第3話 コンビニ店長の記憶 二階堂君③

 何やら黒い艶々したものが店に入ってきた。

 僕の目は釘付けになる。

 白い肌・赤い唇・そして長い艶めいた黒髪。

 男とも女ともつかぬ中性的な顔立ちが謎めいて神々しい。

 こんな綺麗な人はみたことがない。


 女にがっちり絡まれている二階堂君に近づき女神は尋ねた。


 「こんばんわ。二階堂紳一郎君、えっ・・と?接客中?」

 「いっ・・いえ違います!絡まれているんですっ」

 「・・・・。」

 女神は絡んでいる女に目線を合わせた。

 「離してもらえないだろうか。」

 女神は良く見れば長身の為、絡んでいる女にやや屈んでお願いした。

 女の顔がみるみる赤らみ叫んだ。

 「あなた!女なの!なんて綺麗なの!男だったら!理想の長髪イケメンなのにっ」

 「きれいきれいきれいっ!女でもいいからアタシと付き合って!」

 なんと女は二階堂君を突き飛ばし女神に猛烈な求愛を始めた。

 女神は困惑気味に微笑んだ。

 「付き合う?ことはできないけど、一緒に買い物はいいよ。」

 「やったぁ!」

 女は女神と腕を組んで買い物し、上機嫌で店を後にした。

 何?この展開。

 いやいやいや女神の口調が何か男。固い。

 髪が長いから女の子と思う僕がおかしいのか?実は男なのか?

 女神の胸部をこっそり見ると明らかに腫れあがっている。

 

 「二階堂の兄貴。一つ貸しなっ!」

 ひょこっと現れた女神弟が二階堂君にウィンクする。

 「また学校で。」

 いい仕事をした風の女神が余裕気に話しかけた。

 

 「はい、 真白さん。また明日。」

 

 その後二階堂君は激しく落ち込んでいて苦しそうだった。

 「すごく綺麗な人でしたね。」

 「はい。」

 「来てくれて良かったじゃない。」

 「はい。」

 「同じ学校なの?」

 「はい。」

 「仲良さそうだね。」

 「はい。」

  何を話しかけても二階堂君は「はい」しか言わなくなった。

  そして最後に

 「俺、死にたい。今日死ぬかも。」

 と呟いて今日のバイトを終了した。

 二階堂君が心配だ。

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