色無地を探して
増田朋美
色無地を探して
色無地を探して
尾畑奈々子は、居場所のない一人の女性。ある日、家の中にずっといるのが嫌になり、何か習い事をしようと思い至った。習い事と言っても、一般的な女性が習うというものはいやだった。彼女は通信講座というものも嫌いだった。どうせ習うなら、師匠のお宅に行って、しっかりと対面式で習えることを習いたい。理香子は、そう思っていた。そう思ったらさっそく、パソコンを開いて、習い事をさせてくれる教室を探し始める。どうせ習うんだから、日常から離れて、思いっきり楽しめるのがいいと思う。なぜなら、彼女の日常というのは、とても味気ない日常だったのだから。
彼女は、仕事と言えば、会社に出かけて、一日中パソコンとにらめっこする仕事だった。まあ確かに、パソコンに向かって、キーボードを打ち込んでいたら、それなりに生活をするための、お金は得ることはできた。それはある意味ではとても素晴らしいことではあるけれど、勤続して15年もたってしまうと、お金はいくら得られても、楽しみということは得られなかった。だって、自分は美人でもないから、男性社員と恋愛関係になることもない。よさそうだなと思った男性社員は、ほかの女性社員に取られてしまう。何度か、男性社員に告白しようと思ったことはあったが、それも大体、する前に女性社員が邪魔をしてきて、結局、告白は失敗に終わってしまうのだった。そんなこともあって、軽く鬱の状態になりかけたこともあった。薬を飲むのが嫌いなので、それは回避しようと努力したが、そういうことからも、何か習い事をしようと思ったきっかけでもある。
どうせ休日は、どこにも行かないし、家の中に閉じこもったままだ。それか、食材を買いにスーパーマーケットへ行くだけである。それでは確かに家で生活していても味気ないと言えば味気ないものである。
奈々子は、稽古場をリンクさせている、検索サイトで、習い事を検索してみた。この味気ない日常をちょっと変えてくれるような、そんな習い事があればいいなあ。と思いながら。そういう想いを持っていると、ピアノとか、油絵のような西洋的な今はやっているものではなくて、日本画とか、華道などの日本の伝統文化に足が動いた。でも、道具を用意する店が近くにないのも、困ってしまうものだ。それでは一寸面倒だから、通販で、必要なものが手に入る習い事はないかと思い始める。それなら、中古楽器のオークションサイトなどで、手に入れればいいなと思う。それで楽器が手に入る習い事はないかと思うが、ピアノやギターなどの、習い事は、一寸平凡すぎるし、ピアノはちょっと大きすぎる。ギターは音色が好きではない。子供のころの音楽の授業で楽譜は何とか読むことはできるが、合唱団に入るのも、好きではなかった。奈々子は、集団で何かするより、個人で何かするほうが好みだったのだ。
そんなわがままな彼女に応えてくれる習い事はあるのか、と思われるかもしれない。安価で習い事の準備ができて、そして面白くて、あまり集団を必要としない習い事、、、。彼女は、パソコンの画面を目を皿のようにして見つめていると、パソコンの片隅に、花村お箏教室という表示があったのでそこをクリックしてみる。
それは、お箏教室で、奈々子はお箏という漢字も読めなかったが、どうもホームページの内容に従うと、琴の旧字体で箏と書くようなのである。その流派には生田流と山田流があり、生田流のほうが圧倒的に多く、全国の九割くらいのお箏教室が生田流となっているようであるが、このお箏教室は、少数派の山田流という流派をやっているようなのだ。これはいけるのではないかと、奈々子は思った。こういう希少なものをやっているんだったら、習う生徒も少ないだろうから、比較的気軽に習えるのではないか。よし、一寸電話をかけてみよう、と奈々子は、軽い気持ちで、スマートフォンを取り、電話をかけた。
「はい、花村会です。」
と、電話に出たのは、中年の男性である。珍しいなあ、琴は女性というイメージがあるが、男性が主宰なんて、と奈々子は思いながら、こういう風に話を切り出してみた。
