第4話 やっとヒロインが出て来たヨ 真白さん
佐藤真白 高校1年生 3歳にして太いタニマチが付くほどの美貌を持っている。
中学時代は校内に私設ファンクラブがあり、学校の前には出待ちの他校生がおり、あたりまえのようにストーカーもいた。
彼女は超インドア派であり、他人と仲良くなるには時間がかかるタイプだった。
美人は心を開かないタイプでもかなりモテる。
ブスだと暗い・キモイと言われるところ美人だとミステリアスでステキ!になってしまう。
何もせずとも好意を持たれるのはうれしいことだが、彼女は芸能界を目指している分けでもない。
不特定多数にモテるのは疲れる。ひっそりと普通に暮らしたい。
そんな理由で高校を機に彼女は上級国民が住む世和田区から貧民溢れる足軽区へ引っ越してきたのだった。
偏差値46の近隣住民が通う足軽西高校に推薦で合格し、高校近くのマンションに一家で引っ越してきたのが3月末。
一切外に出ないで快適に過ごしてきたのだが、高校が始まり外に出ざるをえなくなった。
「はっきり拒絶しないから絡まれるんだよ。」
真白の弟夏日は不機嫌そうに言う。
二つ下の弟夏日もまた、姉と同じ美貌を持っているが嫌いなものは嫌いとはっきり言うタイプだ。
「ふつーに毎日トイレ行ってます。とか幻滅させること言えばいいんだよ。あいつらオレたちの事人間だとおもってないんだから。生々しい人間感出すと引いてくよ。」
「そりゃあ・・まあ毎日行くけど、私にも羞恥心が。」
真白が頭を抱える。
「だったら、顔隠して生きるしかないよ。マスクと眼鏡して学校行けよ。髪は三つ編みでな。猫背にして。私、真面目で大人しいですって感じでさ。足軽区はパリピ・陽気キャが幅を利かせているみたいだから真面目ちゃんは陰キャ扱いで、ゴミみたいになるけどさ。」
「ゴミ・・・。普通がいいんだが。」
真白がしょんぼり言う。
「ねーちゃんの普通って何?」
「女の子の群れに入って、毎日楽しく、悩みとか恋とか未来とか語っちゃったりする感じだ。」
はあ~と馬鹿じゃねぇと溜息をつく夏日。
「群れてる女なんて人の悪口しか言ってねぇぞ。本当バカだな。中学の時散々女子に嫌がらせ受けてただろ。学習しろよ。」
「善良な女子の群れもあるかも・・・」
「ねぇな!」
夏日の断言に口を尖らせる真白。
「群れに入れてもらおうとする考えが間違っている。まずは一人でも普通に話せる人を作れば?ねえちゃんは、綺麗なだけで中身は陰キャよりの一般人だから、落ち着いた穏やかな関係を築きたい人を見つけて友達になったほうがいい。そもそも明るくはじけるタイプじゃないじゃん。」
自身の追い求める「理想」と「現実」に深い溝があることはままある。
「理想」に近づく為には「努力」が必要な場合が多い。真白の「女の子の群れに入りたい」という希望は簡単そうだが、そうでもない。「群れ」に入るには群れのカラーに合わせなければならない。同じノリ・似た感性・可も不可もない容姿。同調しなくてはいけない。真白はまず美人過ぎるので群れに入った時点で女の子達の劣等感を刺激するだろう。後は性格がノリが悪い。テレビもネットも見ることは見ているが同年代が見ているものと違う。会話についていけない。
真白が群れに入るには、同じような容姿になって同年代が好むものをかなり勉強しなくてはいけない。
無理して不毛な努力をするより、ありのまま自分を受け入れてくれる人と楽しくいきた方がいい。
「無理すると疲れるよ」
真白は年下夏日の説教をされる屈辱を感じながら、「理想」を叶えられる方法はないかと思遠を巡らせていた。
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