第13話 セルフレジから直線のおはなし
未咲「聞いて聞いて! この前、馴染みのお店に行ったらね、なんとセルフレジがおいてあったの!」
玲春「ふーん」
未咲「えっなにその反応……もしかしてわたし、ちょっと遅れてるとか……?!」
玲香「そんなこともないけど……」
春泉「いま言うんだ、って……」
未咲「ほらやっぱり! そういうことだよね? ね?!
……えっと、話もどすね? バーコードを読み取らないといけないんだけど、
最初やり方がわからなくて、店員さんに聞いてようやくできたんだ〜」
二人「ふーん」
未咲「なんかやっぱり、ふたりとも興味なさそうだね……」
わたしたちの話をなんとなく聞いていたらしいロコちゃんが、とても普通じゃない反応をした。
ロコ「……っ!」
目を見開いて、頭を押さえている。何か嫌なことでも思い出したのかな……?
未咲「ロコちゃん、どうしたの?」
ロコ「あっ、えっと……ちょっと、気分が悪くなったのかも……」
そう言うけれど、保健室に向かう気配はない。
未咲「ほんとに大丈夫? 行かなくていいの?」
ロコ「うん、それほどではないから……」
でも見た感じだと、少し気分が悪そうに見える。
心配していると、ふいにロコちゃんが話しはじめる。
ロコ「バーコードのことで思い出したんだけどね……わたし、昔ちょっとしたことでいじめられてて……」
話の内容は、いじめのことだった。
こちらから何か話せそうな雰囲気でもなかったので、じっと耐えてロコちゃんの話を聞いてあげることにした。
ロコ「いじわるな男子たちにこう言われたの。『お前の名前ってさ、直線ばっかできもちわりぃよな』って」
その男の子の感性はよくわからないけど、これは傍から見ればいじめにも見えてしまいそう。
ロコ「当時それがほんとうに意味不明で、一晩じゅう泣いてたこともあったんだ……そしたらお母さんがある日、『そんなに泣いちゃだめ。ほら、お母さんが昔遊んでたうさぎのぬいぐるみあげるから』って。そのぬいぐるみの名前が『ロコ』だったの。それがわたしの名前の由来かなって思ってたけど、最近訊いてみたら、ちょっと違ったみたい。わたしの名前は locomotive 、つまり機関車からとったみたいで、お父さんが昔そういう仕事にあこがれてて、娘ができたら絶対これにちなんだ名前をつけたかったって」
ロコちゃんが自分の名前の由来をていねいに話してくれた。
ロコ「お父さんとお母さんはそういう縁で結ばれたのかなって、ちょっと想像したりもして」
そのことについては詳しく話してくれなかったのか、はっきりとは言えないロコちゃん。
春泉「そうだったんだ、初耳!」
未咲「いじめってほんとよくわかんないよね……わたしもされたことあるからわかるけど……」
玲香「えっ、あんたいじめられてたの?」
未咲「おもに玲香ちゃんに」
玲香「何それ、聞いて損したわ……」
わかりやすくため息をつく玲香ちゃん。ほんとは末永くいじめられたいって思ってる。
そう、玲香ちゃんにだったら。
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