第5話 獣
H市 市街地 E地区
突如H市に現れた異形の怪物たち。
それらは誰彼構わず、己が欲望のために人々を傷つけ、この街を蹂躙していた。
だがここにはそれを許さないものたちがいる。
「せっかくの休みだったのに…!!」
それこそがUGNという、オーヴァードの力を駆使し皆を守る正義の組織。
そのうちの一人である飛鳥天は翼を生やし、突如現れた異形に対処する。
「ギギ…ガガガ!!」
「っ…。機械型のレネゲイドビーング!!」
飛鳥は自らの爪でそれを引き裂かんとしたが、装甲の硬さによりそれは阻まれる。
「五之太刀――」
だがその瞬間、
「暁……」
陣内劔の暁が異形を切り裂いたのだ。
「陣内…支部長!?」
「飛鳥くん、君は民間人の保護を頼むよ。」
現場に降り立った陣内は刀を構えると優しい笑顔で飛鳥に指示を出す。
「支部長は!?」
「僕は、コイツらを片付けるよ。」
いつも通りの笑顔で刀を構えるその人。だが、飛鳥はその笑顔に底知れぬ恐怖のようなものを感じてもいた……
※
同じ刻
二つの影がビルの壁を伝い幾度となく刃を交える。
一つは特務用装備を纏った黒鉄蒼也。もう一つは白い仮面を額につけた人型の獣。
キュマイラの爪で襲いかかるその獣、彼は巧みにナイフでそれを絡めとり動きを封じる。
「楓!!」
「電圧上昇……ライトニングボルトッ!!!!」
右腕に帯電した雷を放つ楓。
それが獣に命中するタイミングで蒼也は拘束を解き、一気に距離を取る。
「喰らえ…!!」
そしてトドメと言わんばかりに振動波を乗せた弾丸を叩き込んだ。
「これで…」
彼女が安堵したその瞬間、再び異形の影が襲いかかる。
「危ない!!」
蒼也は咄嗟に彼女を庇い、楓もその直撃を免れる。
「あ、ありがとう…」
「礼はいい。それよりも…」
蒼也が指差す先、そこには傷一つつかず二人に敵意の眼差しを向ける仮面の獣。
「能力を打ち消したのか…?」
「蒼也、来るよ!!」
瞬間的に放たれた雷。
楓は咄嗟に電磁バリアを繰り出しそれらを防ぐ。
「こいつ、キュマイラとブラックドッグのクロスブリードか…!?」
次に襲いかかるはエグザイルのエフェクトである触手。
「トライブリードか…!!」
彼は音速で移動し、触手をかいくぐり引き金を引く。
乾いた音と共に鉛玉は異形の獣へと次々と放たれた。
だが、もうそこにそれはいなかった。
「なっ…!?」
「蒼也、後ろ!!」
刹那、彼の背後に現れた異形の獣。
「オマエ…ウマソウダ!!」
瞬間的に叩き込まれた一撃。
「ガッ…!?」
そいつの右手は蒼也の腹部を抉り、何かを奪い取っていく。
「クソ…が!!」
蒼也は振動波を乗せた弾丸をその獣にぶつけると仮面は砕け、一瞬怯む。
「蒼也から、離れなさい!!」
楓もそこに雷の槍を叩き込むことでそれは距離を取った。
「オマエノホウガ、ウマソウダ…!!」
「っ…!逃げろ、楓!!」
「え?」
次の瞬間、楓の目の前にはもうその獣が現れていたのだ。
「クッテヤル…!!」
「させるか!!」
蒼也は咄嗟にワイヤーを獣の腕に引っ掛ける事でその動きを止めた。
「ジャマスルナァァァァ!!!」
ワイヤー越しに流される大電流。
「ぐあああああああっ!!」
「蒼也!!」
一瞬意識が飛ぶ。
いや最早これは一度死んだ。
それでもこのままコイツの好きにはさせない。
彼はそのままワイヤーを使って一気に投げ飛ばしたのだ。
「大丈夫、蒼也!?」
「俺の事はいいからさっさと逃げろ…。アイツの狙いはお前だ。」
蒼也は立ち上がり、ウエポンケースから狙撃用ライフルを取り出す。
「奴は明らかに4つ以上のシンドロームを使いこなしていた上に、俺のレネゲイドを喰っていた。あれはお前みたいなド素人が関わっちゃいけないものだ。」
彼は淡々と述べながらソレに向けて弾丸を放つ。
「クソ…。ジャマダァ!!」
氷の弾丸を放つ獣。
蒼也は咄嗟にそれらを叩き落とすがその間に接近を許す。
「でも、だからと言って見捨てられるわけないでしょ…!!」
その解き放たれる雷の弾丸。
「お前って奴は…!!」
獣はそれを回避するがその瞬間、蒼也の蹴りが叩き込まれた。
「必ず、二人で生きて帰るぞ…!!」
「ええ…!!」
二人は今、再びその偉業に立ち向かう…
※
H市 カスケード社 地下
鳴り響く小気味の良い金属音。一つの影が縦横無尽に動き、次々とその大剣に傷をつけていく。
「クソ…ガキがああああ!!」
「遅い…!!」
怒りに任せて振り抜かれる刃、それさえも彼は持ち前の反射で回避する。
「喰らえ…!!」
稲本は即座に右手にナイフを3本生み出すと、彼はそれを一斉に、正確に投擲する。
「くっ…!?」
ガードした途端それは爆散し男の視界を奪い取る。
「月下天心流 四之太刀――」
そして間髪入れずに叩き込まれた神速の太刀。
「ぐおおおおおっ!!!!」
それは一度敵を斬り殺したのだ。
「な、なんだよお前……その力は……」
ブレイズは余りの事に立ち尽くすことしか出来ず、彼に問うことしかできなかった。
「黙って目の前の敵に集中しろ。来るぞ!!」
振り下ろされる大剣、二人は左右に広がる様に回避をするが再度刃は構えられる。
それでも彼は焦らない。それどころか虎視眈々と反撃の機会をうかがっているのだ。
振り抜かれた刃。
「ブレイズ、ありったけの炎と冷気を頼む!!」
稲本はその刃を受け止め彼に向けて叫ぶ。
「ああ!?そんなん急に言われたってなぁ…」
そして彼に呼応する様に燃え盛る彼の左手と凍える右手。
「俺くらいしかできねえよ!!!!」
一気に解き放たれ、それは男の大剣に叩き込まれた。
戦いはもう、終局へと近づいていた――
続
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