第41話 滝火

ただ ずっと 橙色に灯る滝火を見ている。


「おまえ あの青い炎の滝に入って行く奴を見たか」


「ああ」


俺はただ、茫然と滝を見るしか術がない。


「おまえの両親もあの滝に入っていったぞ」


「ああ」


俺は、滝火を見るしかない。


「おまえの妹も入っていったぞ」


「ああ」


俺はもう我慢ができなくなっている。


「ごめん オラも行くわ」


親友も滝火に入って行く。


「落ち着くな」


俺は生きたい衝動を持ち続け、ただひたすら滝火を見続ける。





俺は生ききった。


全て「滝火」のおかげだ。


ゆらりゆらりと橙の外側をゆらぐ青い炎。


俺にとっては代々オレンジ色より蒼色が好きだ。


蒼い滝火を愛して已まない。


俺の命の焚火が灰色に燃え尽きても、滝火の炎は絶えず萌える。


本当に安心する炎は萌黄色。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る