第26話 二月の架け橋
午後になりたての2月の墓地は日が照っていても、時折冷たい風が吹き付け落ち葉を転がした。
アイドルグループ『星のエスペランサ』のリーダー・
隣りで一緒に合掌しているのは、色白の小さい顔にやや垂れ目の黒髪の似合う少女だった。
お別れの会に変更された『星のエスペランサ結成10周年記念ライブ』から3か月経て『11年突入ライブ』が開催された。大原の急逝によりライブ活動を休止していた『星のエスペランサ』再始動の会場はオールスタンディングのキャパ1200のライブハウスで、チケットは完売した。
ステージに飾られた「11」を模った風船のオブジェがライブに花を添える。開演1時間前に開場した場内には『星のエスペランサ』の楽曲のインストゥルメンタルがBGMとして流れ、場所取りを終えたファンは仲間と談笑したり、メンバーのSNSをチェックしたりと、いつも通り嵐の前の静けさに似た高揚感が広がっていた。
普段なら開演に合わせてボリュームダウンするBGMが、開演時間の5分前に止んだ。誤解していくつか鬨の声が上がったが、大方のファンは異変を察した。予想されたことだった。
「本日は『星のエスペランサ 11年突入ライブ』にお越しいただき、ありがとうございます。開演に先立ち、先日お亡くなりになった大原七花さんに黙とうを捧げます。メンバーも舞台裏で行いますので、ご協力お願いします」
会場スタッフの若い声は文言とミスマッチでたどたどしくもあったが笑う者はいない。
「黙とう」
静寂と対極にあるライブハウスが水を打ったように静まり返った。どこかでスマートフォンのバイブレーションが作動しても何も乱れない。
「ご協力ありがとうございました。間もなく開演となりますので、いましばらくお待ちください」
黙とうのあとは何から話せばいいのか、場内に生まれた仕切り直しの空白も、照明が落ちると歓声が戻った。オーバーチュアが流れ、ファンは胸を高鳴らせる。歓声が手拍子にかわり、衣装をまとった『星のエスペランサ』がステージに登場すると最高潮に達した。
いつも通りのライブだった。ファンはただただ夢中でペンライトを振り、ジャンプし、コールを送った。間が空いた分余計に楽しかったかもしれない。メンバーもいつもの興奮を思い出していた。会場にいくつもの虹がかかり、ファンはライブに酔いしれた。
「アンコールありがとうごさいまーす!」
拍手に迎えられてメンバーがステージに戻った。拍手のあとのひと時の静寂をリーダーの里中鈴が破る。
「ここで、みなさんに発表があります!『星のエスペランサ』に新メンバーが加入します!」
客席から上がった歓声はやや予定調和の色を帯びていた。『星のエスペランサ』は半年前から新メンバーオーディションを開催しており、SNS上では予想なのか事情通気取りなのか「今日のライブで新メンバーが発表される」とのコメントが散見されていた。
アイドルグループの新メンバーは手放しでは歓迎されない。拍手を送っても内心では不快を抱くファンは少なくない。推しメンの歌唱パートを奪われればコールする機会が減り、ライブの楽しみを一つ失うことになるからで、メンバーにしてもファンを取られる不安に駆られ、既存のメンバーやファンはメリットを享受しづらい。里中の声にいくらか影があるのを古参のファンは察していた。里中は声を振り絞った。
「新メンバーの
舞台袖から登場した少女に一部のファンから驚きが上がった。黒髪で色白のその少女に見覚えがあったからだった。
中学1年の時、母親とショッピングモールで買い物をしていた川村の耳に突然大音量が流れてきた。引き寄せられるように広場へ行くと、アイドルグループがCD発売記念のミニライブを開いていた。聞いたことのないグループだったけれど、可愛い女の子たちが可愛い衣装を着て一生懸命、だけど笑顔で歌って踊っていた。
ファンは色とりどりのTシャツを着て、Tシャツと同じ色のペンライトを振り、大声で名前を叫んで飛んだり跳ねたり。光線が乱反射しているようで眩しかった。
