　〈極め付きと極め付け〉

　先日、テレビを見ていたら、デカ盛りの作成方法を紹介する中でこんなナレーションがありました。

・極め付きに大量のポテトをトッピングして……

　そこでふと疑問に思ったのです。極め付きって、極め付けじゃなかったっけなあと。そこで便利なインターネットで調べると、何と本来の形は「極め付き」であるということでした。しかしそれだけでは浅い情報。この言葉の語源は、刀剣などの鑑定の際、それが確かなものであるとした「極め札」を付けたことからきているとされています（（１））。

　ですから極め札が付いているというところから考えれば、確かに「極め札付きの○○」と、連体形の「き」のかたちが正しいということは容易に導けます。

　〈新しい用法〉

　しかし、やはり時代が変わると共に言葉も変わっていくというのは自然の摂理のようなもので、当然「極め付き」の意味も変わってきます。語源からすれば「極め付きの悪党」とか、「極め付きの名刀」などという使い方しかなさそうに思えますが、それでは今一度ナレーションの例をご覧ください。ええ、この使い方には全く当てはまりませんね。そこで毎度おなじみのツイッターをコーパスのように使って用法を調べてみましょう。すると

①失敗して3回ぐらい刺されたり、極め付け採血する人が初心者で手が震えてた

②極め付けに電車止まった

③今朝はクリームクロワッサン、レーズンロール、プチトマト、極め付けにバナナマンゴーヨーグルトです

④保持している数々のルースと比べて違う点を挙げて勉強しています。そもそもこれが偽物かはわかりません。でも極め付けは軽い…

⑤「星間飛行」は極め付きのアイドルソングだよ

　など、もはや実際にはこの新しい用法で使われていることが大半であることがわかります。ちなみにこの中で従来のよう法で使われているのは⑤だけでした。探せばいくらでもありますが、比率としてはとても低いのです。

　なお、新用法の「極め付け」の意味は「最もすごい○○は・最大の○○は」といった、その後に続く言葉が最大の特徴とか見せ場であることを表す言葉であると解釈しています。つまりハイライトですね。ここが一番言いたいことなんです！　と表す。ですから今回は省略したものが多いのですが、大体「極め付き」、あるいは「極め付け」の前にはいくつかこんなことがあって、あんなことがあってと事実が羅列されており、そして「極め付き」を挟んで最も言いたいことを持ってくる。これが新しい用法です。

　ちなみに「極め付け」と「極め付き」の違いについては、ざっと見た所では前者の方が多く、また後者にはより従来の用法が見られるという違いがありました。ということは、じわじわと「極め付け」が広がっているということですね。実際私も層でしたから。あと細かい話をすれば、これらの後ろに付く助詞は「は、の、に、として、φ」でした。φというのは語学において「無い」を意味しており、つまりは助詞が無い例であるということです。①の具体例などはまさにそうですね。

参考―――

（１）https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/kotoba/gimon/106.html