第4話 おっきい
「キルカ。ハチマキをパワーアップさせておいたぞ」
私が家で勉強を終わらせ居間に向かうとお兄ちゃんは言った。
「へー」
どうせ、ろくでも無い機能を着けたんだろうと思いながら私は冷蔵庫から適当に飲み物を取り出しながら聞いていた。
「デフォルトでこの前、履いていたニーソも着装できるようにしておいた」
さいですか。
「ねぇお兄ちゃん。ソレどうやって作ったか覚えてないって行ってなかったっけ?なんで改造できるの?」
私はコップにお茶を注ぎながら聞いた。
「んー、恥ずかしながら お兄ちゃんってホラ。エクスタシーすると一時的に頭が良くなるなじゃん。でもエクスタシーモード中は記憶が飛ぶだろ?つまり。そいうこと」
「いや、頭良くなってるならブルマ以外にしてよ」
「スク水とか?」
「
「何を言う!
そう言いながらお兄ちゃんは以前の戦いでパッツンパッツンの姿で戦ったあの日の写真が載った新聞紙を取り出し私に見せつけると私は羞恥に声を上げながら新聞を破り捨てた。
「妹で欲情すんなっ!!!!!!」
「仕方がねぇだろ!!〝オス〟なんだからよぉお!!!」
「サルでももう少し分別あるよ!!」
「分別ついてるから手ぇ出してないだろぉ!!」
「そうだけどキモいよ!!!」
私の最後の言葉にお兄ちゃんは急にスンッとした表情になる。
「そうだね……お兄ちゃんキモいよね……いくら大好きなブルマとは言え妹に発情とかマジでドン引きだわ」
「急に賢者モードになるな」
「だってお兄ちゃんなんて湧き上がるイライラとムラムラの衝動を抱えた変態クソゴミ虫野郎ですし…」
お兄ちゃんは普段やべー奴だが根本的には私と同じ陰キャであるのでこうして何かキッカケがあると自虐モードになってしまうことがある。
本当に面倒な兄である。
「じゃあコレからはもっとストイックになろ、そうすれば変態クソゴミ虫を卒業できるよ」
「ストイック……ねぇ…
いったいソレに何の意味があるんでしょう…我慢して硬派ぶっても恋も愛も始まらない。それどころかいくら紳士ぶっても中身は変態って思われて、そうしていくうちに性癖はねじくれて、この様よ、ハハハハッ……」
「目が笑ってない……」
お兄ちゃんは陰キャオーラを全快にし体育座りしながら虚空を見つめていた。
「キルカには悪いことしたと思ってるよ…昔お兄ちゃんが衝動に負けて女子更衣室に忍び込んじゃったりしたせいで変態の妹ってレッテル貼られてイジメられるようになっちゃったし」
あー、そのこと気にしてたんだ。
兄は最初からこんな性格であったワケではない。こうなる前は割りと普通…というか地味な方だった。
そんな兄が何をトチ狂ったのか女子更衣室に忍び込み下着ドロボウをしようとしたことがある。
もちろん直ぐにバレ。その後、大騒ぎとなり噂は私の学校まで届いた。
それ以来から私はクラスの子から、からかわれるようになった。
同時に兄がオープンスケベに転身したのもその頃であった。
抑圧してた反動なんだろうなぁ…
「お兄ちゃん……確かにお兄ちゃんはハイパー変態クソゴミドスケベ野郎だけど」
「さっきより酷くなってね?」
「たぶん、お兄ちゃんが問題を起こしてなくても私、弄られてと思うよ……性格こんなんなのにおっきいし…それにレッドブルマーの時に少しお説教したお陰か最近はチョッカイ減ったし…怪人による迷惑行為は養護できないけど…
そこまで…嫌い……じゃ…ない……かな……うん…」
自分で言ってて恥ずかしいけど、言わないとずっとこのままだろうから仕方がない。
すると、お兄ちゃんは涙を流して私に抱きつこうとした。
「キルカーーーーっ!!!」
「ごめん。抱きつこうとしないで」
「ヒドッ!!」
※
昨日。私は学校でチョッカイを掛けられることが減ったと言った。
だけど別の問題もあった。
「大気圏の果てまで吹っ飛んでろ!」
体育の授業中のことであったサッカーをしていた男子が叫びながらボールを蹴り上げていた。
お気づきの通り。以前ココで下着に食いつくヘビを蹴り飛ばした時の私のセリフだ…
〈めっちゃ恥ずかしい…〉
