ヘタレ旦那の恋人
ジュン
第1話
夫人は思った。旦那はヘタレ過ぎやしないか。こんな小心者の男と結婚して正解だったのか。ただ、気が楽なのは、ヘタレ旦那は浮気しないだろうということだった。しかし、旦那は、最近仕事から帰ってくるのが遅い。
わたしは訊いた。
「最近、帰宅が遅いけど仕事が忙しいの?」
「うん。新しいプロジェクトをまかされてね」
「どんなプロジェクトなんです?」
「夫に不満がたまる主婦を癒す事業を考えてほしいという仕事なんだ」
「それで、なにか提案したんですか?」
「うん。いわゆる『ヘタレ旦那』に浮気させてしまう。それで、妻が慰謝料をふんだくって別れちゃう。そうもっていくのが一番いいだろうと言ったんだよ」
わたしは言った。
「あら、だったらわたしもそうしようかしら」
旦那は言う。
「僕がヘタレ旦那であることは、わかってる。忙しくて、君が風邪を引いても、できることは粥を炊くことくらいだから……」
そう言われれば、旦那はわたしが風邪で寝込んでると、粥を食べさせてくれる。
「あなたはヘタレ旦那じゃないわよ。だって、わたしヘタレとは結婚しないもの」
「君は僕の妻で嫌じゃないのかい?」
「粥を炊くあなたに惚れたわたしがいたの。妻というより、結婚した今も、自分を恋人だと思ってしまうわ」
旦那は顔を赤くする。
「あら、あなた顔が赤いわよ。熱でもあるのかしら。お粥でも作りましょうか」
妻は笑顔でそう言った。
終わり
ヘタレ旦那の恋人 ジュン @mizukubo
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