第3話 もったいない
「一位?」
僕が驚いて聞く。
ある程度強いのかもしれないとは思っていたけど、一位とは。
賞金額もすごく上がっているので、小学生の大会とはいえ容易な難易度ではないはずだ。
「まぁ、去年はね?すごく強い先輩もいたしね」
彼女は照れながら言う。
強い先輩がいたらしい。とはいえ一人の実力で圧勝できるほどあまくはないだろう。
他の競技でもさすがに一人のスーパースターがいるから圧勝できるというスポーツは少ない。
「すごいね」
僕は、驚きを伝える。
日本で一番を取るのはどの競技でも簡単なことではないだろう。
小学生ながらに本気でやって、その成績をおさめている。
「すごくないわよ、小学校で一位だけじゃダメなのよ」
彼女はテンションを上げて言う。
小学校で一位なだけではダメらしい。
小学校で一位以上のことを彼女たちは目指しているらしい。
「え?そうなの?」
僕は聞き返す。
小学校で一位は相当すごいからだ。
その先となると一体なんだろう・・・
「そうよ、将棋だって、中学生がプロを倒したりしてるでしょ、世界一位にならなきゃだめよ」
彼女はさらに説明を続ける。
そう、いま知的競技であれば、小学生でも大人と対等に戦う。
eスポーツであれば男女の差が出にくいのと同様に、大人と子供の体格差もそんなにでないはずだ。
「え、すごいね」
僕は素直に言った。
彼女の向上心がすごい。
ここまで素直な向上心を持っている人はなかなかいない。
「まぁね、年齢も性別も関係ないのがeスポーツの世界よ!」
彼女は言った。
そこに誇りを持って真剣に打ち込んでいることがわかる。
人生を賭けるほどのおもしろいステージなのだ。
「今年はどうなの?」
僕は聞いた。
そう、強い先輩がいなくなった後のことが知りたい。
今年度は始まったばかりなのでまだ、大会はないのかもしれないけど。
「今年は出れてないわ」
彼女は残念そうに言う。
出れてない?
これだけの実力があるのに?
「さっき言った通り、強い先輩が卒業しちゃって、人数がたりなく出れなくて」
彼女は説明を続ける。
人数が減ってしまって、出れないため成績が出ていないらしい。
確かに学校の部活でやる以上そう言うこともあるのかもしれない。
「え、それはもったいね」
僕は素直に口にする。
それだけの実力があれば、参加するだけで好成績をおさめられるだろうに、人数が足りなくてでれないというのはもったいない。
「そう!もったないの!」
彼女は目を輝かせて、こちらを見ている。
何か余計なことを言ってしまったのだろうか。
彼女のテンションが最大限まであがる。
「え?」
その表情に驚いてしまって、感嘆の声が出てしまう。
「あなた、eスポーツクラブにはいらない?」
思いもしなかったことを彼女は口にした。
彼女は僕を勧誘した。
日本一のeスポーツクラブに。
そう、僕の新しい世界がはじまろうとしていた。
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