失跡の占星術士

 十分と持たない虹を瞳に焼き付けて摂った朝食はなににも替えがたく、実に晴れ晴れとした気持ちでいられただろう。長く滞在したがったベラを急かしたのは、言うまでも無い。

 そうして雨の上がった森の中、遠目に見えた海沿いの街道を目指して南へと歩く。

 ぬかるんだ土を避けて草の上を歩き回っていると、木の葉から時折風に攫われた数多の水滴が私達の上へと降り注ぐ。ぱらぱらと無作為に落ちてくる雨粒は大小様々であり、時に大きな水球が頭頂を叩くのに、無意識にも呼気を零してしまう。

 雨に気を取られ、不意に顔を上げたベラが、「あ!」大声を張り上げ、何かに向けて手指を向けたのは、歩いて間もなくの事だった。


「………小屋、」

「です!!」

「ミー……」


 胡乱げに見遣る私、元気よく応えるベラ、不安そうに鳴くヴィダル。彼が覚束ない声色を絞り出すのも無理は無い。

 ベラの指の先には、……こう言ってはあの小屋の家主には失礼であるが、正直、洞窟の方がまだ良い環境なのではないかと思わせるような、襤褸と称すに相応しい様相の小屋であった。

 木の板を家の形に積み上げた平屋のような小屋、滑り出しの窓はあるものの、遠目にも硝子にヒビが入っていると窺える。傾いた木の扉の近くには、雨水を溜めておくための小さな壺が…転がっている。

 ……果たしてあの家主は、いま、私達と同じ時間を有しながら息をしているのであろうか。

 一抹の不安を覚えるものの、雨が続いた森の中ああして居を構える人間がいるとして、外出も出来ずに病かなにかで中で倒れていた、…などとは、想像の働かせすぎだろうか。

 一目で怪しげに思える小屋を訪れるか否かと葛藤している私をよそに、ベラはぐいぐいと私の手を引っ張って行く。

 嗚呼、如何したものか。

 この子はこんなに、見知らぬ土地を平然と闊歩するような強い子であったろうか。


「せんせい! せんせい!!」

「は、い。はい」

「あそこのお家のひとは、あまいもの、知っているでしょうか!」

「あまいもの、ですか」


 きらきらとした笑顔で私を見遣るベラに、如何様な答えを用意すべきかと悩む。鼻先からふすりと漏れる息。

 つまりは、恐らく、ベラはきっと、こんぺいとう。を、誰かに自慢でもしたいのだろう。か。

 あの子の考えている事は、私でも時折判らなくなってしまうものがある。


「どうでしょうか。この森は、果物に富んでいるようですから、おそらく知っているかも……」


 そう、知っているかもしれない、と。続けんとした私の声を阻むが如く、小屋の扉が勢いよく開かれた。

 バタン。音にすれば斯様なものだったか。

 小屋へ不躾に指を向けていたベラの腕がびくりと跳ね上がり、私はその振動につられるように肩を揺すらせ、ヴィダルは、……ベラの服裾のポケットに忍び込んでいる所だった。

 反射的に黙り込んだ空気を揺るがすのは、鳥の囀りでも、雨の音でもない。


「あら」


 私でも、ベラでも、ヴィダルでもない。鶯舌おうぜつとした、年若い女性の声が沈黙を破った。

 深い海色のローブを目深に被った女性が、フードを払い除けて顔を晒す。歳にして十四、五といった頃合いか。あの村で出会った若者達よりは明らかに若いが、ベラよりは歳が上と明白に知れる。

 ローブの色に似た肩までの髪を鬱陶しそうに耳に掛けながら、茶色のドングリのような明眸を向け、彼女は私達の顔を見比べる。


「あなたたち、旅の人? めずらしいわね」

「はい。港町を目指して歩いている所です」

「そう。あたしは……この森のどっかにある、ふるーいしきたりに縛られた、ふるーーーい思想の人達が集まる、ふるーーーーー!! っい! 家を作ってる人達がいる集落を出てきた、…しがない占星術士せんせいじゅつしの女の子よ」