なんで私、あんなセリフ言いながら蹴り飛ばしてたんだろ。普通に無言で良かったじゃん…
「大気圏の果てまで吹っ飛んでろ!」
しかも地味に流行ってるし……
そして蹴り損なってるし…
そんな姿に男子たちは笑いながらサッカーをしていた。
〈早くブームが去ってくれないかなぁ…〉
そんな風に思っていたら短パンのポケットから震えを感じ先生にトイレに行ってきて良いか聞き、その場を離れた。
トイレの入るとドアを閉めポケットから振動していたハチマキを取り出す。
振動しているのは昨日の改造で通話機能が追加されたためである。
もうコレ明らかにハチマキじゃねぇだろと思ったが私は突っ込まなかった。
私はそのハチマキを巻かずに頭に当て通話を開始した。
見た目はなんか頭に指を当ててテレパシーで会話してるような感じだ。
「もしもし」
『キルカ。大変だ怪人が現れたぞ』
「えー今、授業中なんだけど」
『大丈夫だチョット行ってチャチャっと片付けるだけだ。先生にはトイレに行くとか言っとけばバレやしないって』
「そもそも、お兄ちゃんが解決すれば良いだけの話でしょ」
『え?キルカはお兄ちゃんがブルマ穿いて戦って欲しいのか?』
「ごめんチョット待って、おかしい。なんでそうなるの?」
『いやーだってお兄ちゃんアレ エクスタシー中にしかアレ作れないから性癖がモロに反映されるから男用の装備は作れないんだよね。まぁキルカがそれでも良いって言うな「ごめん私が出撃するわ」
結局こうなるのである。
私は覚悟を決め変身し戦いに
誰にもバレないようにトイレの窓から抜け出しながら。
〈格好つかないなぁ…〉
※
被害の現場は服屋の広い駐車場だった。
そこにはブラジャーを顔と胸に着けたデッサン人形のような姿をした怪人がいた。
怪人の放つビームが女性に当たると乳房が膨らみバチンッ!と音を立てて服のボタンを弾き飛ばした。
いきなりの事に女性は声を上げ胸を押さえる。
が……
膨らんだ胸を見ると何故か満更でもなさそうな顔しながら軽く触っていた。
それを建物の上から見ていたキルカは思った。
あれ?……今回、助けなくても良くね。っと。
巨乳化した人達の中には自撮りしてる者までいる有り様だった。
しかし
「あ!?アレはブルマー戦士!!」
「良かった助けてブルマー戦士!胸を大きくされて、ただでさえ太って見える体が余計に太ったように見えて困ってるの!」
「私なんてハゲ散らかした60過ぎだオッサンだというのにこんなモノを着けられてしまった!こんな姿じゃ残りの人生恥じだらけじゃ……」
普通に困ってる人達の悲痛な声が届いてきた。
やはり大きければ良いという問題ではなかった。
だが、この声に対し反対派も居た。
「チョット余計なこと言わないでよ!」
「ブルマー戦士さんアレは倒さなくて良いですから」
「オッサンは黙ってろ!」
「むしろ、おっぱいもおチン◯ンもあって二倍お得だろうが!」
〈うあわ……想像以上にヤベェやコレは…〉
場のカオスっぷりにキルカは思った。
しかし、男性にまで被害が出てることを考えればやはり倒すべきなだろう。そう思い立ち向かおうとすると巨乳化した女性達に取り押さえられてしまった。
「ごめんなさい。貴女が正義の味方でも私たちにはコレが必要なの」
「貧乳の希望は殺させはしない!」
「これで彼氏ができるこれで彼氏ができるこれで彼氏が……」
「なんか一人ヤンデレっぽいのが居るんですけど!!」
そんなことを言っていたら怪人がキルカ一人を狙ってビームを撃ってきた。
避けることも出来ずに直撃すると胸元が膨らんでいく感覚が襲ってきた。
乳房の肥大化はスポーツブラに遮られ凄まじい痛みとして伝わってきた。
「@¥&#%~$}~ッ?!」
痛みを感じキルカは女性達の拘束を振りほどき急いで逃げ出した。
「ああ!行かないでくれブルマー戦士!」
一部の人は悲しみ。また一部の人は喜びながらブルマー戦士の背中を見送った。
※
キルカは急いで公衆トイレに入り体操服を脱ぎブラジャーを外すとロケット型に巨大化した胸が現れた。
「い……痛かった…」
