第5話 マスクを下げられたら修羅場が発生した件
数日後 幾ら考えても答えがでなかった真白は夏日に言われたように[マスク・眼鏡・かっちり三つ編み・猫背]で目立たぬように入学式に臨み、誰に絡まれることもなく平穏に一日を過ごした。
[マスク・眼鏡・かっちり三つ編み・猫背]すごい!誰も寄ってこない!
真白は喜んだ。
端から見るとコミュ症の不審者で関わってはいけない人にしか見えないのだが、真白的には不必要に絡まれないことは普通の人になれている感じだった。
しかし、困ったことは早速発生した。昼休みである。公立なので給食はなくお弁当なのだが、一緒に食べる人がいない。
中学時代は給食なので強制的に机を並べて食べていたが、高校は自由に仲間と食べる方式だ。
そもそも目立たぬようにしていた為、隣席の生徒とも一言も話していない。。
周りは中学からの同級生同士やら、高校生活楽しむぞ!と意気込むパリピと陽キャだらけ。昨日今日出会ったばかりなのにドカンドカンと盛り上がっている。
別に一人でお弁当を食べるのも悪くはないのだが、みじめさが半端ない。中学時代お弁当イベントの時は1週間くらい前からファンの男の子たちが一緒に食べようと誘ってくれたのになぁ。あの時はなんとも思わなかったけど、今となっては有難いことだった。としみじみ回想ににふけっていたら、急に声をかけられた。パリピ・陽キャの中心にいた男だ。
「ねえ マスク暑くない?眼鏡も曇ってるよ。」
そう言うや否や真白のマスクをペロっと下げて、眼鏡も外してきた。
「あっ」
いきなりの武装解除に驚きつつも、暑さと息苦しさから解放された喜びが勝った真白は素直に感謝を口にする。
「ありがとう、かなり暑かった。」
席に座っている真白を見下ろす男が、真白の顔に驚いたように視線を這わす。
「君!すごいきれいだね」
まずい!この感じは一目ぼれされてる。男の瞳にピンクのハートマークがみえそうだった。
真白はあわててマスクと眼鏡を装着しなおした。
「私は花粉症で視力が悪いのだ。」
「外しなよ、すっげえキレイなのにもったいないよ。マスクしながらじゃご飯たべられないしね。」
ニコッと笑ってマスクを下げようとしてくる。
「いや、大丈夫だから」
「大丈夫じゃないよ」
そんなやりとりをしている二人にクラスメートの女子達が近づいて来た。
「旬はホント優しいよね。そんな地味な子に無駄にかまっちゃうと勘違いされちゃうよ」
「そんなのほっといて早くこっちでご飯食べよ」
蔑み感半端ない感じ真白を睨みつける。真白は居心地の悪さを感じ、ランチボックスを持って席を立とうした。
「君もみんなで一緒に食べようよ。ねっ。」
と男はニコニコと呼び止める。
「嫌よ!仲間で食べるのよ!誰よこの子!」
「今時 三つ編みなんてキモイ!スカートも長いしダサすぎなんだよ。おしゃれも出来ない子なんかと仲間になんかなれない。」
「マスクしてれば話さなくてもいいと思っているコミュ障だろ。」
昨日今日会ったばかりなのに、そこまで言える彼女達に軽い恐怖を覚える真白はマスクを下げて来た男の顔を見た。
優しい顔立ちをしたイケメンだった。彼女達は彼のことが好きなのだと理解した。だから必死なんだと。
「仲間同士でどうぞ。」
男にそう言って教室の外に出ようとした真白に男がまた追いかけて来た。
「ちよっと待って!俺も行く!」
女の子達が男の腕を掴む。
「旬!その子なんか変なんだけど!旬はおしゃれな可愛い子が好きなんでしょ。慈善事業でもしたいの?」
「旬がブス好きとは思わなかった。幻滅。」
プチ修羅場が始まった。
「ブスはお前らだろ!うるせーぞ!自分イケてると思ってるのか?今時の恰好真似してるだけじゃねーか!」
男の優しい顔が嫌悪にあふれた。
「旬・・・あたし達の事そんな風に思ってたのヒドイ!」
男の言葉で一瞬しょぼんとした女たちは一転真白に憎悪を向け始めた。
「このブスのせいで高校生活が台無しよ!」
「早く出て行きなさいよ!」
酷いことを言ったのは男なのに、怒りの矛先が真白に向かった。
なぜこうなるのか。真白は荒れ狂った女たちに掴みかかられそうになる。
その時、ほぼ一斉に声が上がった。
「真白さんっ!」
「ちょっと止めろよ!」
「真白っ!」
「なにしているんだ!」
マスクを下げられただけで修羅場が起き、4人の男に守られる展開になった。
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