第59話「羽妖精たちの報告を聞く」

 ──数日後 トール視点──






「──国境近くの偵察ていさつに行って参りました」

「──この目と耳に、情報を焼き付けて来たのです!」

「──できたてホヤホヤの服で飛ぶの、気持ちよかったですー」



 羽妖精ピクシーたちはそう言って、俺たちにお辞儀じぎをした。


 ここは、将軍の屋敷にある、俺の自室。

 その隅っこに置いた、簡易倉庫の中だ。


 ルキエがいる間は、魔王城と同じように、ここでお茶会をすることにした。

 だから俺とルキエとメイベルは、こうしてテーブルについて、お茶を飲みながら話をしてる。


 羽妖精たちがいるのは、彼女たちがさっきまで、国境近くの偵察ていさつに出ていたからだ。

 帰ってきてすぐに報告をしたいと言ったから、お茶会に招待することにしたんだ。


 本当はみんなでのんびりしたいんだけど、そうもいかなくなった。

 数日前、帝国の兵団が近づいているという情報が入ったからだ。

 予告されてたのよりも早く、そして、大規模だいきぼだった。


 国境の視察に向かうはずだったルキエは、ライゼンガ将軍の屋敷で待機することになった。

 帝国の動きがわからないと、動きようがないからだ。


 もちろん将軍や宰相のケルヴさんも、国境近くに偵察の兵を出してる。

 それを聞きつけた羽妖精ピクシーたちも偵察に行き、こうして情報を持ち帰ってくれたというわけだ。


「じゃあ、ソレーユ。なにを見て来たのか教えてくれるかな」

「はい。錬金術師れんきんじゅつしさまの仰せのままに」


 半透明の服をまとったソレーユが、テーブルの中央に進み出る。

 彼女はスカートをつまんで一礼。

 俺のスプーンからお茶を飲みながら、ゆっくりと話し始める。


「今回、わたくしども羽妖精は、国境地帯の偵察に行ってきたのよ」


 ソレーユはうなずいて、それから、


「まずは街道の近くで、たくさんの兵士たちがノーザの町に向かっているのを見たの。先頭には偉そうな戦士がいて、隊列の真ん中を馬車が進んでいたの。立派な馬車で、剣と花の紋章もんしょうがついていたの」