「……なるほど。代代から続く伝統を重んじる方々を親に持つ女性、という認識で宜しいでしょうか」

「柔らかくいうと、そうね」


 何処か刺々しい雰囲気を内包していると感じたが、その刺々しさは、どうやら彼女の親族に向けられる物が発露したものらしい。

 私には如何する事も出来ない。みれば、ベラは彼女の居丈高いたけだかな態度にすっかり萎縮しきっている。ヴィダルに至っては顔すら見せない。

 雨上がりの澄み渡った空に一瞥を向けてから、私は、この不機嫌そうな彼女にある質問を投げたいと思う。


「占星術士の女の子、では少々呼び名が長いですから。レディ、出会って間もなくではございますが、占星術士である貴女に一つ…いえ、二つばかり。お聞かせ願いたい事がございます。宜しいですか?」

「え? えぇ。別に構わないわ。道案内でも、姓名判断でも、星占いでも。しがないなりに、あたしの占いは当たるんだから」

「なるほど。では、知り得ない物事を知ることもまた可能ですか」 

「――千里眼ね」


 私の声に、彼女はとても楽しそうな笑顔を浮かべた。いや、どちらかと言えば、得意気とも見えるだろう。

 ギイ、と、立て付けの悪さが窺える音を立てて扉をより開くと、彼女はそれ以上を口にせず、代わりに私達を手で招いた。浅く一礼を施してから、ベラとヴィダルを連れて彼女の家へと足を踏み込もう。

 ……こう思っては酷く失礼だとは思うが、なんと言葉にしようか。

 彼女が扉を開けて現れる前に思った通り、木で作られた小屋は内側も目に見えて判る様に傾いており、雨も上がった筈なのだが、雨漏りを受け止める壺が数ヶ所置いてある。強いて想像と違ったのは、素っ気ない物の調度品はどれも真新しく、整然とした部屋の印象を持った。

 壺を蹴飛ばさない様に気を遣いながら、彼女の後へと続く。


「お客さんなんて久しぶりだから、出せる物なんてないのだけど。此処座って」

「ありがとうございます」

「! あ、りがとう、ございます!」


 踵を返して私達を一瞥すると、やはり此れもまた斜めに設えられた木製のベンチを勧めてくれた。私を真似て、たどたどしい礼の言葉を添えるベラに、心無しか彼女の口角が上がった気がした。

 指定されたベンチの前には長方形のテーブルがあり、その上には台座で支えられた水晶玉が置いてある。大きさにして私の頭と同じ程度か、掌で包んでも余ってしまうだろう。

 対面の椅子に座り込むと、彼女は水晶玉に両の手の平をかざして、今一度と私達に顔を向けた。


「それで。知り得ない物事を知りたい、ってコトでいいかしら。何が知りたいのかしら?」

「ええ。実は……」


 言葉も中途に、私は、ベラの裾ポケットに引っ込んだままのヴィダルをそっと取りだして、水晶玉の隣へと置いた。……寝ているのか、ぴくりとも動かない。

 あてのない旅をするにも限度があると踏んでいた私は、ヴィダルの出自の手掛かりを知りたいと随分前から考えていた。否、ヴィダルを旅の共に連れ立った時から、考えていた。

 随分と危なっかしい小屋に住んでいるとは言え、占星術士を自負する彼女に道標を願う事は、罪ではないと信じたい。

 一見して手の平大のぬいぐるみであるヴィダルの登場に、彼女は眉を顰めて私と交互に視線を投げている。


「ぬいぐるみかしら」

「いえ。厳密に言えば、これは布で作られた人形ゴーレムです。此処より遠くにある小さな村で、魔女に作られ置き去りにされたという。……私は、この人形、ヴィダルを預けられた方に言われました。 "在るべき場所に帰すのが、自然だと思わないか" と」

