第17話 新時代へ
「敵対はしないって事もちゃんと発表しなくちゃね。戦争なんて絶対に嫌だよー?」
実姫の都市は技術が最も進んでいる。
彼女からテレビなど、各大陸を繋ぐ通信機器を提供してもらえば、四人の神が集まる場を、同時に多くの人たちへ知らせる事ができる。
提供してもらうばかりでは対等ではないので、実姫の都市に極端に少ない自然を、他の三人が継続的に提供する、という取引がこの場でほぼ決定した。
それぞれの大陸にも特色があるので、当然、手に入るものが違う。
問題は物資の移動に時間がかかる、だが――、
「海の上に土台と線路を敷いて列車を作っちゃおうよ」
結花千の提案に三人は頷いた。
「全員のコストを集めれば、難しくもないな。そうだな、そうすれば大陸の移動も簡単にできるようになる。そうなると、細かい法律も互いに確認し合わなくちゃならないな」
「じゃあ、それは和歌先輩に任せたっ!」
「お前な……、面倒そうだからって投げるなよ」
「あ、あの、わたしも、手伝います……」
と手を挙げたのは実姫だ。
和歌が思わず彼女の頭を撫でた。
役立たずの後輩の中で、一人だけ輝いて見えた。
「神は対等だ、誰が上か下かなんてない。分かったな?」
「じゃあ、先輩後輩関係ないって事だよね?」
「ここではな。向こうではちゃんと先輩として接してくれれば別にいいよ」
そうは言っても、先輩呼びで定着したので、今更名前では呼ばないだろう。
恐らく、現実世界でもこの場のノリとあまり変わらないと思う。
そして、彼女たちは十字に向かい合い、腕を伸ばして手の平を重ね合う。
「ニャオ、早く早くっ」
「え、でも、これは神様の輪なので……」
遠慮するニャオを結花千が引っ張って、無理やりに手を重ねさせる。
神ほどの便利な力を持っているわけではない。
だが、ニャオにだって協力してもらいたい事は山ほどあり、重要な人物になる事は確実だ。
その苦労を考えれば、この輪からはずす事はできないだろう。
それに誰も、除け者にしようとは思っていない。
「ここは私たちのもう一つの世界だ。癒しの世界だ。絶対に、壊させやしない。そのためには快適な生活環境作りが必要になってくる。みんなの協力が不可欠だ、いいな?」
うん、はいっ、と、四人と一人の意思が重なった。
その後――、大陸間の海には、土台が作られ、そこに線路が敷かれる。
四つの大陸と四つの駅からなる列車が作られた。
場合によっては一つの大陸の中に複数の駅が作られるだろうが、今はその数も多くはなかった。
四人の神が集合し、出会って、あれから三日が経つ。
四つの大陸の友好条約を結び、全世界に放送した。
線路を敷いて、列車を運行。それぞれの現地人に急な変化を受け入れさせ、大陸を行き来する人々が増えていくまで、なんだかんだと三日が経っていたのだ。
そして同時に、そろそろ神たちがこの世界から姿を消す時期でもある。
「神様……、すぐに、戻ってきてくださいね」
「うん。十七日後、くらいになるのかな? それまでみんなの事を頼んだよ、ニャオ」
はいっ、という元気な一言を聞いて、結花千はこの世界――『ランド』から去る。
次に来た時、見違えるほどに大陸が発展していると期待しながら。
四つの大陸、四つの思想。
違った思考が重なり合えば、新たに生まれる意見もある。
およそ十七日間の、神の不在。
その期間は、じゅうぶん過ぎるほどに、事態を大きくする。
結花千にとって、最初で最大の、大事件が十七時間後に待っていた。
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