「剣と花の紋章もんしょうか……」

「ご存じなのですか? トールさま」

「確か、皇族の女性の乗り物につける紋章もんしょうだったと思う。また、帝都から皇女が来たのかもしれない」

「聖剣の姫君でしょうか?」


 メイベルが不安そうな口調で言った。

 俺はソレーユの方を見て、


「それが気になって、ソレーユはノーザの町に入ったんだね?」

「そうなのです。せっかく元気になったんだから、それくらいしないと」


 むん、と、胸を張るソレーユ。

 両脚をふんばって、力強いポーズを維持してる。

 毎日『フットバス』に浸かってるうちに、元気になったみたいだ。


「来たのが聖剣の姫君なら、また魔王領が大騒ぎになるかもなの。だからソレーユたちはその人がいる建物にこっそり近づいたんだけど……」

「だけど?」

「聖剣の姫君とは別人のような気がするの。ソレーユが見た姫君は、とても強くて、いびつな光の魔力を持っていたの。あんな魔力で聖剣はあつかえないの」


 ソレーユは深刻そうな顔で、うなずいた。

 そっか。

 光の羽妖精のソレーユは、光の魔力を感知できるんだっけ。


「でも、いびつな魔力って?」

錬金術師れんきんじゅつしさまに治してもらう前のソレーユみたい」


 俺の問いに、ソレーユは答えた。


「ううん。もっといびつなの。流れるべき水が、よどんで、どとこおって、氷のように固まってしまったみたい。あんな状態だと、すっごくつらいはずなの」

「そんな人を、わざわざ国境まで連れてきたのか……」


 俺の時もそうだったけど、どうして帝国はそういう無茶をするんだろう。

 まるで──使えない人間を、遠くに場所に捨てようとしてるみたいに。


「ソレーユよ。その皇女について、他に情報はあるか?」


 ルキエがソレーユに訊ねる。

 ソレーユは、他の羽妖精さんたちに話を聞いてから、その証言をまとめて、


屋敷やしきにいた人は皇女さんを『ソフィアさま』と呼んでいたようなの」

「ソフィア……それがその皇女の名前なのじゃな」


 ルキエは俺の方を見た。


「皇女の名前に心当たりはあるか? トールよ」

「ありません。おそらく、皇位継承権こういけいしょうけんを持たない皇女だと思います」


 皇子や皇女の名前は、貴族に対しては公開されている。

 公開されないのは、皇位の継承権を持たない皇子や皇女だけだ。


 それが、皇帝の子に生まれながら、戦う力を持たない者の扱いらしい。

 表舞台に出ることもなく、政略結婚に使われたりするそうだ。


「ソレーユは、その皇女さんの話を、少しだけ聞けたの」

「どんな話をしておったのじゃ?」

「えっと……『スマホが欲しい』……って言ってたの」

「『スマホ』!? あの伝説のアイテムを!?」


 俺は思わず声をあげた。

 ルキエとメイベルも驚いたのか、ふたりとも目を見開いている。


「……おそるべき皇女じゃな」

「……『スマホ』って、勇者たちの世界にあるという、万能アイテムですよね」


 ふたりがびっくりするのも無理はない。

『スマホ』とは、勇者たちが最も重視していたアイテムだ。

 異世界から来た彼らは、いつも『スマホ』を使いたがっていたんだ。


 彼らがこの世界で『スマホ』を使った記録はない。

 持ち込めなかったか、召喚しょうかんされた時に封印されたというのが定説だ。


 ちなみに勇者たちの話によると、『スマホ』にはこんな能力があったそうだ。



・鳥のように高い視点から、地上を眺めることができる。

・さまざまな感情が渦巻く空間と接続できる。

・離れたところにいる者と話ができる。

・対価さえ支払えば、世界中のあらゆるものを手元に引き寄せることができる。



 その能力は多岐たきにわたっている。

 俺も、勇者の記録を読んだとき「冗談だろ。この能力」って思ったくらいだ。


「トールは『スマホ』を作れるのか?」


 ルキエは小さく震えながら、俺の方を見ていた。

 俺は首を横に振る。


「残念ですが、無理です。形状と構造と、具体的な能力がわかりません」

「『通販カタログ』にはっておらぬのか?」

「『スマホケース』やアクセサリーはあります。でも、『スマホ』そのものは掲載けいさいされていないんですよ」


『通販カタログ』には、『スマホ』そのものの写真はない。

 だから、あれがどういうものかは確認できないんだ。


 そもそも、どうすればあんな万能アイテムを作れるのか見当がつかない。

 必要な素材も、属性もわからない。

 あれは、俺の技術では追いつけない、まさに夢のアイテムなんだ。


「……そうじゃな。勇者が欲しがるアイテムじゃものな」


 ルキエはため息をついた。


「じゃが、興味はある。トールはあれをどのようなものじゃと考えておる?」

大規模だいきぼ魔術儀式ぎしきに使うキーアイテムだと考えています」


 ひとつのアイテムが、あれほど多くの能力を兼ね備えるのは不可能だ。

 たぶん、願いを叶える魔術儀式が、勇者の世界にはたくさんあったんだろう。

『スマホ』はその中枢ちゅうすうに位置するアイテムだと、俺は考えている。


「『通販カタログ』の写真を見ると、『スマホ』ケースの大きさは手の平に載るくらいです。そんな小さなもので遠くの人間と会話したり、世界中からアイテムを取り寄せたりできるとは思えないんです。だから──」