「在るべき場所、……つまりは。この人形の制作者である魔女の元、という事かしら」

「そうです。然し、あてがある訳ではありません。広すぎる世界を踏破するには大いに時間が掛かります。せめて私が生きている間に、……魔女の元へ送り届けたいと。思っています」

「なるほど、ね。人形、と言うからには、自分で意思を持って動くんでしょう? その人形が、魔女の元へ帰ろうとしていない時点で、あなたも、あなたにコレを預けたっていう人も、その行為はエゴと見做すに相応しいわ。でも、そうね。面白いから見てあげる」


 彼女の言い分に返す言葉もない。私は、今一度軽く頭を下げてお願いした。


「迷子の人形さん、或いは、帰り道のわからない人形さん。あなたの代わりに星達が存在を見るわ、そして星達の代わりにあたしがあなたの存在を読み上げてあげる」


 水晶玉の上で両手を不規則に揺らしながらそう口にしていた彼女の手許、語尾を言い終えたその直後、水晶玉がぼんやりと光って輝いた。

 眩しげに双眸を細める彼女につられ、私もまた双眸を細めて水晶玉を見詰める。何をしているのか理解に及んでいないらしいベラが、私の身体に寄り掛かって暇を潰す様に裾の布地を弄んでいるのが視界の端に映る。

 当のヴィダルは――…水晶玉の淡い眩さに立ち上がって、……尻餅をついて、彼女を見上げていた。


「あら、本当に人形ゴーレムだわ」


 ……彼女は、私の言葉を疑っていたという事実を知らされた。無理も無かろうか。

 独り言を零した後、彼女は何も発さず、ただ只管に水晶玉を見下ろしていた。何か映し出されているのか、それとも。

 何を知れる事も無く、数分、数十分と時間が経過していく中、漸く水晶玉の光が失われた。眩さに細めていた目を強く瞑って、開こう。

 一番に目に飛び込んだのは、尻餅をついた姿勢から、腹ばいになって寛いでいるヴィダルの後ろ姿だった。

 緊張感など、彼は無縁なのだろう。…それは、隣で、私の服裾を皺だらけにしているベラにもまた言える事ではあろうが。

 水晶玉にかざしていた手を退けると、彼女は寛ぐヴィダルを片手で摘まみ上げて、水晶玉の不安定な足場へと放っていた。


「名前はヴィダル。とても食い意地の張った性格をしていて、…門番代わりに人形を置いてる村の、人形師の元にいたのね。で。いまは、そこのお花の女の子をお兄ちゃんみたいに守りながら一緒に旅をしている、と」

「……随分と詳細を窺えるのですね」

「しがない、とは言ったけど。占星術士だもの。星の声を聞けるあたしは、不気味かしら?」

「……いいえ。とても信頼のおける方だと、改めて認識できました。ついては、ヴィダルを制作した魔女のいる場所は知れますか」

「もちろんよ。まぁ、あたし……でなく。星が勘違いをする事もあるから、完璧に占える保証はないとだけ言わせてね」


 小さく鼻を鳴らした彼女は、どこからともなく地図を取りだし、開くと私達へと広げて見せた。

 私が持っている簡素な地図よりも余程地図らしいそれは、色鮮やかな色彩で塗られており、疎い私にもとても判りやすく大陸が展開されている。

 越えてきた山々、今は無いの村があった場所、恐らく貴族達が住んでいると思われる大きな街の絵に、今から向かう予定である港町まで緻密に、繊細に描かれている。

 此の小屋の建てられているらしき場所には星が記されており、彼女は地図を開いて一番に、星の印を指差してとんとんと軽く叩いた。


「それ、で。これが現在地、いまいる場所」


 今一度彼女は地図を叩くと、さらに地図を広げた。ヴィダルと水晶玉に被さる程に大きく広がった地図に、広げる手伝いを行う配慮すら忘れ、私は暫しの凝視を禁じ得なかった。

 海にひかれた航路を指で追い掛ける彼女の動きを目で追うと、港町らしき物を二つ経由した後、全く異なる大陸へと辿り着いた。


「……此処からそう遠くない場所にある港町から出る定期船に乗って、一つ、二つ、三つ目に寄港する港町を経由して行く事が出来る水の都、バッケルヴィ美しい街。そこに、この人形を作った魔女がいる。

