがあるぞ! 妾も、妾もやりたい!』
「お前は、その、呼び出すのに燃費悪いから……」
『戦うわけではない! ちょっと手を叩くくらい大丈夫であろうが! ほら、ほら!』
「いや……本当に悪い。ほら、俺が低レベル冒険者で、魔力がなくてさ」
『あーーっ! 今貴様、こいつちょっと面倒臭いと思っておるであろう! 妾には、貴様らニンゲンの浅はかな考えが手に取る様にわかるぞ! そうであろう! 誤魔化さずに申してみよ!』
ごねるベルゼビュートを宥めつつ、俺は《イム》を使う。
マニに多少流れただろうが、それでもかなり伸びているはずだ。
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《ディーン・ディズマ》
種族:《
状態:《通常》
Lv:20
VIT(頑丈):40+8
ATK(攻撃):43+10
MAG(魔力):32+22
AGI(俊敏):36+8
魔導器:
《魔喰剣ベルゼラ[D]》
称号:
《駆け出し剣士[E]》《火の心得[D]》
《水の心得[D]》《造霊魔法・下位[E]》
特性:
《智神の加護[--]》《オド感知・底[E]》
魔法:
《イム[--]》《トーチ[F]》
《プチデモルディ[E]》
闘術:
《火装纏[D]》《水浮月[C]》
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「ろ、六も伸びている……!」
【Lv:14】と【Lv:20】では、全く扱いが違う。
【Lv:14】では多くの冒険者がメインとして狩るD級魔獣へと挑むのは、補佐としても実力不足だとされることが多い。
だが、【Lv:20】もあれば、よく見知った慣れた敵で、D級の下位であれば単独での討伐でも不可能ではないとされている。
【Lv:20】は区分では下位冒険者であるが、中位冒険者と称される様な人間は、まず冒険者ギルドに通って細々と行動するようなことはしていない。
このレベルになれば、まず間違いなく入軍の許可が降りるためである。
一般に中位冒険者は【Lv:30】を越えた冒険者を指し、上位冒険者とされるのは【Lv:40】を越えた冒険者を指す。
しかし、上位冒険者の域に達している者は軍の上層部として活動しているか、そうでなければ地方を渡り歩いてより強敵を求めて彷徨っている様な変人くらいである。
現在、都市ロマブルクの冒険者ギルドにいる一番レベルの高い人でも、せいぜい【Lv:30】前後であろう。
「マニはどうだった?」
「僕も五程伸びていたよ。僕は大したことはしてなかったのだけれど……元が低いから、それだけ伸びたのだろうね。これで【Lv:12】になったよ。鍛冶師としても、少しは出来ることが広がるかもしれない」
マニが嬉しそうに口にする。
「なんなら、僕の《イム》の評価を確認してみるかい?」
「い、いや、それは悪いだろう……」
俺は首を振るう。
顔が赤くなっていないか不安だ。
マニが俺の顔を探る様に眺めながら、からかう様な笑みを浮かべていた。
《智神イム》による評価は、かなりプライベートなことである。
他者にそれを見られるということは、冒険者にとっては特に、弱みを握られたも同然である。
家族くらいにしか見せないのが常識となっている。
「と、それより……後は、闘骨を回収するだけだね。数が多いからなかなか骨が面倒な作業になりそうだけれど、売ればかなりの値がつくことになるはずだ」
俺は闘骨の回収作業に入った。
解体用ナイフが一本しかなかったこともあり、マニには休んでもらい、俺が解体を行うことにした。
マニには「キミの方が疲れているだろう?」と言われたが、マニに
血でかなり汚れるし、あまり綺麗な仕事ではない。
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