第2話 すれ違いとパフェ
ちょうど一学期の期末試験中と言うこともあり、さらなる追求は行われなかった。またあとでからかわれるのは必至だとは思うんだけど。
うちも隣も同じくテスト期間だし、一日二教科の試験方法も同じなので、放課後は香織と待ち合わせして一緒に帰る。これで交際していないなんて、あの三人じゃなくてもおかしいと感じるかも知れないけど、実際に付き合ってはいない。
なんとなく香織も俺のこと好きなのでは、と感じることもあるのだけど元々彼女はパーソナルスペースが狭いような気がするし、スキンシップも頻繁なのだ。だからもし、これが俺の勘違いであの夢のようになったらと思うと怖くてあと一歩が踏み出せない。
「なんか今朝のこと見られちゃったね」
ごめんね、迷惑かけて。と謝られたけど俺は全然迷惑だと思ってなかったのにな。
「ほんと朝からうるさい奴らがいてさ。テスト期間だから長話しなかったけど、めんどくさいことになったね」
「……あ、めんどくさいんだ」
「ん? なんか言った?」
香織の声が小さくて聞き取れなかった。
「うんん。なんにも言ってないよ。それよりまさかあの娘が悠くんの友達の彼女だなんてびっくりしたよ」
「だよなー」
なんて話しながら、いつも別れる交差点まで来た。
「じゃ、また明日な」
「バイバイ」
途中から香織がなんだかいつもより気のせいか元気がないような気がしたけど試験中だし勉強疲れかなと思っただけだった。
翌朝香織から『今日は先に登校するね』と連絡が入った。下校時も別々になったけど、そういうの今までなかったわけでもないし特に気にしていなかった。しかしこの後これが試験期間が終わる金曜日までずっと続いた。五月に香織と再会した後からはなんだかんだ、ほぼ毎日顔を会わすかさもなくば連絡をとりあっていたというのにあの朝から全く顔を会わさず連絡してもそっけない返事だけ。
何か気に入らないことやってしまったのかとアレコレ考えるも何も浮かんでこなかった。
もう考えたって分からない。どうしよう。
なんとか最後の教科までテストをしっかり受けて、いつもの三人に相談してみた。
榊と与一は「俺ら彼女いたことないし、そんなのわかんないよ」とそっけなかったけど、郁登は
「
そういえばあの日の帰り道でそのこと話したな。
ただの友達と恋人扱いされて嫌だったのだろうか。なんか申し訳ない、確かそんな話でコイツら三人に絡まれてめんどくさいなんてこと言ったような気もするし……
「悠。お前が考えてること何となく分かるけど、間違ってると思うよ?」
「おれも」
「オレでもそうおもう」
郁登、与一、榊の三人はそう言うとジト目を向けてきたが、そんなことより今の俺は香織とどうやって仲直りすればいいのかしか頭になかった。
LINEのチャットじゃだめだと思ったのでコールしてみた。呼び出し音が数秒続いた後、繋がった。
「もしもし、香織? 悠だけど。」
『うん』
「久しぶり、ってか三日ぶり。いやいや今日入れたら四日ぶりかな? はは、今平気」
『ふふ。大丈夫だよ、どうしたの?』
「テスト終わったでしょ。お昼ごはんでも一緒にどうかなって思って」
『……いいよ。じゃ、いつものところで待ってる』
ちょと変な間はあったけど大丈夫みたい。急いで校舎を出て、いつも下校するときの待ち合わせ場所に向かった。
待ち合わせの場所に行くと香織はちょこんと立って待っていた。ほんと【ちょこん】って音がする感じで可愛らしく笑ってしまった。声を掛ける前に香織に気づかれて、
「何笑ってるのよ」
と膨れられてしまったので、思ったことそのまま
「いや、香織の佇まいがすごく可愛かったから」
と伝えたら、俯いてしまった。またやってしまったか、と思ったけど香織の耳が赤くなってるし照れてるだけだと分かった。
「もう、ずるいんだから…………」
顔を上げた香織の表情はいつもの通り、にこやかで明るくなっていた。
顔を上げる前になにかつぶやいていたけど、俯いていたし声も小さかったから聞き取れなかった。
でもいいや。なんだかわからなかったけどわだかまりみたいの消えたみたいだし、こうやって香織と顔を合わせることも話すこともできた。
「なに?」
「なんでもなーい。ねぇ、それよりお昼何食べるの? ファミレス? たまにはラーメンもいいかな? でも制服にラーメンの汁跳ねるかもかもしれないし。あ、
叶堂はちょっと歩いた先にある個人経営の喫茶店である。なぜかパフェの種類が十ほどあるのだ。
「え~なんでパフェなんだよ、それ飯じゃないだろ?」
昼食がパフェとか何処のJKだよ。JKだったわ。
「いいじゃんいいじゃん。もうお口がパフェなんだから、決まり。悠はカレーかサンドイッチにすればいいじゃん」
まじか。俺んちの昨日の夕飯カレーだったんだよな。もちろん今朝の朝食もカレー。昼もカレーかぁ。サンドイッチじゃ物足りないし、ああ、仕方ないカレー三昧としますか。とほほ……
香織に手を引かれ、叶堂に向かうことになった。
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