「願いを叶える儀式で使うキーアイテムだと考えたのじゃな」

「たぶん、魔法陣の中心に置くとか、祭壇さいだんに載せてあがめるとか、そういう使い方をするんでしょうね」


 今の俺には『スマホ』を作ることはできない。

 でも、いつか『創造錬金術オーバー・アルケミー』で複製ふくせいしてみせる。

 それは、俺が勇者の世界を超えた証明にもなるはずだ。


「ごめんソレーユ。話がれたね。皇女は他になにか言ってた?」


 俺はソレーユにたずねた。

 ソレーユは少し考えてから、


「そういえば……『魔王領と戦う意志はない。戦を起こすつもりも、民を巻き込むつもりはない』と言ってたの」

「『魔王領に敵対の意思はない』……?」


 ルキエは、不思議そうな顔をしてる。

 メイベルも首をかしげてる。たぶん、俺も同じ表情をしていたと思う。


 帝国の兵団がやってることは、それと逆の行動だったからだ。


 俺たちはテーブルの上にある地図に視線を向けた。

 国境地域と、帝国領のノーザの町までの周辺地図だ。


 そこに置かれた白い石は、帝国の部隊の位置を示している。

 魔王領の偵察兵ていさつへいと、羽妖精さんたちがくれた情報を元に配置したものだ。


「ここがノーザの町。その西に平原がある。そして、その平原で帝国兵が魔術の試射ししゃを行っておるのを、兵が確認しておる」

「平原の近くには道がありますね」

「前に話したとおり、魔王領は帝国領の村と交易しておる。ここはその通り道じゃ」


 ルキエの細い指が、街道から村までをなぞっていく。

 それで俺も、帝国兵の狙いがわかった。


「帝国兵がこの平原を軍事訓練の場所にするとしたら……それはたぶん、嫌がらせですね」

「やっかいなことじゃがな」


 ルキエは白い石を、村に通じる道の近くに移動させた。

 それから黒い石をつまんで、魔王領から村に向かって移動させる。

 その石を魔王領の商隊だとすると──軍事訓練をしている帝国兵のすぐ側を通ることになる。


 確かに、やっかいな位置だった。


 帝国兵がその場所にいれば、魔王領から出てくる荷馬車を監視かんしできるる。

 移動中に軍事訓練が行われれば、魔術や矢が飛んでくる可能性だってある。

 そうなったら、落ち着いて交易こうえきなんかできない。

 人間の村のひとたちだって、やりにくいはずだ。


「魔王領と帝国の村の交易は、別に禁止されてはいないんですよね?」

「帝国からは、黙認もくにんされている状態です」


 俺の質問に、メイベルが答えてくれる。


「魔王領の特産品を欲しがる人間もいます。魔王領では手に入りにくいもので、帝国では普通に買えるものもあるんです。だから細々と、こっそり交易して来たのです」

「帝国兵はそれを知って、嫌がらせに来たのじゃろうか……?」


 ルキエが、うんざりした顔になる。


「じゃが、ソフィア皇女という者は『魔王領に敵対する意志はない』と言っていた。それはおそらく、本心じゃろう。その者は羽妖精ピクシーがいたことに、気づいてもおらなかったのじゃから、嘘を吐く理由はない」

