第17話 スパイがきた!

 はぁ~。やっぱりどこの世界にもスパイがいるんだな。怖い話。


 しつこいようだけど田舎にいるような感じだからまた休憩時間中のお話だ。


 はは。聖女の国は出来たばかりだからまだなにもない。


 祈りを捧げる祭壇と休憩が出来るところと寝るところくらいだ、あるなら。


 私はシルヴァとアスハさんとで今は休憩が出来る憩いの場にいる。


 と言っても――


「なにもない。信仰しんこう新興しんこう振興しんこうが足りないのよ! 絶対に!」


 どんだけしんこうって言うのよ、私が。はぁ~。思わず立ち上がっちゃった。


「また始まったよ。こうなったらお布施ふせでも貰いに行く?」


 んな!? そんな人気がなさそうなことをするだなんて! 無理! シルヴァ。


「シルヴァ。お布施だと何年も掛かると思うぞ、私は」


 そうだよね。アスハさんは単純じゃないな。にしても――


「うん? だれだ?」


 へ? アスハさんがそう言った後に立ち上がった?


「そこにいるのは判っている。出てこい」


 アスハさんが憩いの場付近の木々の生えた茂みを見つめている。すると――


「おや? 魔力感知されないように着込んできたのに残念だ、実に」


 え? 嘘でしょ? なによ、これ? 見たことのない服装をしている。


「お前の目的はなんだ?」


 アスハさんの目付きが鋭くなっていく。訊くまでもなく解る。こいつは――


「決まっているじゃないですか。そこの子供に用がありましたね、実に」


 敵だ。間違いなく。送られてきた刺客しかく。わ、私だとクレーターがぁ!


「お前なんかに手出しはさせんぞ!」


 アスハさん。でもね。剣もなしにどうやって闘うの? 理解が出来ない。


「おや? 見たところ剣をもっておられないようですが? 実に」


 実にが鬱陶うっとうしい。口癖なのかを訊き出したい、実に。


「舐めるな! 私は魔法騎士! 今は侍女! すなわち残りは――」


 魔法少女アスハ! って冗談を言っている場合じゃない。あ――


「鬱陶しい、実に。さぁ。この攻撃から避け切れますか、貴女は」


 なんて数の両刃直剣なんだ。宙に浮いている。ざっと見ても十本以上はある。


「魔力剣か。く。貴様! ここをどこだと思っている! ここで剣を使うなぁ!」


 あ。アスハさんが両手の平に炎を宿しながら突っ込んだ。炎弾でも放つのかな。


「貴女の方こそ様ですね、実に。こんなところで火を扱うなんて無粋ぶすいですねぇ」


 敵がそう言うと宙に浮いている両刃直剣をアスハさんに向けて放ち始めた。あ。


「やめてぇ! 二人とも! 闘わないでぇ!」


 こうして見ると本当に自分自身に腹が立つ。どうしてこんなにも無様なんだ。


 こうやって身を乗り出しても敵に聴く耳がなければ意味がない。私は聖女失格。


 はは。責任を負いたいが為にここまできたけどもう我慢の限界だ。無理だ。私。


 家族を守る為に暴走しちゃうかも。あ! 駄目だ。それは逆に皆を――。ああ。


 私がもっと器用で私がもっと機転を利かせたら周りはどんなに幸せなんだろう。


 平和を訴え世界から戦争をなくすには私がもっと頑張らないといけない。はは。


 止めようのない闘い。止まらない闘い。ここで私になにが出来るのだろうか。

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