その中に一人、背の高い、モデルと見紛う子がいて、アイドルにこんなにきれいな人がいるんだ、と目を奪われた。小柄な自分とスタイルは異なるけれど、色白でハーフのような顔立ちは自分と共通していた。
川村は子供の頃からよくハーフに間違われた。羨ましがる友達もいたが、訊かれるたびに否定するのは面倒でコンプレックスになっていた。同じ経験をしてるのかなぁ、などと考えながらその子を見つめていると、不意に目が合い、ニコッと笑って手を振ってくれた。それが『星のエスペランサ』の大原七花だった。
川村は母親にねだってCDを買ってもらい、生まれて初めて握手会に参加し、ドキドキしながら列に並んだ。
顔が小さくて目が大きくて、大原七花は間近で見た方がずっときれいだった。自分の番になっても何を話せばいいかわからずにそっと手を出すと、大原は両手でぎゅっと握り締め「さっきレスしたの気づいてくれた?」と首を傾げた。その仕草に、同じ女性なのにドキドキした。緊張で「はい」と返事するだけで精いっぱいの川村に大原は「ありがとう。また来てね」と笑顔で手を振った。
「どうだった?」と訊いた母に「かわいかった」とだけ答えた。川村愛由美は『星のエスペランサ』と大原七花のファンになっていた。
それからは毎日『星のエスペランサ』の曲を聴いて、動画を見て、メンバーのSNSをチェックして過ごした。あれこれネット検索もした。
この頃結成8年目で何度かメンバーの卒業、増員を経て総勢12名。一般知名度は低くてもアイドル好きなら誰でも知っていて、大手企業とコラボしたりと『地下アイドル』と『地上アイドル』のライン上といえそう。
初期に加入して一度卒業した大原七花はこの新曲が復帰作だった。少し時期がずれていたら出会えなかったかもしれない。
『レス』はライブ中にアイドルが特定のファン目掛けて送るサインだと知った。レスが欲しくてファンはコールを送りペンライトを振る。
男性アイドルには興味を持てなかったのに。ようやく自分の好きなものを見つけた気がした。
メンバーが「楽しませるから絶対来て!」とSNSで盛んに告知していた『星のエスペランサ』の単独ライブへ行ったのはそれから2ヶ月後のことだった。
中学生一人だと、ナンパとか色々なことが怖くて不安だったけれど、みんなライブに夢中で周りのことなど目に入らない様子。アイドルを見にきているのだから当たり前か。
オールスタンディングの人垣にまみれる勇気はなく後方からの観覧でも、黄色のペンライトを見つけて大原が何度もレスをくれた。
他のファンみたいに「ナナカちゃーん!」と叫びたいけど恥ずかしくて、迷っているのはもったいないから今度にする。今日は楽しい思い出だけ持って帰ろう。前の方でぴょんぴょん跳び跳ねている人が少しだけ羨ましかった。
終演後ツーショット撮影会に参加した。
「ほんとにまた来てくれたんだ。うれしい!ありがとう!黄色のペンラよく見えたよ!」
一度会っただけなのに大原は覚えていてくれた。
「ライブすごく楽しかったです!」
「ほんとに?!ありがとう!絶対また来てね!」
小柄な川村に合わせて大原が顔を寄せて二人でピースをして撮影した。
人生で一番楽しい日だったかもしれない。じっとしていられないぐらいの興奮を抱え、帰りの電車で何度も写真を見返した。
母親にクリスマスプレゼントの希望を訊かれた川村は、迷うことなくライブグッズの黄色いTシャツをリクエストした。アイドルにはまってから娘の表情に張りが出たのは母の目には一目瞭然で、公式サイトの通販よりライブ会場で買うとツーショット撮影券がもらえるから現金でほしい、との頼みには呆れつつも叶えてあげた。愛由美の目には現金4000円がTシャツに見えた。
