第4話 やっと動ける年齢
…俺は会社のエリートコースを歩んでいた福田安武だったが今は違う名前で呼ばれている。
「ロバート?お昼ごはんよ?」
「はぁ~い。」
そう俺の名前はロバートであるらしい。
家族は両親と兄1人、姉1人の5人家族。父のジェイソンは王国の騎士団に勤めており、今庭先で遊んでいた俺を呼んだ母のメイリンは元王国魔術師団に勤めていたが結婚を機に依願退職。兄のルカリオは6つ上の8歳、姉のリンは4つ上の6歳であり、2人ともこの町の初等学問所(小学校みたいなところ)に通っている。
俺はもう少しで3歳になる。一応、言語は頑張って習得した。
地球の英語以来だよ…言語習得なんて…
英語よりも早く習得できたが…これはおそらく体に引っ張られたんだろう。
地球では乳幼児の言語習得能力は高いと言われていたしな…。
この辺は前世の常識が通用してくれてよかった。
さて、現状について、書き連ねてみる。
まず、魔力操作についてだが…寝るのが仕事と言われる乳幼児の時からやってみた。
しかし、集中してみても何も感じることはなく、それならばと親がたまに目の前で使う魔術と思わしきものをジッと見てコツをつかもうとしたのだが、努力虚しく何もできなかった…。
何故だろうと思いつつ、2歳になり自由に動けるようになったのでこっそり書庫に忍び込み魔術の本を手に取って読んでみると一応記載されていた。
『(略)集中をしてみるともやもやとしたものが体内に感じられることがあります。それが魔力です。その魔力を自由に動かしてみましょう。』(『初めての魔術』より抜粋)
とのこと。
今までの集中と方法が異なるのかと思い、これに従って、再度集中してみたが…まったく感じられなかった。
納得がいかなかったので他の本を読んでみると…
『一部の特別な者*はともかく、それ以外の者は体内の魔力量が少ないため魔術の訓練などは8~10歳から適齢と言われる。』(『初級魔術教本Ⅰ』より抜粋)
と記載されていた。おそらくこの『特別な者』というのは、過去の転生者のことで、おそらく神が需要供給曲線を無視してチートなどを与えた者たちのことだろう。なにせ、このページの注釈には、
『*この者たちは、遠い異国の前世の記憶がある、と言っており、幼いころから魔力操作を行っていた、と主張している者もいた。』(『初級魔術教本Ⅰ』より抜粋)
と書かれているためである。
この文を読んだ俺は、8~10歳まで魔術に関しては何もできないのか…と落ち込んだものである。だが、この『初級魔術教本Ⅰ』には幼少期での訓練法も載っていた。曰く、魔素に触れることだそうで、その方法には外で遊ぶ、または自然の中で深呼吸をするなどの方法が書かれていた。この方法により魔素と身体の親和性が高まり、早くから魔術の訓練ができる、ということである(研究がなされていた模様)。
であるために、時間があれば庭に出て遊び、そして母親にねだって裏山の散歩に行ったりしていた。
ちなみに兄のルカリオは指先に小さな火をつけることができるようになっている。
これは習得スピードとしてはかなり速い部類らしい。
この魔術は一般的に初等魔術、または生活魔術と言われているもので、ほとんどの人々が使用できるものであり『着火』という魔術らしい。利用方法は、チャッカマンのようなものである。喫煙や街灯などの点火に使われるとのこと。
本当にどこかで見たことのあるような世界である。
話が脱線してしまったが、魔術はまだ使えないため、他のことをやらなければならない。
そう、格闘術だ。父にお願いして格闘術を習おうとしたのだが…
『…できない。』
『え…どうしてですか?』
『まず、まだ2歳だからだ。一般的に幼い時に過度な運動をしすぎると成長に障害が起きると言われている。少なくとも5歳……からならいいと思うけどな。だから今は適度にいつも通り外を駆け回るとかするべきで、専門的な運動は避けるべきだろうと思っているからだ。次に、教えたいのはやまやまなんだが俺は城にいたり、任務として家を離れることが多いから、時間が取れないんだ…すまない。』
『…そうですか。』
という具合になり、教わることができないという状況になった。
う~ん…参ったよねこれは…。世の中、予定通りには進まないようだ。ただ、過度な運動で成長に障害が起きるというのは、あり得る話なので押し通すことができなかった。
となれば、読書による知識の集積を行うしかないわけだ。
書庫への立ち入りの許可は得たので、母による兄ルカリオへの魔術の個人レッスンの間などは外に出してはくれないので、その間は書庫に籠って本を読むのが日課になっている。
本日は魔術の本『魔術大全』を読んでいる。この本や今まで読んだ本によれば、魔術師は体外(外界)の大気中に含まれる魔素を体内(内界)に取り込む。取り込んだのが魔力と呼ばれ、このエネルギーを属性(風・火・水・土・光・闇など)に変化または影響を与え魔術とするらしい。ただ、魔術を発動するには詠唱が原則必須のようで、威力が大きければ大きいほど大抵の魔術師は長い詠唱を唱えなければならないと書かれていた。鍛錬によってその詠唱を一部省略していき短くすることが可能とも書いてある。
ちなみに、過去の転生者(『初等魔術教本Ⅰ』にある『特別な者』のこと)は無詠唱で強力な魔術が使えたようである。これも需要供給曲線ガン無視のチートによるものなのだろう。現在では研究によって初級の魔術までは無詠唱で発動する者もいるようではあるが。神様…なんでも無詠唱は流石にやりすぎだろ。
一つ救いなのは鍛錬によって強くなれる、ということだろうか…
詠唱もこの本に一応記載はされている。例えばルカリオの使用できる『着火』は、
『火の精霊よ 種を起こし 薪にくべよ』
が基本的な詠唱らしい。魔術を生業にしていない人々はほとんどの場合この詠唱を使っている。しかし、魔術師などの魔術で生活している者たちや魔術が得意な人間は、基本の詠唱から自分に合ったように改変することがあり、場合によっては初級魔術ならば無詠唱で行う者もいる。母のメイリンは無詠唱である。
(例として挙げるならば、魔力の消費を軽減する、戦闘用魔術の詠唱を偽装するなどである。)
これだけ魔術には恩恵があるにもかかわらず、騎士団や銃士隊などが存在するのは、実践レベルの魔術師の不足、詠唱時間、そして、過去の転生者が銃や大砲の開発、性能を高めたことで近接以上の距離での戦闘が魔術以外でも行われるようになったことが関係しているようだ。
とはいえ、魔術も十分に戦闘では活躍するようではあるが。
う~ん……本当に神は何をやっているのだろうか?
一気にパワーバランスを崩しすぎな気がするな…。
戦力面で言えば、中世ヨーロッパ風、いわばナ―ロッパと現代を無理やり混ぜた感じではないだろうか。
ちなみに、格闘術も魔術も練習できないため、銃があるならと銃撃を練習しようと思ったが、もちろん親に危険だと止められました。
……当たり前だよね。
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