エピローグ

10月28日 ニューヨーク UGN中枢評議会

あの事件から数日後、ニューヨークではUGN中枢評議会、即ちトップ達による会議が開かれんとしていた。


そしてその議員の中には『13』のトップ、ディセイン・グラードの姿もあった。

「お久しぶりですね、ディセイン議員。」

声をかける若い議員。

「久しぶりだな、アッシュ・レドリック議員。」

「アッシュだけで構いませんよ。この度のテロの事後処理、ご苦労様でした。」

アッシュはニコニコと労いの言葉を送るが、その瞳の奥では探るような、疑うような目を向ける。

「ああ、ありがとう。君も本部では大活躍のようじゃないか。その若さで大したものだよ。」

だがそれはアッシュだけではない。ディセインも同じように猜疑心と共に彼に声をかけた。


「ありがとうございます。ところで議員は私兵をお持ちとのことをお聞きしたのですが、それについて詳しく教えていただけないでしょうか?」

「全く何のことだかさっぱりだね。私は非オーヴァードだ。部下に守られているのは事実だが私兵などではないよ。」

「……そうですか、それは大変失礼なことを申し上げました。」

「いやいや構わないよ。私とてそこまで心の狭い人間ではないからね。」

二人の間に広がる淀んだ空気。

無言で笑みを浮かべながら睨み合う二人。

「では、また。」

「ああ、また。」

二人は振り返り立ち去る。

「いつか化けの皮を剥がしてやるぞ、ペテン師。」

アッシュは野心に満ちた顔で、そう呟いた…。



日本時間 8:13 N市 アパート 203号室

優しき日差しが差し込むアパートの一室。

「ちゃんと弁当は持ったか?」

「うん!!」

元気に応えるセーラー服姿の少女。

カバンと部活用具のラケットを携え、靴を履く。

「じゃあ行ってきます…えーっと、蒼也兄さん!」

「家の中では無理しなくていいって言ってるだろ?あくまでも外で兄妹のフリをすればいいんだから。」

「でも、こうやって普段から練習しておけば外でヘマする事もないでしょ?」

「……そうだな。」

蒼也は少し哀しげな笑みを浮かべる。

「ねえ兄さん。いつかちゃんと、姉さんを殺したって話、教えてね…?」

「ああ……。必ず話すよ。全部が終わったら。」

「ありがとう……。じゃあ、行ってきます!!」

「いってらっしゃい。」

少女は元気な様子で家を出て行く。

蒼也も優しい笑顔で少女を見送った。


蒼也も少女を見送ると支度をする。

使い慣れた鞄に狙撃銃とナイフを詰め、煙草を咥え火を点ける。

先ほどまでの優しげな目とは違い冷たい目でドアを開ける。

外に出ると彼はバイクに跨りエンジンをかけスロットルを開く。


今は秋、紅葉が落ち季節の終わりを感じさせる。

変わらぬものなどない。

形あるものはいつか崩れる。

「こちらヌル。ルプス隊仕事だ。行くぞ。」

『了解。』

もう二度と元には戻れない。

それでも彼は歩んでいく。

愛した人の遺した、蒼き雷と共に。


to be continued……

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蒼雷は紅落の空に堕ちて 芋メガネ @imo_megane

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