第54話 初めての男子会
ゴールデンウィーク2日目
僕はソワソワした気持ちでアミューズメント施設にいる。
昨日の
「よォ
「あっ!
「おう。おはようさん」
なんだか怖いお兄さんに話しかけられたと思ったらクラスメイトだった。いや、クラスメイトではなく僕の大切なお友達。
「服装について色々教えてくれてありがとう! お陰で昨日は楽しかったよ」
「楽しめたならいいさ。ちなみに四十万に食べられたのか?」
「ん?」
食べられたとはなんだろう?
もしかしてサンドイッチの事かな?
でも、今の聞き方は少し違うような。
「すまん、忘れてくれて……俺の早とちりだ」
「うん。それならいいけど」
美味しく食べたって言いたかったけどなんだか言わなくて良かった雰囲気もある。
「僕も早く着いたと思うけど、矛先くんも相当だよ?」
「ん? あァ俺はな、いつも早起きなんだよ」
「そうなの?」
「あァ、早朝にランニングとかしてるからな」
へぇ!
だから矛先くん体が大きいのか。
「僕も早朝ランニングしたら矛先くんみたいになれるかな?」
「俺みたいになりたいのか?」
矛先くんはなんというか、いい意味で高校生には見えない風格を持っている。それが何なのか言葉にしずらいけど大人として必要な何かだと思う。色んな人がよく言っている「大人の階段」ってやつなのかな。
「早く大人の階段登りたいっていうのかな?」
「俺はまだ登ってねェ! 何言わせんだっ! ってか何言ってんだよ」
「ごごご、ごめんっ!」
矛先くんが大声を出したので反射的に謝ってしまう。
「いや俺の方こそすまん、別に怒ってるわけじゃねェんだ」
「う、うん」
矛先くんは僕の顔を少しだけ見つめた後、
「二句森はこういう奴だっていうの忘れてたぜ」
「どういう事?」
彼は僕の問いには答えず左手で僕の頭をポンポンと触りながら続ける。
「大人の階段登りたかったら四十万に言えばいい」
「四十万さんに?」
そして半分笑いながら微妙な顔で、
「あァ。アイツに言えば嬉々として手伝ってくれるだろう」
「コーディネートとかって事?」
「コーディネートっつうか、シュチュエーションとかムードとかそんなんだろ」
「う〜ん。イマイチわからないや」
そんな僕の返答にとても優しそうな顔になる。
「今は分かんなくていいさ。その時が来たら言ってみな」
「う、うん」
僕に兄さんがいたらきっとこんな感じなんだろうなと思えるような安心感が矛先くんにはある。
入学してすぐは凄く怖い印象だったけど、話してみると面白くて、クラスメイトの面倒を陰ながらサポートして、僕にだって優しくしてくれる。そして今日だって彼のお陰でこうして集まる事ができたのだから。
「矛先くん」
「ん?」
「今日誘ってくれてありがとう」
「おゥ」
『今更だが、男子達で遊ばないか?』
ゴールデンウィークの少し前、矛先くんの提案でスケジュールが組まれた。
というのも『
元はと言えば彼ら彼女らが挙手しなかったのが悪いと矛先くんが切って捨てたのだが、そのフォローを彼自身がやっているのだ。
「とんだマッチポンプだぜ」
とは彼の言葉で色々忙しく働いてくれた。
「本当にありがとう」
「……何度も言わなくていい」
少しだけ彼の頬が赤く染まっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます