第29話 最高の窓口対応

 彼女はA社イチの最高の受付係。

 

 窓口対応のスペシャリストだ。

 

「   おはようございます」

 

 必ずワンテンポ遅らせてから挨拶する。なぜかというと、その空白(いわゆる魔)の部分で最高の笑顔で微笑んでから挨拶するのだ。

 

 そのさりげない笑顔は、どんなモンスタークレーマーや他社の重役、一般のおばあちゃんから子供の見学客、ストーカー気味の客に対しても平等に同じ対応で接する。

 

「    いらっしゃいませ。ご用件は」

 

 

 いつもの笑顔だ。

 

 

「素の笑顔を頂きに参上」

 

 笑顔強盗団が突然襲撃する。

 

 彼女の素敵で可憐な身体を置き去りにして、強盗団は彼女の「笑顔」だけを盗む。

 

 

 TVニュースでは「日本最高の貴重な笑顔が盗まれました」と不愛想な女性キャスターが淡々と報道している。

 

 あるビルの地下室で素の笑顔は監禁される。

 

 無知で打たれたり、スタンガンで猛烈な電流攻撃を受けたり、火あぶりや水責めなどあらゆる拷問を実行する強盗は引き笑いをする。

 

 それでも素顔は動揺しない。常に最高の笑みをキープしている。

 

 

 強盗団は愛想を尽かし、その笑みを別の場所に持っていき換金しようとするが、どこへ持っていってもそれは引き取ってもらえず、諦め顔であきれて笑う。

 

 

 警察が換金場所を突き止め、そこで強盗団を逮捕しようと包囲する。

 

 強盗団のメンバーは皆笑い死にしている。

 

 警察は笑う。「   ふふ    自業自笑だな」



 

 

 解放された「笑顔」は、世界中にニュースや新聞を通して最高の笑顔振りまく。世界の人々はそれを見て、最高の笑顔で朝、挨拶をしお客様への対応をしあう。

 

「         ます」「       とう」「     YOU?」笑いの間は大事にしなければならない。


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