「あの、こんなことを言っては難ですが、新規入門を受け付けていらっしゃいますでしょうか?」
彼女がそういうと、電話の男性は、
「ええ、いつでも大歓迎いたしますよ。いつ頃こちらに来られますか?」
と答えるのである。奈々子は、うれしくなって、
「あの、私、仕事を持っておりまして、金曜日の夜か、土曜日が良いのですが。」
と言ってみる。すると、相手の男性は、
「わかりました。じゃあ、土曜日の10時くらいでどうでしょう?」
という。奈々子はまたうれしくなって、
「ええ、ぜひお願いします。」
と言った。すると男性は、了解しましたと言った。
「あの、失礼なお話ではありますが、今お電話の方がご指導して、、、?」
奈々子が聞くと、
「ええ、わたくしが始動させていただきます。わたくし、花村会の主宰の、浜村義久です。」
と彼は答えた。
「わかりました。よろしくお願いします。あたしは、尾畑奈々子。製紙会社で事務をしています。仕事は、完全週休五日制なので、土日は休みです。」
と奈々子は言った。
「了解しました。まあ、すぐにとは言いませんができれば、着物を着て、いらしてくださると助かります。」
と言う花村さん。ああそうか、邦楽、日本の伝統音楽だから、着物というものが必要になるな、と奈々子は思った。
「はい、わかりました。デパートとかの呉服屋さんに行けばいいのでしょうか?」
「ええ、そういうところでもいいし、通信販売でもいいし、リサイクル着物でもいいですよ。帯結びが難しいようでしたら、作り帯でもまったく結構です。いずれにしても、一番楽なやり方で着物を着てきてください。」
そうか、そういう事も、しなければならないな。
「あの、大体いくらくらいで入手できるのでしょうか?」
と奈々子が聞くと、
「ええ、リサイクル着物であれば、一万円以内で一式そろえられます。箏は、最近は、琴柱付きで千円で買うこともできるようですよ。気負わない方法で買ってください。」
と、花村さんは言った。
「まずは体験入門という形をとることになっています。体験入門は、今週の土曜日でよろしいですか?」
「ええ、よろしくお願いします。」
と、奈々子は即答した。
「じゃあ、土曜日の10時にいらしてください。稽古場の場所は、富士市の交流プラザの近くです。」
花村さんから稽古場の場所を教えてもらうと、富士駅からかなり近い場所にある事が分かった。やった、これでやっと私の日常も少し華やかになるかなと奈々子は喜んだ。じゃあ、必ず着物を着て、そちらに行きます、と言った奈々子は電話を切って、着物探しを始めた。確かにリサイクル着物で検索すると、500円とか1000円とかで着物が入手できるようになっている。3000円で着物と作り帯のセットで売っているというサイトもあった。奈々子は問題なくそれを買った。翌日にそれは宅急便でやってきた。今の通販は本当に早い。遅くても三日あれば目的のものにたどり着く。
そして土曜日。奈々子は、動画サイトで着物の着方を調べ、見よう見まねで着物を着ると、花村会のある所に、向かって歩いた。花村会は、歩いて行けるところにあった。さすがに、普段着ない着物を着て歩いてみると、世界が全然違っているように見える。
さて、地図アプリで探した通り、花村会のある所にたどり着いてみると、そこはお箏教室というような感じの建物ではなくて、一見すると普通の家であった。表札の隣に小さく、花村会と書かれた看板が置いてある。
奈々子は勢いよく、ピンポーンとインターフォンを押した。
「はいどちら様でしょうか。」
と、花村家のお手伝いさんである、秋川さんの声がする。
「はい、あの、この間電話した、尾畑奈々子ですが。」
と、奈々子が言うと、新規入門の方ですね、という声がして、ドアががちゃんとあいた。すると一寸見ただけでも普通の男性とは明らかに違う男性が、そこに立っていた。男性としては小柄な人で、女性と変わらないくらい細身のひとだったが、それでもどこか神秘的というか威厳を持っているような雰囲気がある。紺色の着物を着て、縞のない袴をはいている。