『星のエスペランサ』年明け最初の単独ライブへ出かけた川村は、開演前の物販で『OHARA NANAKA』とプリントされたTシャツを購入し、さっそくハイネックの白のニットの上に重ね着した。今日のために買ったニットと、ワンサイズ大きめにしたTシャツの相性はバッチリ。スタートラインに構えた心地で開演が待ち遠しかった。
この日もオールスタンディングだったけれど、ステージ下の一角に『女性限定エリア』が設けられていてステージのそばで観られたし、余計な心配をせずにライブに集中できた。距離が近いと迫力が倍増し、夢中でペンライトを振り、どさくさに紛れて「ナナカちゃーん!」と叫んでみたらウインクしてくれた。それからは何度も叫んだ。本当のライブの楽しみ方を知った気がした。
「クリスマスプレゼントで買ってもらいました」
興奮覚めやらない終演後の撮影会でTシャツをアピールした。大音量のスピーカーが近くにあったせいで耳鳴りが残り、自然と声が大きくなる。
「黄色似合うね」大原の言葉には実感がこもっていた。
「本当ですか?」
「ほんとにめっちゃ似合ってる。これからもずっと黄色でいてね。推し変したら許さないから」と怒り顔を作った。
「ずっと黄色です」といった川村に「絶対だよ」と笑顔に戻って写真に収まった。
『星のエスペランサ』は沢山のグループが出演するアイドルフェスでのライブが多かったが、まだ中学生の川村には金銭的にも日程的にも頻繁には参加できず、行けない日はメンバーやファンのSNSをチェックし、セットリストと同じ順で曲を聴いては大原のパフォーマンスを思い浮かべ、部屋で一人ペンライトを振った。
中学3年生になり、川村は受験生となった。7月の『星のエスペランサ 結成10周年記念ライブ』を最後にしばらくライブを我慢して勉強に集中する。志望校に合格して来年2月の大原七花の生誕祭で「合格おめでとう」と祝ってもらうのを目標に決めた。
そこへうれしい知らせが届いた。8月リリースの新曲のセンターが大原七花に決定した。推しメンの初センターに川村は飛びあがって喜んだ。きっと星エスらしいアップテンポの弾ける夏曲になる。リリイベに参加できないのは残念だけど、夏が勝負と言われる受験を、星エスが一緒なら乗り切れる。ありがとうナナカちゃん。ありがとう星エス。わたしも頑張る。
キャパの大きい結成10周年ライブに終演後の特典会はなく、「受験頑張って」と応援してもらいたいのと、しばらくライブへ行けないのを伝えたいのと、初めてのセンターを直接お祝いしたいのとで、川村は勉強の合間を縫ってその2週間前のアイドルフェス『アイドルジャム』の開かれる豊洲のホールに足を運んだ。
出番を終えた『星のエスペランサ』は、会場ロビーでツーショット撮影会を行う。同じく特典会中の他のグループやファンでごった返す中、川村はわき目を振らず、いつものように大原の列に並んだ。このごろは緊張より会えるうれしさが勝り、自分の番が来るのが待ち遠しい。
「センターおめでとうございます!」
「ありがとう!応援してくれるみんなのおかげだよ!超いい曲だから期待してね!」
SNSでは伝えてあるし、すでに何人にも祝われたろうが、初めてのようなテンションで迎えてくれた。
「でもこれから高校受験なので、しばらく会えなくなります」
「3年生だもんね。受験頑張ってね。応援してるから。愛由美ちゃんならできる」と言ってガッツポーズを作った大原に「ありがとうございます」と川村も鏡写しのガッツポーズで応えた。
「次は10周年ライブで、その次が来年の生誕になると思います」
2月21日が大原七花の誕生日。『星のエスペランサ』のメンバーは毎年誕生日の前後に「生誕祭」を開いてファンと誕生日を祝う。
「いい報告待ってるね」のあとに「私をみつけてくれてありがとう」と言った。「復帰して最初にできたファンが愛由美ちゃんだから」
大原にとっても川村は特別な存在だった。
「これからも絶対応援し続けます」
「私も愛由美ちゃんのこと応援してるからね」
約束して写真に収まった。
