第22話 見透かし、そして描く

 ぼくの彼女は透き通るほど色が白くて、今にも消えてしまいそうだ。

 

 キャンバスに彼女を描く時は、いつも配色に困る。

 

 透明すぎて、普通のホワイトブレンドでは表現できないからだ

 

 今回はプロポーズの意味合いで描いているので妥協はできない。仕上がり具合では白紙に戻る可能性がある身体からだ

 

 ぼくは必死で色を未来へ探しに行く。

 

 目を閉じ、筆を縦に構え、彼女の綺麗な肢体を見透かして、パレットを尻に敷く。

 

 ぼくはパレットに薄く残った絵の具の色に引き込まれる。

 

 

 これが未来への扉。いつもの入り方だ。

 

 いくつもの色彩や無限空、森や川、海や透き通った湖を通過し、どぶ沼にいつも辿りつく。

 

 が未来。

 

 泥底をはいつくばって、懸命に色を探す。

 

 いろいろな石や流木、水草や微生物の下を手探りでいろいろと手を尽くす。

 

「やっと見つかった」

 

 ぼくのイメージどおりの色が小さな石の下に隠れていた。

 

 それはなんと、苦の色だった。

 

「しみ色」

 

 ぼくはしみ色を使って、彼女の肌を塗る。

 

 

「完成した」

 

 真夜中なのに彼女の部屋へ押しかける。

 

 彼女のアパートのドアのカギは空いていた。

 

「おーい いるかい?」

 

 応答はない。

 

 彼女の部屋にもキャンバスが立てかけられている。絵は僕をモデルにした絵。肌だけ色が塗っていない。

 

 

 何日経っても、彼女は戻らなかった。

 

「きっと、あいつもに行ったんだな」

 

 ぼくは悟った。彼女はそこまで行けなく、表面上を取り繕い彷徨い泳いでいるからだと。


 彼女はただの「プロポーザル」しか考えていなかった。

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