第6話 独特な姉・リン
さて、3歳の盛大なお祝いも済んだわけであるが、この3歳のお祝いは子供の生存率の低かった昔からの習わしのようである。だからこそ、親戚筋が集まって盛大なお祝いをするようである。
因みに、10歳は初等教育が終わり、そのまま中等教育へ進むのか、職業専門学校に進むのか、はたまた職に就くのかという大まかな進路を決める歳であるため、盛大に祝われる。
例えばギルドは10歳にならないと本会員としての登録ができない。一応アルバイトのように10歳未満でも仕事は受けられるが、受けることができる仕事も少なく、収入も少ない。10歳以降であればギルドの一員として仕事を受けることができるわけで、受けることができる仕事の幅も広がる。そして10歳までの教育は無料で、計算や文字などの必要最低限の知識を得るわけである。
18歳は、成人ということで親から独立するという年齢になっており、ほとんどは職に就くなど自立した生活を送るため、盛大なお祝いがされるわけである。
補足はここまでとして、俺が出ていくタイミングは2種類である。10歳の時にギルドへ登録するというパターンが1つ。もう一つは18歳まで学問にはげむというパターン。
初等教育は5~6歳からであり、少なくとも簡単な計算、文字、生活魔術(着火や微風、穴堀りなど)程度のことを10歳までに教わるわけである。
進度が早ければ(ルカリオのように生活魔術を早々に身に着けるなど)、さらにそれ以上の内容も教わることができるわけだ。初等教育を普通の人間が修了するのに、早くて8歳と半年である。言い換えるならば、魔術が使うことができ始めて半年くらいで、初歩的な魔術を身に着けることができる者もいる、というわけである。
俺が目指すのは最短コースである。最短で基本的な修練は終了しなければ、神を倒す、という大きな目標までにはいきつかないのだ。うん、努力しよう。
というより、ラノベで昔から思っていたことだが、いきなり書斎の本読んだりしていたら、怪しまれないのか……ということ。しかし、これは我が姉、リンが解決してしまっている。彼女は引きこもりである。いや、より正確にはこの歳で研究しているのだ。母さんは、私の遺伝が強いのかしら……などと言ってはいるものの理由は明確であった。
俺がまだ1歳だった時、当時物心ついたばかりで好奇心旺盛な4歳児のリン姉は、1人で森に行き、迷ってしまったらしい。そんな時、魔獣が襲ってきて、恐怖で体が竦んだわけだが、ある冒険者と思われる女魔術師が、その魔獣を叩きのめしたらしい。その魔術はかなり強力な魔術で、その余波を感じた母さんは、リン姉もいないため心配になり何事かと飛んで行き、魔術師とリン姉を見つけた。母がリン姉を見ると、その魔術師の魔術を見たリン姉は泣くどころか、目をランランに輝かせて魔術師に駄々をこね始めた。
その魔術師は鬱陶しそうにし、『魔術師たるもの基本くらいは自分で精進しろ』と言い残して、去っていったらしい。
その出来事を受けた後、リン姉は茫然としていたが、次の日から書庫に閉じこもり、俺と同じように本を読み始め、初等教育の始まる5歳の時には、魔術は使えないもののオリジナルで魔術を作り出してしまったらしい……
ということで、俺の場合はその話を聞いた後に、書庫に入っていいかの許可を取ったため、リン姉の真似、と思われているようである。
因みに、リン姉はこの町では変な子、または魔術の申し子と言われているようで、お勉強は残念なことに苦手らしい……運動神経は悪くないため欠点が勉強しかないらしい……。
因みに長男のルカリオ(ルカ兄)は、初等学問所では“神童”と呼ばれているらしい。まぁ、その当本人は、自分は秀才で、神童は下の二人だ……と落ち込んでいるらしいが。とはいえ、普通に8歳で読み書き計算、そして生活魔術数種類を扱えるのだから、この世界では十分にすごい部類である。
