第28話 「やま かわ」
今日は金星への移住希望者枠当選日だ。慎重に自分のエントリー番号を探す。
「あった!2357111317番」
「山川良かったな」友は本当に喜んでくれている。
隣近所の隣人たちも歓喜に沸いている。田舎町の遠くにそびえる山山や麓の我が町へと流れる川の水水もピチャピチャと弾んでいるようだ。
「やま」
「かわ」
昔、合言葉を決めて友と秘密基地に出入りしていたのを想い出す。
大人になったら、悪友と会員制クラブへも例の合言葉で出入りしたりもした。
「やま 仮面付けてきたか」
「おー かわちゃん もちろんさ。かわちゃんも付けてきたか」
「ああ おNEWのやつさ」
損なことは長くは続かなかった。
やがてお互い家族ができ、損な遊びもしなくなった。普通に子を育て親を見取り、妻に先立たれ涙した。
「やまちゃん そろそろいくか」
「おー かわちゃん いくか」
いよいよ、金星へ移住するためロケットにふたりで乗る日が来る。私が移住権をペアで当てたからだ。
「ロケットに乗る前に、例の合言葉やろうぜ」
「おお いいね」
「やま」
「かわ」
ロケットの小窓から見える地球には、既に山も川も存在していなかった……綺麗なブルーさえも。
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