王都奪還作戦、会議


 ここに来てから2週間が経った。


 2週間の間にあったことをざっくりと話そうと思う。


 まずは【縮小】についてだ。ある日、ふと体が軽くなったなら飛べるくね?と思って試したみたが……。

 なんと飛べたぜ!!

 まぁ、手乗りサイズであることと、羽だけは大きめにしなくちゃいけないということ。元のサイズで歩いた方が何倍も速いと言うことを除けば文句なしで素晴らしかった。

 空中を自在に移動できるって最高だな!!

 早く元のサイズでも飛べるようになって、全力で空を飛びたい。これ、のろのろとしか飛ばないから。


 次に魔力の問題。これは常に全力で戦う必要はないからその場にあった強化をすればいいだろうということで落ち着いた。まぁ、考えればすぐに思い至ったから正直数分ももかからなかっただろうが。

 

 他にはより魔力をスムーズに圧縮したり、より圧縮する訓練をした。

 より圧縮するのは厳しかったが、スムーズさにおいては今では息をするように簡単にできる。

 そうこうして一人で訓練していると、


「模擬戦でもやろうぜ」


 とレオルガと模擬戦をすることになった。


 結果から言うと……まぁ、負けた。


 模擬戦をしている場所がここだからお互いに全力ではないが、全力で戦っても勝つことは難しいだろう。


『勝てないか……』

「いやいや、お前まだ属性幼竜だろ?俺がここまで苦戦してる時点でおかしいわ。俺、これでもXランクだぞ」


 とのことらしい。

 すっかり自分の上にまだ二つランクがあることを忘れていた。上には上がいると言うことか。


「この調子だったら属性竜に進化したら竜王手前レベルには強くなってるかもしれねぇなぁ……」

『竜王ってお前とどれくらい差があるんだ?』

「俺じゃまず勝てねぇよ。少なくとも今のお前と俺以上の差がある」

『じゃあ進化すればお前に勝てるほど強くなれるのか』

「お前……すげぇニヤニヤしてるぞ……戦闘狂が」

 

 訓練したり、自分より強いレオルガと模擬戦したりして俺って戦闘狂だな自分でも思った。

 戦いになるとここまで気持ちが昂るとは。


『それにしても人間最高ランクのお前でも竜王には勝てないのか。俺が言うのもなんだがドラゴンってバケモンだな』

「お前はそのバケモンの中でもさらにバケモンだけどな」

『そうか?』

「照れんなよ……褒めてねぇ。まぁ、今の時点でその強さだ……お前が竜王になるころには今いる竜王の誰よりも強くなってそうだ」

『俺、竜王になれると思うか?』

「当たり前だろ。電撃竜……だっけか?が、お前一体しかいない上にその強さだ。このままいけば嫌でも竜王にならぁ」


 これぞ俺はまだあと変身を二回も残している……と言うやつだな。身体強化から武式強化まで含めるとそれ以上か?

 あのキャラがこのセリフを言った時はあまりにもの強さに絶望感のすごいセリフだったが、今世では俺が言う側に回れるのか……。


「またニヤニヤしてらぁ……」


 また、ハルティスたちにもついて街にも行った。

 

 手乗りサイズになることに成功しても単独行動は目立つからハルティスの荷物や服のフードの中に入っての付き添いだったが。

 これも順調で出向いた冒険者ギルド支部ほぼ全ての協力を得ることができた。冒険者ギルドの他にもそれぞれの領地にいて洗脳されておらず、ハルティスが信頼できふという貴族も協力してくれるそうだ。

 そりゃ自分の国や王が危機にあるんだから協力するたろうとは思うが。


「レオルガ、カルディアくん。今日は王都奪還作戦の各協力者の代表を集めての会議だよ。準備はいいかい」


 王都奪還作戦はこの計画を進めているうちにそう呼ぶようになった。名前がなかったらいちいちめんどくさいしな。


「俺はできてる」

『俺も大丈夫だ』

「よし、それじゃあ行こうか」


 向かうのは今回の作戦に置いて王族であるハルティスの次に権力の高い公爵の爵位を持つ“タガセル・アルベージ”の治めているアルベージ領だ。

 俺はハルティスのローブのフードの中に入っての移動だからあんまり移動してるって実感はないが。


「アルベージ家は王国の中で最も古い家でね。代々王族に仕えていて僕たち王族が一番信頼している家でもある」


 建国した時から王族とともにあり、現在までずっと王族を支えてくれた家なのだそうだ。

 俺も協力依頼の時にここに一回来てタガセルってやつには会っているが……。


『あのタガセルってやつ、少々忠誠心が高すぎないか?』

「ははは……。アルベージ家は代々そうらしくてね……。いや、王族としては嬉しんだけど」


 信仰対象のような……いや、一番近いのは好きなアイドルを見るような感じか?