ため息を吐きながら落ち着くと自分の胸に目をやった。
〈うぅ……今どれくら大きくなったんだろう…やだなぁ大きすぎると気持ち悪いよぉ…〉
しかし嘆いていても仕方がない素早く片付けなければと思い体操着を着ると大きく成りすぎた胸のせいでお腹は丸見えとなり胸はテントを張ったように布を引っ張った。
前回もかなりの羞恥プレイであったが今回はノーブラで胸を強調しながら おへそを見せるという前にも劣らない羞恥プレイであった。
「ふふ、始めてですよココまでコケにしてくれたおバカさん達は…」
キルカの目元には暗い影が落ちメラメラと燃える怒りに包まれていた。
※
「クソ~変なのが居すわっちゃたな~」
服屋の駐車場に座り込む怪人を見て男は言った。
「でも店長。胸が大きくなって服を新しく買ってくお客さんもいますよ」
「迷惑なのか迷惑じゃないのか良く解らん奴だな。しかしヒンヌー教徒してはやはり許せん!」
「えww店長貧乳派なんですかwwありえねーwwwwあんなん男のおっぱいと変わらないじゃないですかww」
「お前。今日からクビな」
「えーーーーー!!」
そんなやり取りをしていると突然。怪人の真上から隕石でも落ちてきたような衝撃が走った。
「「「あー!あー!」」」
砕かれたアスファルトの破片と剥き出しになった地面から舞い上がった土煙が晴れると巨乳化した人々が元の大きさに戻っていき絶望の声を上げた。
「どうして……どうして私たちから希望を奪うの?!」
彼女は怪人の真上に毅然と立っていたブルマー戦士に言った。すると…
「ねぇ……本当に巨乳って良いことなのかな?」
ブルマー戦士は顔は笑っていながら声色はどことなく怖かった。
「大きいと不便なこともあるよ。服のサイズに困ったり太って見えちゃったり。下着にお金が掛かったり
何より……」
垂 れ る よ !!
そう大きいことは良いことばかりではない時には人に からかわれたり、好きでもない男性に見られたりとそれなりのデメリットも存在する。
「でも!!…それでも私たちには欲しいおっぱいがあるのっ!!」
一人の女性が悲痛な願いを口にするとキルカは言った。
「大丈夫。あなた達はそのままでも綺麗だよ」
自分に自信がないキルカからすれば本当にみんな美人に見えていた。
お世辞でも上から目線でもなく心からの本心であった。
しかし
「そう……貴方には解らないわよね。最初から持つ者の貴方には……」
キルカの言葉は彼女たちには届かなかった。
そんな時。一人の男が声を掛けた。
「そんな事はない!!男がみんな おっぱい大好きなワケじゃない!
大事なのは大きさじゃない形だよ……」
その言葉に誰しもが思った。
誰だろうこのオッサン と。
「店長。ドン引きされてますよ」
「やっぱお前クビな」
「えー!!」
そこでキルカは気づいた。
駐車場のアスファルトを滅茶苦茶にしてしまったことを
〈どっ、どっ、どっどうしよう。修理代払えない!!!〉
「あ、あの店長さんゴメンなさい!!駐車場を壊してしまい!私、未成年ですけど大きくなったら必ず弁償しますので」
「いや、いいってことよブルマー戦士さん。それよりも
店長はとても爽やかな笑みを見せ全てを許してくれた。
そして
「なんだか、もう大きいとか小さいとかなんか、どうでも良くなってきたね…」
「正直、なにが良いのか悪いのか良く解らなくなってきた……」
女性たちが夢から覚めたように去っていった。
〈とりあえず。一件落着…かな?〉
※
キルカが学校に戻ると何事も無かったように授業が進んでいった。
〈良かった抜け出したことがバレてなくて〉
そう安堵し1日の授業を終えていった。
そうして下校時刻になりキルカが一人で帰ろうとした時。人気のない帰り道で声を掛けられた。
「
そう言われてキルカは後ろ振り向くとソコには黒くて美しい同級生
そして彼女はキルカに詰め寄って言った。
「貴女。ブルマー戦士でしょ」
その日。更なる騒ぎの予感がした……
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