 別名、芸術の街よ。それはそれは美しい建物がずらりと並んでいて、且つ街中に綺麗な水路が行き渡っているの。とっても大きな街で、移動手段は優雅に小舟を使うのよ。

 絵画の中にでもいるような気分を味わえる、とっても素敵な場所。………、…って、…星が。言っているわ」


 饒舌に語り尽くす彼女の声色が、気持ちでも、何処か嬉しそうに思えたのは気のせいでは無かろう。信じていない訳では無い、寧ろ。何処か羨望を含んで口にする彼女の無垢な眼差しに、私は穏やかな瞬きをする。


「バッケルヴィ……」


 聞き慣れない街の名を、拙い発音で繰り返すベラを一瞥し、私は空咳を零す。


「ありがとうございます。私個人の私情でも、一度是非拝見してみたいと思う街のようですね」

「そうね。瞬く星達が美しいと言う街だから、観光……じゃなくて、知的センスを磨き上げるにもまたうってつけの街でしょうね」

「本当に、そう思います」

「それで? 二つ、聞きたいことがあるって言ってたわね。もう一つは何かしら」

「もう一つ、……あぁ」


 地図の下で身悶えるヴィダルを余所に、今度こそはと。地図を畳む手伝いをしていると、不可思議そうに尋ねられる。

 頭の片隅で、芸術の街を刻み込む私は、味気の無い返答をしてしまう無礼を謝辞の所作で許しを請うてから、少々の時間を食べさせて頂く。

 彼女が広げる前と同様に、綺麗に折り畳んだ地図をテーブルの上に置き直して、一呼吸をする。


「些細な事ではありますが、その若さで。此の森にお一人で住んでいらっしゃる貴女に尋ねたい事がございます」

「はいはい。だから、何かしら」

「それは……」

「バッケル、ヴィ…、……!」


 未だ街の名前を復唱するベラの肩を軽く叩く。小屋を見つけてすぐ、甘い物がなんとやらと言っていたのはこの子だ。

 小屋に近付こうと思ったのはこの子のお陰でもある。本題を質問させるのを忘れるのは、所謂勿体ない。


「この子はベラと言います。尋ねたい事、というのは、この子からなのですが」

「ふうん。ベラ? 何をあたしに尋ねたいのかしら」

「え、あっ、ええと……」


 唐突に話を振ったせいか、ベラの反応は愚鈍としていて、人見知りを克服しきれない幼子に等しい。

 少々質疑をさせるのは強引過ぎたか。眉根を寄せて疑問を顔に呈す彼女を見て、テーブルに伸びているヴィダルを手に手遊びをし始めている。

 嗚呼、如何した物か。

 えも言われぬ静かな沈黙が小屋の中を漂い、彼女の視線が、私とベラを交互に突き刺す。


「――あ、あまいものは、ありますか!」


 些か斜めに質問の趣旨が飛んだ風に思える。


「甘い、物?」


 ますますと疑念を隠さない様子に、ベラの狼狽えに拍車が掛かる。

 誤魔化しに手遊びをされていたヴィダルがベラの掌の中で潰れ始めており、私はと言えば、それを助ける事もせずにどう言葉を挟めば良いかと迷っている。

 酷く突飛な質問に、占星術を得意とする彼女はどう応えるだろう。


「甘い物、ねぇ」


 再度と繰り返した彼女は、踵を返して近場の棚へと向かった。両開きの戸を開けると、中にずらりと並ぶ小さな壺を取っては中を見比べ、また戻しては別の壺を取りだしている。

 一つ、二つ、三つ、四つと。順繰りに中を確認する彼女の動きが、一つの青い壺を取って調べた事で繰り返しを取りやめた。丁寧な所作で棚の戸を閉じると、彼女はその青い壺を手に戻ってきた。

