第12話 深夜の暗殺者

「……ト! ……サト! 起きて!」


 なにかに追われるように気付いたら目覚めていた。


「う」


 うつ伏せで寝ていたのでなにが起きているのかが判らない。


 ゆっくりと体を起こす。


「ミサト! 侵入者だよ!」


「え!?」


 驚いた。慌てて振り返ると小型の剣を持った侵入者がいた。


「だ、だれ!?」


 気が動転しながら言っていた。物取りというよりこれって――


「フ。我は名乗るほどの者ではない。だがいわば暗殺者といったところか」


 嘘でしょ? ちょっと待ってよ! 今の私じゃクレーターが出来ちゃう。


「話し合いましょ!?」


「問答無用!」


 きゃあ!? こっちにくる!


「ぬぅ!?」


 え? あ。シルヴァ。


「僕の家族に手を出すな!」


 あ。走馬灯だ。シルヴァは身代わりに。ああ。有難う。シルヴァ。


「く。……いざ! 参る!」


 暗殺者は確実に困惑している。でもシルヴァだけで大丈夫かな。心配だ。


「頑張って! シルヴァ!」


 こんなことしか出来ないでごめんね。シルヴァ。


 シルヴァは背を向けていてなにをしているのかが判らない。


 でも暗殺者の動きは手に取るように解る。とはいえ浮いているシルヴァがいた。


 だから暗殺者の動きが大雑把おおざっぱにしか解らない。


「これでも……喰らえ!」


 うん? シルヴァがそう言うと急に暗殺者が顔を手で覆い尽くし始めた。


「ぐお!? 目が! 目がぁ!?」


 どうやらRPGで言う暗闇状態に暗殺者は陥ったようだ。


 フ。ちょうどいい。そのまま闇に落ちればいい。あ。もう落ちてるか。


「ぐぅ。……憶えておけ!」


 暗殺者はそう言うと玉を床に叩き付け煙を出現させた。


「ごほ。げほ。うう。目に染みるぅ」


 煙が消えた頃には暗殺者はいなかった。おのれ! ああ。よかった。


 この事件の黒幕は第三国ではないことが後になって分かった。


 ではどこかと言えばそこは海の先――もう一つの大陸の仕業だった。


 私は痛感した、第三国よりも厄介な存在がいることに。


 ああ。あと護身術を習わないとね。それと剣術もかな。


 とにかく私はもっともっとシルヴァと共に成長しなければいけない。


 家族を守るためにも。民を守るためにも。まだまだこれからだ。

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