「気づいていたとしても、わざわざ『敵対しない』と言うのは変ですね」

「……ですね」


 俺とメイベルも、ルキエにうなずき返す。


「帝国兵の動きを見れば、悪意があるかどうかはわかるんですから」

「そうなると皇女の意志と、兵の動きが異なっていることになるな。それが妙に気になるのじゃが……」



「聞いて参りましょうか?」




 不意に、ソレーユが声をあげた。


羽妖精ピクシーがお話をうかがってまいります!」

「燃える情熱をもって話せば、きっと心は通るはず!」

「ポカポカがくがくして本心を聞き出すのー」


 他の羽妖精ピクシーたちも、こくこく、とうなずいてる。


「気持ちはありがたいが、危険が大きすぎるな」


 だけど、ルキエは首を横に振った。


「皇女のまわりには護衛の兵がおろう。何度も行き来すれば、発見されやすくなる。そうなれば、お主たちの身が危ない」

「「「「錬金術師れんきんじゅつしさまはどうお考えですか!?」」」」


 ソレーユたちは訴えるみたいに、俺の方を見た。


「俺も、ルキエさまと同意見だよ。みんなを危険にさらしたくない。羽妖精ピクシーが姿を隠すのが上手いのはわかるけど、絶対に見つからないわけじゃないからね」


 俺は言った。


 帝国兵の中には、魔術や武術の使い手もいるはずだ。

 羽妖精の気配や姿を見抜く者もいるかもしれない。

 危ない真似はさせたくない。皇女の身辺を探るのは、別の手段を考えた方が──



「──お役に立ちたいです」

「──羽妖精だとバレないようにいたします!」

「──錬金術師さま。どうか、お力を貸していただけませんか?」



 地属性と火属性の羽妖精、それとソレーユが俺に向かって頭を下げた。

 風属性の羽妖精は、マイペースにお菓子を食べ続けてるね。

 俺の方を見てるのは……口のまわりが食べかすまみれになったからか。わかった。いてあげるから動かないでね。


 でも……『羽妖精とバレないように』か。

 確かに、それなら危険は少なくなる。たとえば……動物に化けるとか。


「ルキエさま。聞いてもいいですか?」


 俺は羽妖精の口元をぬぐってから、ルキエの方を見た。


「ノーザの町で一番目立たない生き物って、なんでしょうか?」

「目立たない生き物? そうじゃな……あの町には、フクロウや猫が多いと聞いておるが」

「フクロウと猫ですか?」

「うむ。町の者が、ネズミなどの害獣がいじゅうを避けるために飼っておるそうじゃ」

「じゃあ、フクロウが皇女の部屋に近づいて、手紙を届けたら……」

「確かにそれなら目立たぬじゃろうが、無理じゃよ」


 ルキエは肩をすくめた。


「鳥にそんな複雑なことはできぬよ。兵士の目をかいくぐり、皇女がいるのを見計らって接触せねばならぬのじゃからな」

「羽妖精さんが、フクロウや猫に変身したらどうですか?」


 俺は言った。

 ルキエはきょとん、としてる。

 メイベルは……なにかに気づいたように口を押さえてる。

 俺の言いたいことに、気づいたみたいだ。


「トールさま。もしかして『抱きまくら』のようなアイテムを作られるおつもりですか?」


 じーっとこっちを見ながら、メイベルは言った。


「前に作られた『抱きまくら』は、魔力でまくらを変身させるものでした。その技術を応用して、別の姿に変身するためのマジックアイテムを作るおつもりなのでは?」

「うん。メイベルの言う通りだよ」


 俺は『通販カタログ』を開いた。

 使えそうなアイテムは、すでに見つけてある。

『抱きまくら』に近いページにあったからね。すぐに見つかったんだ。



──────────────────



『なりきりパジャマセット』



 ご家族が、かわいい姿に大変身!

 ワンちゃん、ネコさん、トリさん。

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 なかなか眠ってくれない子どもたちも、このパジャマがあれば、進んでベッドに入ってくれます。