「初めまして、主宰の花村義久です。」
と、彼は、にこやかに笑って一礼した。
「今日、体験入門をご依頼された方ですね。こちらへどうぞ。」
と、花村さんは、彼女を部屋の中に招き入れる。入り口から入ってすぐが、お稽古場のようだ。そこへ入ると、箏が四面ずらりと並んでいた。花村さんは、素早く、キーボードスタンドのような台にお箏を乗せた。
「それでは、まずお箏に触れてみましょうか。この楽譜を見てください。」
と、花村さんは、奈々子を箏の前に座らせる。
「じゃあ、まず、絃の番号を覚えていきましょう。l自分から見て一番遠いところから壱、弐、参、四、五、六、七、八、九、十、斗、為、巾となります。」
と、花村さんの言われた通に爪をはめて、奈々子は、親指を壱の絃に置いてみて、それをはじいてみた。そして、壱、弐、参、四、五、六、七、八、九、十、斗、為、巾と口にしながら絃を指ではじいてみる。そうすると、ミ、ラ、シ、ド、ミ、ファ、ラ、シ、ド、ミ、ファ、ラ、シと音が鳴る。何とも言えない不思議な音で、何だかそれが出せたというのが、うれしい気がしてしまう奈々子だった。
「それは今お箏の基本調子である、平調子に調弦されているんです。この琴柱を動かすことによって、雲井調子や中空調子といった、音階をつくることができます。」
なるほど、そういう原理で音を出すのか!それはすごいな。ピアノなんかと全然ちがって面白いや!と、奈々子は思った。
「じゃあ、桜桜をやってみましょうか。わたくしに続いて、その番号の絃をはじいてください。」
と言われて、奈々子は、七七八、と絃をはじいてみる。何だ、思ったほど難しくないじゃないかと思った。
「いいじゃないですか。よくできておられますよ。桜桜。」
と花村さんに言われた時は、奈々子はうれしくて、思わずありがとうございます!と言ってしまう。
「ありがとうございます。ぜひ、正式に入門させていただきたいです!私、お箏についてもっと知りたいんです!」
と、奈々子は声を上げた。花村さんは少し考えて、
「わかりました。入門していただくなら、誰にでも課している条件があります。お箏教室の制服と勘違いされるんですけど、茶道などの稽古事でもよく課されるんです。」
と言った。まあ、学校に行くとき、指定の制服というのがあるのと同じで、お箏教室も制服というものがあるのだろう。
「素材は、できれば礼装用の羽二重で、色無地を一枚探してきてください。柄を入れないで、黒か白以外の一色で染めた着物を用意すること。それが、入門への第一条件です。日本では、器や楽器に敬意を払って、習い事をするときは、色っぽい着物は着てはなりません。あなたが今着ていらっしゃるは訪問着だから、それはお箏に対して失礼になるんです。ぜひ、色無地を一枚探してきてください。」
と、花村さんは口調は穏やかではあるものの、一寸きっぱりといった。確かにそうだろう。お箏の前で色っぽい恰好をしたら、女郎みたいになってしまう。それを回避したいということだと、奈々子は思った。
「わかりました。必ず色無地を探してきます。じゃあ、来週から正式に入門させてください。」
と、奈々子は、花村さんに頭を下げる。
「わかりました。では、来週色無地を着ていらしてくださることを楽しみにしています。」
と、花村さんはにこやかに言った。その顔を見ると、色無地を探すということはさほど難しくないということかなと奈々子は思ってしまった。
さっそく、体験入門から帰ってきた奈々子は、急いで通販サイトで色無地、正絹と検索してみる。しかし、化繊で作られた色無地はたくさん出て来るが羽二重というものを探し出すと、とんでもない値段になってしまう。奈々子は、せっかく花村さんが出してくれた入門条件を破るわけにはいかないとも思った。リサイクル着物の通販サイトも試してみたが、正絹とは明記されているが、羽二重とは明確にしていないサイトがあまりにも多いので、間違えたらちょっと怖いと思い、あきらめてしまった。よし、明日、ショッピングモールの中にある呉服屋さんへ行ってみよう。奈々子はそう決断した。