「アイネも無事だといいんだけど……」

『アイネ?』

「タガセルの孫で僕の……その、婚約者だ」


 なんだい、野郎が顔を赤くしてもじもじしやがって。


『ほうほう……お前さんはその女とどこまで?』

「……アイネのためにも作戦は頑張らなくちゃね!」

『あ、誤魔化した』


 すこしおちょくってやろうと思ったのに。


「さぁ、ついたよ」


 俺もリスアを助けるために頑張らないとな。






++++++++++++++++++++++





 アルベージ家の屋敷にある大広間に冒険者ギルドの代表のギルドマスター三人とアルベージ家合わせての貴族が机を挟んで向かい合っていた。


「今日は集まってくれて感謝する。僕はアレストール王国第一王子ハルティス・アレストールだ。今日はよろしく」


 ハルティスに並んでそれぞれが軽い自己紹介を交えた挨拶をしていく。

 最後の一人が終わったな。


 ちょいちょい


『ん?』

「『ん?』じゃないよ。カルディアも挨拶するんだよ」

『なるほど』


 協力依頼に向かった時は相手を混乱させないようにということで俺のことは伏せていたが、さすがに作戦を話す場では俺の紹介も必要か。

 よし、第一印象が大事だからな。気合を入れていこう。


 ハルティスのフードから勢いよく飛び出し、空中に止まる。その状態で電気を纏って大きな声で。


『電撃幼竜のカルディアだ!よろしくぅ!』


 見た目のインパクトも強い上になるべく親しみやすく挨拶してみた。

 すこし間を開けてからハルティスの肩に乗り、人間とも仲良しアピール。完璧だ……。


「カルディアくん、それは親しみやすいというよりチャラいだけじゃないかな……」


 なに?前世の陽なるキャラたちを真似してみたが、ダメだったか?

 こいつらのリアクションは……。


「「「「「……………」」」」」


 唖然としてらっしゃる。


「そりゃいきなり魔物のドラゴンが王族のフードから現れた上に手乗りサイズで、しかも陽気に挨拶までしてくるんだ。びっくりするさ……」


 まぁ、確かに。


「そ、そのドラゴンは危険ではないのですか?」


 タガセルが心配そうにハルティスに尋ねた。


「大丈夫だよ。彼は言葉も理解しているし、カーナの侵攻も人間に協力してくれた。2週間ほど僕も行動を共にしてるけど、彼は信頼できるさ」

「うむ、ハルティス殿下がそう言うのであれば問題ないでしょう」


 納得しちゃったよこのじいさん。本当に王族第一主義だな。

 

「「「「「………うむ」」」」」


 この場で権力がずば抜けて高い二人がこう言ってるもんだから他のやつらもうなずかざるを得なくなってるじゃねぇか。


「あんまりゆっくりてしている暇もないからね。さっそく本題に入ろう」


 ハルティスが仕切る形で作戦会議は進んでいく。

 王都の現状についてだとか、冒険者、貴族の私兵を含めた戦力の確認だとか、武器や食糧、経費云々だとか。


 王都は俺が聞いた状況と変わりないし他の話は聞いてもわからん。ハルティスに任せよう。


「そして作戦内容について」


 あ、ハルティスからここからは聞けよという視線が飛んできた。


「王都はさっきも言ったとうり、この2週間変化はない。だけど、問題はその周りを囲む魔物たちだ。日が経つにつれて徐々に多くなっている」

「それはどのくらいの数でしょうか」

「細かくはわからないけど、八万ぐらいはいるんじゃないかな」

「「「「「は、八万……」」」」」


 八万かぁ……めちゃくちゃ増えたな!?

 俺たち陣営の戦力がどれぐらいかわからんが大丈夫か?


「この作戦の最大目標は王都の奪還だ。だから最優先は今回の黒幕であろう“グロウンド・ベルナード”の捕縛、もしくは殺害。そして、悪魔の洗脳を解かせることだ」


 机の上にある王都を書いた地図の上にホログラムのような二つの駒が現れた。

 これは〈ウォーゲーム〉という、魔法の込められた地図の魔法具を使ったものらしい。


「しかし、王都に住む民たちも守らなければいけないからそればっかりに気を取られているわけにもいかない。だから、今回は三手に分かれる」


 王都の周りに赤い駒が現れ、王都の中に緑の駒が現れる。


「怪しまれないように少しずつ王都に侵入し、魔物を内側から迎え撃ち、王都を守る部隊。防衛部隊と呼称しようか。この指揮はタガセルに頼むよ」

「御意に」

「防衛部隊は戦力の高い冒険者や騎士たちで編成する。魔物と戦いつつ、民を守るこの作戦になくてはならない陣営だからね」


 「次に……」とハルティスが地図に手をかざすと赤い駒を囲むようにして緑の駒が現れた。

 

「外側から魔物に攻撃をしかけ、魔物の殲滅を第一としたグループだ。攻撃部隊と呼称しようか。指揮は防衛部隊と比べて大軍になるだろうから、各ギルドマスターと貴族たちで分担してとってくれ」


 「そして最後に……」と王都の中に三つの青い駒が出現する。


「グラウンド、悪魔の討伐を行う部隊。今回の作戦での最高戦力であるカルディアくんとレオルガ。そしてそれを指揮する僕とで編成する部隊だ。奪還部隊と呼称しよう」


 黒幕とデビル野郎は三人だけで相手するのか。まぁ、戦力的にもいろいろとハルティスに考えがあるんだろう。頭を使うのは指揮するやつらに任せればいいか。

 

「今回の作戦会議で話し合わなければいけないとこは以上だ。なにか質問のある者はいるかい?」

「「「「「………」」」」」

「……ないようだね。では各部隊を指揮する者だけ残ってあとは解散してもらって構わない。お疲れ様」


 指揮する者を除いてそれぞれが挨拶をして部屋を出て行く。忙しそうにしているから作戦の準備でもさっそくするのだほうか。うーんら俺はどうしようか。


「カルディア、帰るぞ」

『ん?ハルティスは残るのに帰っていいのか?』

「こいつらはこっからさらに作戦について……具体的には部隊の編成や運用についての詳細な会議をするだよ。俺もお前も頭を使うタイプじゃないだろ?じゃあ、ここに居ても退屈なだけだ。帰って訓練でもしようぜ」


 それもそうか。よし、帰ろう。


 正直最後の方しか頭に入ってないがハルティスの指示に従っていれば大丈夫だろう。俺は戦いに集中すればいい。

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