第15話 元騎士の用心棒アスハ

 なんか知れないけど元騎士の用心棒が私に付きました~。


 なんでも暗殺者から私を守るのが仕事だそうです。


 しかも! 気を遣ってくれたからこそ! 女性なのだ!


 元騎士から侍女に転身したそうです。いや~。剣は邪道だもんな。


 あーこれで一人で面倒を見る必要性がなくなったんだ~。嬉しいよ。


 ちなみに今日も特訓だけど華が出てきたね~、ここにも。


「どこを見ておる? てや!」


「うへ」


 油断していたら頭上に空手チョップを喰らいました。あは。


 痛いけど我慢だ。あ。アスハさんが笑った。ああ。独りじゃない。嬉しい。


 特訓が始まる前にアスハさんは自己紹介をしていた。だから知っている。


「だから集中せんか!」


「うほ」


 今度はすくい投げだ。足蹴りの後に体が浮くのが解る。あはは。容赦がないや。


 まだまだ師範には勝てないけど怖さがなくなってきたよ。今はよそ見も出来る。


 アスハさんはやはり笑い上戸じょうごらしい。なんだか笑われると嬉しい。


「はぁ~。駄目だな。仕方あるまい。今から休憩だ」


 どうやらバルガスさんは私に見限りを付けたようだ。あはは。ごめんなさい。


「そんなに気になるのなら会話でもしてこい」


 見限りを付けるくらいだからもう既にバレてるよね? んじゃここは――


「はい! 行ってきます!」


 威勢よく言った私はさっさとアスハさんも元に行った。気になる。


 それに会話したい。女同士だから募る話もあるだろうしな。楽しみだ。


 私は一方的な期待を寄せつつアスハさんの前まで行き立ち止まった。


「うん? 聖女様が私になんの用だ?」


 す、凄い。かっこいい。元騎士だけあって貫禄がある。この人が私の侍女。


「あ! いえ! 私は――」


「ミサトは独りが寂しいんだよ。だからね。家族が増えて嬉しいんだよ」


「家族?」


 っていつのまに? ってあー! アスハさんに聞こえてるー!


「あーいや! その! あの! えへへ。困ったな」


「家族か。いい響きだな。私もそれに成れるのか」


「成れるよ! ミサトは寛大だしなによりも命懸けでだれかを守れるのは――」


「あーもういいよ! シルヴァ! もうさ! 恥ずかしいからさ! ね?」


 あはは。なんか変なところで意気投合し始めた。でも悪い人じゃなさそうだ。


 きっと今のシルヴァは私がなにを言っているのかが理解出来ていない。


 それにまだ喋り足りなさそうな表情で黙り始めたから不服なんだろう。


 でもアスハさんともいずれは家族を超えた出来事があるといいな。


 こうして会話で休憩時間を終えた私はバルガスさんと特訓を再開するのだった。

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