この日の出演時間は30分。それでも楽しかったけれど、10周年ライブは『星のエスペランサ』だけ。オールスタンディングではなく指定席で前から5列目が当たった。この日に大原七花がセンターを務める新曲が初披露されると発表されていた。受験前のラストライブを思いっきり楽しむ。その次は来年の生誕祭。それまで勉強がんばろう。
川村愛由美のスマートフォンのロック画面は大原七花とのツーショット写真だった。大原はもちろん自分の顔も可愛く撮れたお気に入りの一枚で、大原が右手、川村が左手で二人で一つのハート作っている。通常の撮影会はインスタントカメラを使用し、スマホでの撮影会はレアで、この写真は宝物の一つだった。
夜更けまで勉強したせいでしょぼしょぼする目で目覚まし時計を見るとちょうど7時になろうとしていた。鳴る前にアラームを切ってカーテンを開く。寝起きでスマホをいじるのは良くないと母親に注意され、普段は朝食を済ませてからにしている。それがこの日は自然と手が伸びた。
「『星エス』メンバー急死」の見出しが飛び込んできた。川村がファンになってから『星のエスペランサ』がネットニュースのトップになったことは一度もなかった。
何かの間違い。私の知ってる『星エス』じゃない。そうであるのを確認するために開いた記事は、大原七花の死を伝えていた。
「七花ちゃんが死んじゃった」母親に伝えると川村はベッドに泣き崩れた。学校へ行くことができず、起き上がることもできずに一日中泣いた。泣き止んでも大原を思い出すとまた涙が溢れた。受験も大原がいたから頑張ろうと思えた。星のエスペランサと大原七花が生きがいになっていた。全ての色が消えて目の前が真っ白になった。
翌日は土曜日で学校はなく、ずっとベッドで横になったままだった。勉強も何もする気力が湧かない。時々スマホを開いても、メンバー誰もSNSを更新していない。グループの公式アカウントは大原の死を伝えたまま停止している。ファンのアカウントはもう少し落ち着いてから。今はまだ見られない。
やがて公式アカウントが新しいポストを投稿した。「大原七花のお別れの会開催について」。リンクされたページにアクセスすると10周年記念ライブをお別れの会に変更して開催すると告知していた。
お別れの会当日、川村はライブグッズの入ったバックを持って家を出た。肩にずっしりのし掛かっても「大原七花をアイドルとして送り出してあげてください」公式サイトのメッセージを胸に刻み、今日は絶対に泣かないと決めた。
祭壇に飾られた大原の遺影と対面しても、献花の時も、メンバーが登壇しても、川村は涙を堪えた。首にかけた黄色のタオルは涙を拭くためのものではなかった。
スクリーンに在りし日の大原七花が蘇る。出会う前、グループに加入したばかりの幼さの残る大原は、今の自分と重なる。卒業を発表する姿は折れてしまいそうなほど儚かった。
それが一転して復帰してからは生き生きとして、まるで「アイドルって楽しい」と全身で叫んでいるようだ。
記憶に新しい映像は2週間前のアイドルジャムで、最後に歌った『BE YOURSELF』は曲のラストを大原のフェイクが飾る。歌唱力も抜群の大原は『BE YOURSELF』が見せ場の一つで聴く度に圧倒され「七花ちゃんすごいでしょ」と誇らしい気持ちになった。
大原のフェイクがお別れの会の会場に響き渡る。これが大原七花の生涯ラストパフォーマンス。
誰かがスクリーン目掛けて「ナナカ!」と叫んだ。それを合図に悲鳴に似た叫びと嗚咽が客席に連鎖する。川村は込み上げる涙を必死で堪えた。
歌い終えた『星のエスペランサ』は締めの挨拶のためステージに整列した。空調の効いたホールでも夏の初めとあって、みんなびっしょり汗をかいて前髪が崩れていた。その中であまり汗をかかない体質の大原はどこか涼しげな顔に見える。照明を避けるように両手でひさしを作って客席を見回し、誰かを見つけて手を振った。
私へのレスだ。
