うちの猫達が強い
けい
第1話 今日の朝食は巨大マス(もどき)
からりと晴れ渡る青空、爽やかな風が駆け抜ける午前。
スパァン、と手元の洗いたてのシーツの水気を振り落す。
今日も良い洗濯日和だなぁ、なんて呑気に思いつつも手元は手早く籠に残った洗濯物を素人が編んだと丸わかりな荒縄にかけていく。
洗濯物を留めるためのピンチも忘れずに。
「まんまー!! チト、大物獲ったよー!!!」
そよそよと飛んでいたトンボが、聞こえてきた大声に大急ぎて飛び去っていく。
トンボよ、君の危機管理能力の精度はなかなかのものだ、そのまま大事にして長生きしてくれたまえ、と現実逃避もかねた思考をしながら、腕の中に飛び込んでくる生き物に全力で絞められる。
「うぐっ はーぁーい、チトちゃんは凄いねぇ ぉぐぐぐ」
「でしょでしょ~ もっと褒めてまんまー!」
「チト、うるさいし お母さん絞めてる」
「うー!!! ミコには関係ないでしょ!」
「チト、マジで絞まってる かぁさんの顔土気色してっから! ミコも手伝え!」
「うやぁああん! クーにぃまでひぃぃどぉぉい」
腕の中の生き物もとい我が娘チト(長女)は褒められたら褒めただけ無意識で胴を絞め上げてくる。それを持っていた巨大魚を放り投げて、私からチトを引っ剥がすのは息子のクタ(長男)と娘のミコ(次女)。ちなみに長子クタ、中間子チト、末子ミコである。
あ、ちなみに私はネモと申します。人間種の成人済みの雌です。
ちなみに息子娘三人は猫科人種(二足歩行動物種)ですね、いつだってもっふもふのかわいい毛玉ちゃん達です。
「かぁさんはひ弱なんだから、もう少し加減覚えろよ!?」
「だぁってぇええええ」
「お母さん鈍くさいし、チトは大雑把だから」
息子と末娘の容赦ないディスりにまんま、心の中で吐血しそう。
今日も今日とて平和に家族4人で暮らしています。多分。
「それにしても今日も大量、ね?」
喧々諤々、にぎやかな三兄弟姉妹のやりとりのままでは話は進まないので、私をチトから救出する時に草上に投げ出された巨大マスを見る。
多分マス…これ洗えば行けるわよね、懐虫は捌いてしっかり焼けばいけるいける、などと思いながら子供達に問いかける。
「えへへ、頑張ったよー! 河をね、ばしゃーってして飛んだマスをばしゅってしたのー!!」
「まぁ、これぐらいは俺らも食うしな」
「捌くのも、焼くのも手伝う」
上から順番にチト、クタ、ミコの言。まず、私は河で泳いでるマス?を仕留められないんですが…子供達が強い。
ちなみにこの巨大マス達、私の身長以上あるんです。
私がちっさいとかではないですからね!?一応この国の一般的な女性の標準身長はあるはずなんですからね!
ちなみに口からかなりの水圧の水鉄砲を撃ってきます。初めて遭遇した時は、死んだと思いました。ミコが弾いてくれたので生きてます。
え?マスは水鉄砲撃たないって??? 見た目も味もマスなのでもうマスで行きます。巨大な時点でマスではないのは知ってます。
「じゃあ、朝ごはんの準備しようか!」
「「「おう はーい! はい」」」
青空に響く元気な返事を聞きながら、少し遅めの朝食の準備を始める。
大事な大事な息子娘(猫)達と送る異世界の一日が今日も始まります。
うちの猫達が強い けい @kara_kei
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。