第51話 僕達の芝生はきっと青い春の色をしている
『隣の芝生は青く見える』
自分の現状に満足できず他人の方が見えてしまう心理を表した言葉。
僕自身も少し前まではそういう事がしょっちゅうあった。
中学時代の同級生がカッコよく見えたり、高校の先輩がものすごく大人に見えたり、父さんと母さんの関係が羨ましく思えたり――僕の憧れの人と男の人がお似合いに見えたり。
――キシッミシッ
「んふっ。
「し、
「ううん平気だよ」
――ミシッキシッ
「頑張って、もうすぐだよ」
「まだ……んしょ、慣れなくて」
「完全に馴染んでないからねぇ」
彼女の言葉通り僕はまだ経験不足だ。
彼女に落胆されたくなくて一所懸命
「よっ、ほっ」
「いいねそんな感じ」
跳ねる体と揺れる白いワンピースを目の前にしながら額に汗が光る。
「やっと太いのが馴染んできたね」
「確かに思ってたより大きい」
「自分のなのに?」
彼女が見つめる先には太くて硬い立派なモノが、僕は何か言葉を返さなくちゃと考えるけど慣れない動きで身体が痛い。
「僕、ちょっと意地を張ってたかも」
「それも知ってるよ。十蔵くんが初めてってわかってたから」
素直に話すと彼女は優しく僕に微笑む。白い帽子を外した彼女の髪が頬に張り付いて妙に
「経験者の私に言わせて貰うと掴み方がぎこちないかな」
「掴み方?」
彼女はそう言って僕の手を取って誘導する。
「ここを……こう」
「ひゃ! そんなに強く?」
「そうじゃなきゃ固定できないよ」
何度も触れたはずの手が
「それから足はもっと開く」
「これくらい?」
「まだだよ」
「ひゃわっ」
彼女の手が僕の内股に添えられ強引にこじ開けられる。その時も変な声が出てしまう。
「これが基本の体勢だね」
「なんか恥ずかしいよ」
「私も最初は恥ずかしかったよ。でも経験していくうちに慣れるんだよ」
「慣れるかぁ。四十万さんはどれくらい経験あるの?」
僕の問に「ん〜」と指を顎に当てて考える仕草、ついでに頬にかかった髪を後ろに持っていく所作に胸がキュンと鳴るのがわかる。
「5回ぐらいかな」
「……そうなんだ」
その数字が多いのか少ないのかは僕にはわからないけど、未知を知ってる彼女だから色々神秘的なのだと思う事にした。
「興奮した?」
「してないよっ!」
いつものように「うぇへへ」と笑う彼女は持っていた桜柄のハンカチで僕の額を拭ってくれる。
「いっぱい汗かいたね」
「うん、喉かわいちゃった」
「聖水ならあるよ?」
「それを僕に飲ませるの!?」
ペットボトルに入った薄いイエローの液体を見せながら怖い事を言う。
「うぇへへっ。緊急事態なら飲むでしょ?」
「今は緊急事態じゃないよ」
「えぇ、そうなかぁ」
「そうだよ」
いくら僕がなんでも食べるからといってそれはなかなか手が出ないや。もしかしたら、仮に、やむを得ない場合は飲むかもしれないけど率先して飲もうとは思わない。
「美味しいのになぁ」
「飲んだ事あるの!?」
サラりととんでもない事を口にする彼女に僕は飛びついてしまった。
「あわわわっ!」
「あっほら、身体が言うこと聞かないんだからじっとして……きゃんっ」
そして狭い場所で僕は白ワンピースの君を押し倒す形になり。
「十蔵くん、えっちだね」
「これはなんというか……ごめんなさい」
触れ合う肌が熱を持ち鼓動を早める足掛かりにしていた。
「ゆっくり立つから四十万さんはじっとしてて」
「私はもう少しこのままでもいいなぁ」
そんな訳にはいかにい。
けれど誰も見ていない場所だから僕も少し心が揺らいでしまう。
「ガクガクだね」
「うん、明日はもっと酷いかも」
「看病してあげようか?」
「筋肉痛で看病って考えると、情けなくない?」
「うぇへへっ」
「ふふっ」
――キシッギシッ
木の音が心地よく僕達を離す音色になり、一陣の風が肌を通り過ぎる晴れ渡った空。
「ねぇ見て」
「ん?」
――僕達は初めから
「あそこの芝生でお昼にしよ?」
「うん、とってもいい場所だね」
「んじゃしゅっぱーつ!」
「おぉ!」
今度は彼女と協力して太くて硬いモノを一緒に持つ。
「
「濁点は要らないよ十蔵くん?」
「えっ? そうなの?」
「うえへへっ。私の中ではね」
水面に浮かぶ僕達は青い春の芝生に向かって漕ぎ出した。
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