ルブルム帝国の終焉


ビーーー!ビーーー!ビーーー!



ミョシム城内にけたたましく鳴り響く警告音。


それはルブルム帝国の終わりを告げる合図だった。




警告音を聞き、玉座の間へと戻ってきた王女の少女と宰相の青年。


はたして、この警告音の意味とは—————






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



城内に警告音が鳴り響くなか、俺とヒサ姫は多くの宝物に溢れている玉座の間へと帰ってきた。


城内に攻め込んできた敵兵達はこの警告音を聞いて、これから何が起こるのかと不安がり、その場を動けずにいるようだ。


この警告音にまさかこんな副産物があったとはな。




玉座の間にて、ヒサ姫が口を開く。



「とうとうルブルム帝国も滅亡……ね」


「すいません…私にもう少し魔力があればこの時間を先延ばしにする事ができましたのに…」


「いいえ、リーヴァス、貴方は良くやってくれたわ」


「ヒサ姫………ありがとうございます」



今なお鳴り響く警告音。これは、あることが起きると鳴る仕掛けとなっている。



そのあることとは—————




「リーヴァス、あんなに栄えたルブルム帝国の人間も残りは私達2人だけ・・・・・・になってしまったわね」


「そう、ですね。できればこんな日は来てほしくなかったのですが」



———あることとは、ヒサ姫と俺、リーヴァス以外の帝国人が全員戦死したことである。



なぜそんなことがわかるのか。それは、ルブルム帝国の兵士全員の足首にある装置をつけていたからである。


その装置は着けた者の生死がわかるもので、90%裏切らない者には青色、50%の確率で裏切る者には黄色、80%の確率で裏切る者には赤色の装置をつけていた。


俺とヒサ姫、そして今は亡き大将軍のホルスロー殿の3人で厳密な選定を繰り返し、長い時間をかけて兵士一人一人に着ける装置の色を選んだ。ちなみに彼——あの伝令兵は黄色だった。ヒサ姫を見なければ裏切っていたのだから当然だな。


この装置の意味を、俺達は一切兵士達に伝えずに着けていった。もちろん自力で外すことはできないようにした。


だからだろうか、この装置が怖くて今日まで裏切る者はほとんどいなかった。


しかし、滅亡を目の前にしてここ最近は裏切る者が多かった。


もちろん裏切り者を無事に生かすわけがない。


あの装置には———




ドォォォォン!! ドオオォン!! ドオォォォン!!




外から大きな爆発と火薬の匂い、嗅ぎ慣れた人が焼ける匂いと聞き慣れた悲鳴があちこちから聞こえてきた。



「…始まりましたか」


「そのようね」



———あの装置には、特定の条件下で爆発する仕組みとなっている。無事に作動してくれてよかった。



装置——生死判定起爆装置。通称『デス・アパラタス』。赤色の装置は警告音が鳴ると爆発する仕組みだ。



警告音が鳴る条件。それは、青色の装置を着けた兵士が全滅、黄色の装置を着けた兵士の半分が戦死、赤色の装置を着けた兵士の10%が戦死したことで鳴るようにしていた。


赤色の兵士が突如爆殺された事で敵に降伏した黄色の兵士は慌てふためいているだろうな。そして恐怖にかられ、降伏した先で暴れるがいい。


つまり、ルブルム帝国を、ヒサ姫を守る兵士は俺以外全滅した。そして兵士ではない帝国民は既に全員死ぬか殺されるか亡命している。よって、ルブルム帝国は今この時をもって滅亡したのだ。



しかし連合国の狙いは最初から俺とヒサ姫のみ。俺達を捕らえ、処刑するまでこの戦争は終わらない。


玉座の間には強力な結界を張っているとはいえ多勢に無勢。何発も魔導砲を撃ち込まれたら数時間で結界が破られ、敵兵がこの玉座の間へとやってくるだろう。




その数時間の間に…やることやっとかないとな。

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