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 野生に戻って、スキンシップを深めましょう。


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──────────────────




「どこからどう見ても変身アイテムじゃな」

「私もそう思います。陛下へいか


『通販カタログ』の内容を読み上げると、ルキエとメイベルがうなずいた。


「このアイテムなら、フクロウや猫に化けることができそうじゃな」

「フクロウの姿になれば目立ちません。羽妖精さんたちに、皇女さんへ書状を届けてもらうこともできると思います」

「実際に偵察ていさつに使うかは安全性を確認してからじゃが……便利なのは間違いなさそうじゃ」

「正体を隠して、村まで荷馬車を運ぶこともできますからね」


 ふたりとも、目を輝かせて『通販カタログ』を見ている。

 羽妖精ピクシーたちも同じだ。

 素材に魔織布ましょくふを使えば、羽妖精たちは『なりきりパジャマ』を着たまま飛べる。

 よくいる動物の姿に化ければ、魔王領からの使いだとはばれないはずだ。

 問題は──


「──俺にこのアイテムが作れるかどうか、なんですけど」


 俺は言った。

 声に、力が入ってないのが、自分でもわかった。


「どうしたトールよ。うかぬ顔をして。普段ならもうアイテムを作り始めておるところじゃろう?」


 ルキエが俺の顔をのぞき込む。


「俺がこのアイテムを作るには……なにかが足りないような気がするんです」


 俺は言った。


「ルキエさま。それにメイベルも、以前に俺が作った『抱きまくら』のことを覚えてますか?」

「覚えておる。メイベルと……トールの姿になったのじゃよな」

「俺になったのは見てないですけど、実験中は、確かにメイベルそっくりになりました。見た目は、ですけどね」


 俺とルキエはメイベルの方を見た。

 当のメイベルは、その時のことを思い出したのか──真っ赤になってる。


「でも、あの『抱きまくら』は、メイベル本人の魅力みりょくを、ぜんぜん表現できてなかったんです」


 たぶん、表現できたのは、メイベルの魅力の1割くらいだ。

 あの『抱きまくら』からは、メイベルの魅力や、活き活きとした生命力を、まるで感じなかったんだ。

 確かに呼吸はしていたし、体温もあったけど、それだけだ。


 ──と、いうことを、俺はみんなに説明した。


「羽妖精さんたちの安全を考えたら、この『なりきりパジャマ』は、本物の鳥や猫そっくりに変身できるものじゃなきゃいけないんです。でも俺には──生命力とか、生々しさとか、そういうものを再現するだけの自信が、まだないんです」


 原因は、なんとなくわかる。

 たぶん──俺があまり、人と触れ合ったことがないからだ。


 実家にいたころの俺は、家族からほぼ放置されてた。

 両親や家族に、抱き上げられた記憶もない。


 職場では人と話すことはあったけど、ほとんどの時間は、アイテムの管理をしていた。


 人と触れ合ったり、近づいたりする時間が少なかった。

 だから俺は、生き物の生命力のようなものが、きちんと理解できていない。

 活き活きとした生命力をアイテムに付加することができないのは、それが原因だと思う。


「そこで、メイベルにお願いがあるんだ」

「はい。なんでしょうか、トールさま」

「少しの間でいいから、俺にメイベルを抱きしめさせてくれないかな」


 俺は言った。

 ティーカップを手にしたまま、メイベルが硬直こうちょくした。

 びっくりしたように目を見開く彼女に向かって、俺は続ける。


「もちろん、変なことはしないよ。ただ、俺にメイベルの体温や鼓動を感じさせて欲しいんだ。ほら、芸術家が名作に触れることで、感性を刺激したりするよね? それと同じだよ。俺がこれまで生きてきた中で一番、神の造形美ぞうけいびのすごさを感じたのはメイベルやルキエさまだから、そのきれいな生命力を感じ取ることで、俺の錬金術スキルはさらに覚醒かくせいするんじゃないかと──」

「お、お待ち下さいトールさま。ちょっと……覚悟を決める時間を下さい……」


 そう言ってメイベルは、胸を押さえて、深呼吸。

 それから、真剣な顔で、俺を見て、


「……はい。覚悟ができました。どうぞ、お話をお続けください。トールさま」


 メイベルは、うなずいた。

 だから俺は彼女に──ルキエや羽妖精たちもわかるように、メイベルを抱きしめたい理由について、じっくりと説明することにしたのだった。


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