エピローグ
いつもと同じ朝、いつもと同じ様に遅刻間際になり少女は朝食を摂る。
「急がなきゃ、急がなきゃ…!!」
少女は慌てて自室に戻り支度を済ませようとした。
その時、一つの空き部屋に目がいった。
ただの空き部屋、何年も使われてないはずなのに何か気になる。
"もし"兄や"姉"がいればここを使っていたかもしれない。
けれども私は一人っ子、そう思いながらなんとなく部屋を開けた。
何もない、ただの空き部屋だ。
そう思ったその時だった。
『幸せになってね。』
そう聞こえた。
聞き覚えのある、懐かしい声で。
そして涙がこぼれ落ちた。
「お姉…ちゃん?」
無意識に声に出してしまった。
瞬間、膝をつき彼女はそのまま泣き崩れた…
※
「二度とこんな事のために能力は使わないからな。」
「ありがとうな、黒鉄。」
山崎莉奈の家が見えるマンションの屋上で会話する二人。
彼はどこか悲しげな笑みの中礼を言った。
「お前は甘すぎる。さっさと特務部隊なんてやめてまともな所に行くことをオススメするよ。」
「そうもいかないさ。お前だって知ってるだろ?」
「だが本当に出来るのか?敵討ちなんて事。」
蘇る記憶。
血まみれになった父の姿。
もはや何をいっていたかも覚えていない。
いくら揺さぶっても起きることは無い。
それはそうだ。もう死んでしまっているのだから。
ただそれでも怒りに心を支配されていたのはしっかりと覚えている。
その中、後ろから優しく抱きしめる師、陣内。
彼が何を言っていたのかももう思い出せない。
けれどももう心は決まっていたのだ。
『お願いだ…俺に刀を…父さんを殺した奴を殺すための力を教えてくれ…!!』
この時、力が目覚めたんだと思う。
だって持っていないはずの刀を持っていたのだから。
そして先生は静かに微笑み、
『ああ、分かった…。君に何もかも教えよう。僕の持つ、全てを。』
彼は再び少年を抱きしめた。
「大丈夫、必ず果たすさ。敵討ちは。」
「そうか、なら良いんだが。」
二人は屋上から飛び降りバイクに跨る。
そしてけたたましい音と共にその場を去って行った。
これは、稲本作一と呼ばれた剣士の復讐、そして彼が全てを失うまでの物語である。
To be continued……
忌み名を背負いし者 芋メガネ @imo_megane
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