翌日。
奈々子は、ショッピングモールに行った。呉服屋さんは、その一角にある事は知っていた。店に行ってみると、着物を着た中年のおばさんが、いらっしゃいませとにこやかにあいさつした。
「あの、色無地を探しているんです。羽二重ありませんか。」
と、一寸緊張して言ってみる。
「羽二重ですか、失礼ですけど、お客様の年齢を教えてください。」
と、店員のおばさんは、ちょっと驚いた声でいう。
「はい、35歳です。」
奈々子は正直に自分の年齢を言った。
「そうですか。そうなりますと、色無地を売るのは難しいですね。一体色無地を何に使うんですか?」
と店員のおばさんはそういうことを言った。
「色無地とは、もともと略式の結婚式とか、お友達の結婚式などに使うものです。それに、あなたのような年齢では、色無地を着ても間違いということはないですけど、一寸地味すぎるのでは?もし、結婚式に招待されたのであれば、35歳という年齢上、色無地ではなく、振袖を選ぶべきではないですか?」
店員のおばさんは、親切でそういうことを言ってくれたのだ。確かに、色無地の使い道にはそういう使い道もある。
「色無地は、柄がまったくないじゃありませんか。だから、地味だということで35歳のあなたが着るには、適しておりません。もし、結婚式とかそういう場所に着ていくのであれば、振袖を着るべきです。もし、考えを改めてくれるなら、振袖出してきましょうか?」
こういう風にして、呉服屋さんはわざと高いものを買わせるのか!と、奈々子はピンときた。確かに呉服業界には問題が多いというのは、自分が成人式の時に、家族に聞いたことがあった。呉服屋の売り方は、とても変で、無理やり高いものを売りつけたり、意思のない契約をさせられたりということもあると聞いたので、奈々子は成人式の振袖をレンタルで済ましたのである。もしかして今回もそうなのかもしれないと思った。このおばさんは、もしかしたら、色無地は若い人には使えないというのをマインドコントロールのように植え付けて、自分に振袖を買わせるという魂胆なのかもしれなかった。ちょうどその時、店の中の時計が11時を指したのに奈々子は気が付いて、
「すみません、11時から、用事がありますので、ちょっと失礼します。」
と言って、店をそそくさと出ていった。店のおばさんは、それ以上何も言わなかったが、奈々子は怖くて後ろを振り向くことができなかった。彼女は、急いで、ショッピングモールを出て、近くのカフェに入って、軽く昼食をとる。平日は、仕事があるので、ショッピングモールに行ける時間は限られているし、呉服屋というところに足を踏み入れたら、また意志のない契約をさせられるかもしれないというのが怖かったので、二度と行けないと思った。しかし、インターネットでは羽二重という素材がはっきりと明記されていない。店員がいないのはいいが、こちらがある程度知識がないと使えない着物の入手方法だった。
「はい、ワッフルでございます。」
と、皿を持ってきたカフェの従業員が、彼女に声をかけた。この店は、カフェと言っても外国人向けにちょっと和風を売りにしている店で、従業員たちは、着物を着ている。
「あの、すみません。企業秘密だったら答えないでもいいですが、一寸教えていただきたいのですが。」
と、奈々子は、彼女に言った。。
「その、あの、えーとですね。今あなたが着ている着物というものは、どこで入手されたのでしょうか?着物屋さんですか?それともインターネット?」
「いえ、違います。増田呉服店という個人のお店です。」
とその従業員は彼女に言った。
「外国人の方が経営されているお店で、とても安いから重宝しています。」
外国人か。確かに、このグローバルな時代であるから、外国人がお箏奏者になることもあるし、僧侶になることもある。其れと同じことだろう。