たくさんのグループが出演したあの日は観客も多くて後ろの方で見ていたんだけれど、黄色いペンライトを見つけて手を振ってくれたんだ。
「ナナカちゃーん!」スクリーン目掛けて叫んでいた。もう会えないなんて嫌。絶対嫌だ。堪えていた涙が溢れ出した。
霞む目に、スクリーンいっぱいの大原の顔が映った。大原が下がるとそこに『星のエスペランサ』が揃っていた。リハーサルかなにかの、最近の映像みたいだけどなんだろう。
「盛り上がってますかー?!」映像の中の大原が呼び掛けた。
「盛り上がってますかー!!」「星のエスペランサが大好きですかー?!!」
総立ちになったファンに向かって「新曲行っくよー!」と叫んだ。
永遠に聴けないと思っていた大原のセンター曲『星空ダイアリー』が流れた。会場が一体となって黄色のペンライトを振り「ナナカ!」とコールする。川村も泣くのを忘れ、ありったけの声で叫んだ。「お前が一番!ナナカ!!」
「幸せの黄色がキミにとどきますように」
大原が最後のフレーズを歌った瞬間、電流に打たれたようなショックが川村の体内を駆け巡った。
ステージに立つ姿を夢に描いたことがあった。メンバーに交じってステージの上で歌ってみたいと鏡の前で振付を真似てみた。
そんな時に『星のエスペランサ』が新メンバーの募集を開始した。受かるわけない。でも受けてみたい。だけど高校受験を控えている。合格を目指すなら歌やダンスの練習が必須で、受験勉強との両立は困難。時期がずれていれば、と悔やんだ。
この瞬間迷いがなくなった。わたしは『星のエスペランサ』になる。黄色いペンライトを握りしめた。
川村は『星のエスペランサ』11年突入ライブのステージに立っていた。
「初めまして。『星のエスペランサ』の新メンバーになりました、15歳、中学3年生の川村愛由美です。ファンのみなさんに認めていただけるよう精一杯がんばりますのでよろしくお願いします」
恭しく頭を下げると拍手が起きたが、混じり気のない祝福でないことは理解していた。きっと自分が逆の立場なら、新メンバーは素直には受け入れられない。時間をかけて認めてもらえるよう努力するしかない。
「もう一つみなさんに報告があります。愛由美ちゃんが黄色を受け継ぐことになりました」
川村を呼んだ時のハイテンションが嘘のように抑揚を欠いていた。メンバーカラーはアイドルがファンと共有するアイデンティティで、里中も重々承知している。ブーイングも覚悟していたが、客席から明確な反応はなかった。事態をはっきり呑み込めていないのか、まだ中学生の川村への配慮だろうか。
「黄色は欠番にすべきとの意見もあると思います。この先ずっと黄色が空席のままがいいのか、メンバーとスタッフ、みんなで話し合いました。七花のバトンを愛由美ちゃんに受け取ってもらいたい。それが私たちの出した結論です。愛由美ちゃんは黄色を受け継いでくれました。私たちは、愛由美ちゃんがこれから黄色を輝かせてくれると信じています。これからも『星のエスペランサ』をよろしくお願いします」
深々と腰を折った里中に、メンバーも倣った。
「ありがとう」
誰かの声が会場にこだました。拍手と声援がステージに降り注ぎ「愛由美ちゃーん!」初めて名前をコールされる。それまで各々の推しメンのカラーに点灯していたペンライトが、つぼみが開くように黄色に染まっていった。
「それでは最後の曲を聴いてください」
流れたイントロは大原七花のセンター曲『星空ダイアリー』だった。大原のパートをメンバーが順に歌ってもコールはすべて「ナナカ!」。
「幸せの黄色がキミにとどきますように」
最後のパートを川村愛由美が天に向けて歌った。背中では、大型ビジョンに映る大原原七花が右手で、川村愛由美が左手でハートを作った写真が見守っていた。
忘れものおくりびと―盆之胡瓜の道草― すでおに @sudeoni
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