俺は残念ながら子供すぎて何もできないわけである……。3歳になった今もやることと言えば、母さんやお世話係(ベビーシッダー?)同伴の散歩と書庫での読書である。まあ、3歳ではさすがに自由にはならないよな、と思いつつ今日も今日とて読書である。すると、書庫に誰かが入ってきた気配がしたので振り向くと、そこにはリン姉が眠そうな目をこすりながら入ってきた。
「……いた…ロバート。ちょうどいいや……、お母さんがルカ兄と私と一緒に魔術師ギルドに行くんだけど、ロバートも来る?だって。」
「あ~…うん、いくよ。」
「わかった。玄関で待ってる。」
そう言いつつも、書庫の奥に行って魔術の本を取るリン。上級レベルの魔術書である。何も言わなかったが、リン姉なら読める内容の本であるものの、俺はそれを見て、え、玄関に本を持っていくのか?と思った。
しかし、気が付いたのか、部屋から出ていく際に理由を説明される。
「……どうせ、詰まらない。だから、魔術師ギルドの座る場所で本を読んでいた方がいい。」
「……あ、そうなんだ。」
「じゃ、待ってる。」
そう言って去っていくリン。……うん、やはり変わっているな。おそらく稀代の天才と呼ばれる可能性すらある。あの女人事部長とは別の意味で優秀だ。あの人事部長はいわば与えられた条件内で最高の結果を出すタイプだが、おそらく姉は条件をぶち壊して、または関係なく結果を出すタイプである。どちらも恐ろしいタイプであるが……
「姉さんだけは敵にしないようにしよう。」
そう俺は決意して、出かける支度をし始めたのだった。
外出の支度をお世話係(ベビーシッダーまたは家政婦?)に手伝ってもらいつつ、玄関に降りてみると母は黒を基調とした布地に赤色の装飾が施された魔術師ローブを着て待っていた。
魔術師ローブの色はある程度の魔術師の位を表している。魔術師が普段からローブを着用する義務はないが、魔術師ギルドに用がある場合はローブの着用か紋章の持参が必要である。黒い布地のローブを着ている時点で一人前、と言われる。そこからはもはや実力によって装飾の色が変わるわけである。黒を基調とした赤というのは上から5番目で普通ならここまでたどり着ければ超一流と言われる。
一番上から
白基調に金装飾
白基調に赤装飾
↑のふたつは人外と呼ばれている
黒基調に金装飾(筆頭魔術師など)
黒基調に銀装飾(魔術師団長・魔術師ギルド長など)
黒基調に赤装飾(超一流)
黒基調に薄い黄装飾(一流)
黒基調に緑装飾(一般的)
黒基調に装飾なし
紺基調
青基調
薄紫基調
11段階に分かれている。
そしてルカリオ兄さんは動きやすい服装、リン姉さんもまた、なぜか薄い紫色の魔術師ローブを着ていた。
「…リン姉…なんでローブ?」
「…魔術師見習いだから。」
「へ?」
全くもって意味が分からない…魔術師も見習いというのも魔術が使えないと名乗れなかったはずなのだが……
頭の中にはてなマークが浮かんでいる俺を見た母さんが意外、というように口を開く。
「あら……ロバートはまだ読んでないのかしら?」
「え……なにを?」
「魔術は詠唱しないと発動しない、と思ってる?」
「……違うの?」
これを聞いた俺はしまった、と思ってしまった。そんな俺の心中など察することなく、母さんは続ける。
「入門編初級なら、それが基本ってなっているからね。中級の本には他の方法が載っているわ。まぁ……お金かかるんだけどね。」
「……そうなんだ。」
「まぁ、魔術師ギルドに行きましょう。歩きながら説明するわ。」
初級編を読んで他の分野を読んでいたため、知らなかった。最初は広く浅くにしようと思ったのだが、少しミスをしたか。現に初級編の8割を知っておけば初等学校は卒業できるのだが……
そんな感じで初の魔術師ギルドに俺は家族と一緒に向かうのであった。
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