「じゃあ、そこに、あの、羽二重の色無地というものは、あるんですかね。」
と、奈々子は聞いた。
「ありますよ。ちゃんと教えてくれるから安心して。」
とその従業員は言う。おーいちょっと、と別のお客さんが彼女を呼んだため、従業員との会話はそれでおしまいになってしまったが、奈々子は増田呉服店という言葉はしっかり聞きとった。そして、スマートフォンを取って、増田呉服店の場所を検索した。ちょっと遠いが、タクシーを使えば行ける距離だ。よし、行ってみよう。奈々子は急いでワッフルを食べて、カフェにお金を払い、タクシー会社に電話して、増田呉服店に行ってもらうようにお願いした。
その呉服店は、一応看板には増田呉服店と書いてある、一応着物屋ではあるが、中は、洋風のブティックという感じの小さな店であった。でも、確かに、着物が所狭しとおいてある。
「いらっしゃいませ。」
と、一人の男性が彼女を出迎えた。男性は、黒髪であったが、瞳が青いので、やっぱりあのカフェの従業員が言った通り、外国人であった。
「あの、一寸お尋ねしたいのですが、ここに羽二重の色無地というものはありませんか?」
と、奈々子はちょっと緊張して聞いてみる。
「はい、ございますよ。色は何色にしたらよろしいですか?」
と、外国人、つまりカールさんは、彼女に言った。え?色が選べるの?と奈々子はびっくりしたが、「えーと、現在在庫である、羽二重の色無地は、赤、グリーン、ピンク、黄色の四枚ございますが?」
と聞かれたのでさらにびっくりする。先ほどの呉服屋さんでは、希望する色など口にしてはいけないような雰囲気であったのに?
「そうですね、私の好きな色はピンクです。」
と、奈々子はそういうことを言ってしまう。カールさんはわかりましたと言って、売り台から一枚の着物を取り出した。これはまたなんという高級な布だろうか。
「羽二重ですからね。最高級クラスの生地として、多少薄暗いところでも光ります。」
という説明の通り、着物は真珠のような光を放っている。薄いピンク色で、地柄は青海波だから、おめでたいときに使ってくださいと、カールさんは説明した。
「あの、これはいくらなのでしょうか?」
奈々子が聞くと、
「三千円で大丈夫です。」
と、カールさんは答える。それでは、すぐに買える値段だ。しかし、羽二重というものが、こんなにも美しくて高級なものだとは思わなかった。確かに柄は何もないが、十分美しいものであった。これでお稽古に行くんだもの。生半可な気持ちではお箏に触れられないということを、花村さんは示していたんだと思う。
でも、言ってしまったんだもの、入門するって。それは、一度言ってしまったら、もう取り消しできないよね。それを、しっかり感じていかなければと、奈々子はそう思った。あの時は、偶然見つけた習い事程度しか感じていなかったけど、もしかしたら、自分が変わるための、一大事なのかもしれない。
「わかりました。これください。」
彼女はそういって、カールさんに三千円を渡した。はい了解しました、とカールさんはそれをたたんで、紙袋の中に入れた。
「羽二重を何に使うんですか?」
と、またおなじ質問をされた。奈々子はぎょっとするが、カールさんは挑発的な態度ではなかったので、
「はい、お箏教室です。」
と、正直に答える。
「そうですか。確かに和のお稽古事には、色無地の着用が義務付けられることもありますからな。頑張ってお稽古してください。」
と、カールさんは、にこやかに笑って言った。ということは、やっぱり花村さんの発言はちゃんと意味があったということである。
「はい、どうぞ。」
渡された色無地は、ずっしり重かった。でも、これから日本の伝統を習うんだという期待の重さだと、奈々子は思った。
色無地を探して 増田朋美 @masubuchi4996
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