第6話 さらばミチルの家族、ボクは旅に出て大きくなる!

翌日、母親がミチルを起こす時間帯。彼の扉が開き、母親が入ってくる。


「ミチル……?」


しかし、そこには寝ている彼はいない。あったのは一枚の置手紙だった。


そこには真実が書かれていた。それを読んだ母親は大慌てで夫を呼び、家が騒がしくなるのだった。





「全く。あれでよかったのかい?」


『うん。言葉でダメなら文字で伝える。これが僕のやり方なんだ』


そう、手紙を書いたのは彼だ。僕はただ助言をしてやっただけの事だ。だがそれをやってのけるミチル君の度胸に、敬意を払い、すごいと言っておこう。


今、僕らは影化し、馬車の荷台に侵入し、揺られている。


向かう先はあの街から6日ほど歩かないとたどり着けないほど遠い場所、

「アマルタ公国」領に位置する街、「デナンタ」へ向かっているのだった。


最初は馬車の方でも幽霊がいると思われたが、3日くらい黙ってれば気にしなくなった。まぁ現実の話でもしてれば幽霊とは言いづらいだろうさ。


残りの日にち、突然馬車が止まる。

異変に気付いた僕はこっそり顔を出す。そこには商人が山賊らしき男たちに出くわしている。たぶん、襲われてるんだろう。


「ここを通りたければ、荷物の物全部置いていきな。置いていけば悪い事はしねぇぜ?」


「だ、駄目だ!ここにある荷物は商売道具であり、俺の明日なんだ!」


言い訳に苛立ったのか、山賊の一人が斧を構える。


「るせぇ!ずべこべ言わずに置いてけって言うんだよ!」


今度は脅しか。さてどうしよう。


「助けた方が良いかい?」


『ボク的には有りだと思う。どのみち馬車がないとあそこにつけないし』


了解と言って、僕は馬車の荷台から飛び出す。

無論、高く飛び、空中で槍を構える。


「何だ!?」


「死んでもらうよ」


山賊の一人は僕の奇襲攻撃を避けれず、落下攻撃の餌食となる。

口に槍の刃を突っ込み、頭と胴体を貫き、串刺しのようになった。


割とエグイな。


槍を手放し、懐から短剣を取り出し、二人目の山賊の頭部へ目掛けて投げる。


「うおっ!」


しかし短剣の投擲は外れてしまい、近くの木に刺さる。


「なんだてめぇ!」


剣が振り下ろされる。咄嗟に右に躱し、左手を影化、形をオーガの腕に変更する。

実は馬車に乗ってる時、商人がオーガに襲われてたため、助けるついでに捕食し、腕力を強化したのだった。


「これに殴られたら痛いよ?」


殴る前に【加速】を無詠唱で発動し、素早く殴る。

グホァっと声が聞こえた気がするが気のせいだろう。


二人の山賊を屠った後、残った斧持ち山賊の前に向き直る。


「さて、次は君だ。懺悔の用意は出来てるかい?」


「ひっ、ひぃ!」


あれ?おかしいな。もう戦意喪失してる。まぁいいや。


(どうする?)


『戦意喪失してるなら、倒す必要はないと思うよ』


(分かった)


「戦う気がないなら消えてくれ。仲間が二人もやられたんだ。悪さはもうできまい?」


そう言って、幻影魔法の一つ、【巨影】を発動させ、片腕を巨大化させる。


「別にかかってきてもいいんだよ?返り討ちになるだけだし」


「じょ、冗談じゃねぇ!命がいくつあっても足りねぇよ!」


斧持ちの山賊はやられた仲間を置いて逃走する。

ひとまず、脅威は去った。


「後は……」


僕は棒立ちしている商人の方を向き、近づく。







「しかし、お前が本当にあの影喰いか?随分とおとなしいが?」


「時間も過ぎれば凶悪なものも少しはおとなしくなるよ。僕がその証拠だからね」


あれから少しして、商人に事情を話し、デナンタまで乗せてもらう事にしたのだった。幽霊と思われて驚かせてしまったのは謝罪したが、向かう理由は適当にしておくことにしたよ。


「さっきは助かったよ。お前、結構強いんだな」


「腕には自信があるからね。それくらいはしなきゃ」


数日、何事もなく、商人と楽しい一時を過ごしながら、デナンタまで送ってもらうのだった。


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