 木製の蓋を開け、壺の口をベラへと寄せる。首を傾ぐベラの様子に、彼女の手はますますとベラへ寄せられた。


「……あまい、匂いが! します!」

「そう。ベラ、だったわね。何かわかる?」

「うぅ……なんでしょう、……はちみつ…?」

「惜しいわ。此れはねぇ、此処の森にしか無いラニーディって木の樹液を加工したものよ。まぁ、要するにシロップなんだけど」


 彼女は壺を引っ込めてテーブルの上に置くと、片手を水晶玉へとかざした。きっと星の声を聞いているに違いない。

 先よりは淡く光る水晶玉は、すぐに光を閉ざして静かに佇む。


「ラニーディのシロップは、とても甘くて、でもしつこすぎないさらっとした甘さなのよ」

「??」

「なるほど」

「はちみつよりも口当たりはさわやかで、それでいて甘いの。この森で採れるクランベリーを練りこんだクッキーを食べるとき、この森で採れるニルギリの茶葉で淹れた紅茶にラニーディのシロップをひと匙入れて飲むととっっっっっっっっ、…っても、美味しいのよ」


 大分矢継ぎ早に言葉を乗せて喋る彼女は、さながら歌うようである。

 機嫌の良いとは言えない面持ちを残したまま、折々に力を入れて紡ぐ姿には尊敬の念すら覚えそうだ。

 こほん、と、私のわざとらしい空咳がまたもや響く。……ベラの顔が、彼女の話で随分と輝いている。


「わ、私も、あまいもの、もらったんです!」


 勇気をもって発したであろうベラの声は、緊張の色が強いらしく、どこかこわごわとして震えていた。

 だが、彼女は笑うわけでもなく、どこか得意げな顔をして口を開き……彼女が自慢げに豪語した紅茶、クッキー、シロップを用意して喋り倒すのは言わずもがなである。

 私とヴィダルは、意気揚々とする彼女らの横、手持ちの水を啜っていた。




 午後をまわった太陽の日差しが、小屋の窓から室内へ降り注ぐ頃、いくばくか身軽になった私達は彼女の小屋を背にした。

 身軽になった内訳はというと、食糧を詰めてもらった空箱を占い駄賃として取り上げられ、いや、差し出し、水入れ代わりの瓢箪の一つをニルギリの茶葉とラニーディのシロップと交換したのである。

 空箱は外側にとても細かい火の意匠を施されていた物であった。彼女のような年頃の女性が好むのも無理はない。瓢箪を交換した詳細な理由は、単純に、ベラがもう一度旅の道中に飲みたいと愚図っての末だ。

 

「それでは、ありがとうございました。占星術士のレディ」

「どういたしまして。あたしも久々に、自分の村以外の人と喋れて楽しかったわ。良い物も手に入ったしね。ベラも、ヴィダルも。あなたも。元気で」

「! は、はい! あの、おいしくたべます!」

「はいはい」

「ミー……」

「いってらっしゃい」


 ベラの右肩で、体を伸ばして座り込むヴィダルの覇気のない声が鳥の囀りに掻き消える。それすら上書きするかの様に、彼女は凛とした声を張って私達の背中へ投げた。

 手帳に書き写させてもらったあの地図の道を思い出しながら、やがて見えてくるであろう街道を目指して進む。

 雨上がり特有の、湿気を含みながらもどこか爽やかな気候のもと、ベラの手を引いて道なき道を歩む。

 最後まで名を尋ねなかった私に、彼女もまた、名を尋ねてくる事は無かった。見た目以上に大人びているのであろう彼女を、立派な占星術士であったと、私は書き留めたい。

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