第69話 元勇者 いざカイテルと、大決戦!
そして決戦の日。
先日、カイテルが指をさしたコロッセオのような場所に俺は向かった。
警備の兵士に更衣室を案内された後、深呼吸をして精神を整える。
そして会場へ。
ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!
俺が会場に入った途端、周囲の観客席から大きな声援が送られる。
会場の中心。剣闘士が1対1で戦うような場所になっている。そして視線の先にはカイテルの姿。
「ほほう、さすがは『元』勇者だ。この俺様から逃げずにこの場に来るとはな」
「当り前だ、俺は約束したんだ。絶対に勝つってな!」
相変わらず自分が勝つことを前提にした言葉使いだな。まあ、戦ってみればわかるさ。どっちが強いか──。
「その勇気だけは認めてやろう。そして俺様の圧倒的な強さの前に敗れよ!」
挑発じみた言葉。絶対へし折ってやる。
「戦ってみればわかるさ」
「陽君、頑張って──」
「負けたら承知しないからね。絶対勝ちなさいよ!」
ローザとルシフェルの声が観客席から聞こえる。もちろんエマとセフィラも。当たり前だ、そのために俺はここに来たんだ。
「『元』勇者なんか倒しちまえ!」
「そうだそうだ、お前の伝説もここまでだ」
久しぶりだ、こんなアウェーの空気。その時も魔王軍に支配されたときでの戦いだった。それを実力で黙らせたんだっけ。
今回も同じだ。
「さあ、もう御託はいいだろう。戦いを始めようぜ!」
「そうだな、貴様の英雄伝説、俺様が終わらせてやる」
そして俺は戦う準備。
世界を束ねる悠久の力、閃光となりて暗黒を打ち払え!! 降誕せよ!! リミテット・ブレイク・ソード
同じタイミングでカイテルも武器を召喚。
彼が右手を天に向かって上げる。
どす黒くにじみ出る光が空から降り始め、カイテルの右手に。彼の剣が召喚された。
ドス黒く光り、禍々しい形をした剣。
「ずいぶん黒く光る剣だな。魔剣というやつか?」
「ご名答。さすがは元勇者、知っているようだな」
魔剣とは魔王軍の闇の力が強く入っている剣のこと。自身の剣に闇の力をともすことで自身の兵器を魔剣へと昇華させるのだが、それには魔王軍の幹部クラスの人物の力がどうしても必要となる。
つまりこいつは魔王軍とかかわりがあるということだ。それを堂々と公言。隠そうともしない。
この大観衆の前で、つまり大観衆も大半は魔王軍と関わり合いがあったり、なくても魔王軍に対して危機感を感じていないということだ。
そして俺とカイテルの戦いが始まる。確かあいつの種族値はこうだったな。
ランク A
HP 107
物理攻撃 130
物理防御 65
魔法攻撃 78
魔法防御 80
速度 75
まずカイテルがその魔剣を思いっきり降ると、その軌道に沿って巨大な雷撃が出現。
砲弾のような形をしたその雷撃、そのまま1直線に俺に向かって飛んでくる。
「やはり強いな」
俺は剣を縦にして何とか攻撃を受け流そうとする。しかし結局流しきれず2.3メートル後退してしまう。
そしてそれを見たカイテルは2発、3発と連続で攻撃を放つ。
その圧倒的なパワーに押され気味になる。
圧倒的な火力、パワーの差を生かして一気に勝負を決めるのがこいつの戦法なんだっけ。
(やはり元勇者。実力はそれなりにあるようだ)
確かに今押してるのは自分だ。目の前の相手は防戦一方。いつもならここで攻勢をければ相手は攻撃を受けきれず一気に勝敗は決まる。
むろん手加減しているつもりはない。しかし相手も息を切らしたり、必死になっている様子もない。攻撃をかわしきっている。
「元勇者、これはしのげるかな?」
さっきの攻撃より、1周り大きい砲弾。
確かに威力は強い、けどこれならいける。
俺は障壁を張り、その攻撃を受ける。砲弾は障壁と衝突し爆発を起こす。
「チャンスだ!」
そのすきをついてカイテルは一気に俺に向かって踏み込んでくる。
俺からカイテルは爆発の煙に遮られ見えない。攻撃に出るにはうってつけというわけだ。
そしてカイテルは一気に剣を振り下ろす。
その瞬間、俺はいままでとは比べ物にならない速さでカイテルの胴体を薙ぎ払う。
カイテルの肉体は吹き飛び、壁に激突。そして俺を見るなり叫ぶ。
「なんだ今の強さは。攻撃が全く見えなかったぞ!」
明らかに動揺を隠せないでいる。まあ、見たことがない速さだったんだろう。
これは俺が昔、はるか格上の相手と戦うことを想定し手編み出した術式。
一時的に魔力の供給量を極度に上げただけだ。それ自体は誰でもできる行為だが、俺の場合、その量が違う。
普通の人間であればせいぜい2倍程度だが、これは10倍近くの魔力を出せる。
人間、いくら100メートルを全力で走れと言われても、歩けなくなったり、動けなくなるくらい体力を使い切ることなんてできない。
この状態というのは100メートル走で、身体のすべての体力を使い切るというようなものだ。
その分ガス欠を起こすのも速い。大体数分しか持たない。相手が、それに気づいて守りに入られたりしたらそれだけで敗北につながるリスクが高い代物。
格上の相手と戦うこと、そして力尽きて仲間が助けに来てくれることが条件という限られた時しか使えない。
実用的じゃなかったから、使わなかっだけなんだけどね。
けどこいつは魔王軍の戦いのような、極限の状況や、ギリギリの戦いを知らない人物、おまけに俺の力に強く動揺しているのが目に見えている。
1分ほどならなくならない。チャンスだ。
俺は一気に踏み込む。そして怒涛の連続攻撃。
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