手乗りドラゴン
ハルティスたちの隠れ家にきた翌日。
この洞窟は普通の生活にも支障のないように改造されていた。まぁ、俺の体は三メートルほどで人間用のものは使えないんだけどな。
昨日は洞窟にある、普段はレオルガが訓練場として使っているという場所で寝た。
さすがはXランクが訓練に使う場所で広さも申し分なし。綺麗に整地もされていて、ある程度の衝撃に耐えられるよう結界も張ってある。
ここにいる間はここを自由に使っていいと言われた。
カーナの森の寝床より寝心地もいいし、魔法の検証もできる!
最高の環境だ。
だが、住み始めた初日に与えられた場所に籠るのもどうかと思い昨日ハルティスたちと話していたリビング的な場所に顔をだして3人で朝食を取っていた。
『飯まで世話になって悪いな』
「いいよ。それに、狩ってきたものを軽く調理しただけのものだしね」
『俺にとっては調理したものなだけでご馳走なんだよ。普段は生か魔法で焼くぐらいだしな……。あ、リスアもこんな感じだったが……大丈夫か?』
昨日リスアが王族だったと聞いて心配になった。
普段お姫様が焼いただけの肉にかじりついているわけないだろ?
「大丈夫だよ。リスアは強い子だからね。それにこんなことで文句をいう子でもないさ」
『それはよかった』
これからはちゃんと調理してあげるべきか?
……ってこの問題が解決したらもう“一緒”に暮らすこともないのか。
「カルディアくんはいつからカーナの森に?」
『いつぐらいだっけか?もうすぐ二ヶ月か?そんぐらいにあそこで生まれた。それからだな』
「え?まだ生後二ヶ月なのかい?ドラゴンってほんと不思議だね」
俺もそう思う。
「親や兄弟はいないのかい?」
『ん?どうだろうな?会ったことないからわからないな。俺がいるんだから親は間違いなくいるんだろうけど』
「え?カルディアくんは親に育てられたわけしゃないのに属性竜に?……不思議なのは君だね」
『ん?どういうことだ?』
「属性竜の親って僕の知る限りではからなず属性竜なんだよ。ドラゴンは幼竜のときの過ごし方で成長のしかたが変わるのは知っているかな?」
『ああ』
「属性竜になるには幼竜のころに少しでも魔法を使えないといけないんだけど、幼竜1匹じゃ知性もないからまず無理なんだ。だけど、親が属性竜なら人間風に言うと英才教育を受けれるんだよ。属性竜になるためのね」
『なるほどな。それなしで属性竜になれた俺はすごい!って言うわけだ』
「そういうこと。まぁ、いつか家族に会えるといいね」
俺は転生したからか卵から出れるようになった時点で知性があったからな。
……うむ、ひと段落ついたら家族を探してみるのもいいかもしれない。
カーナの森の近くにドラゴンの死体もなかったし、どこかで生きている可能性がある。
こうしたたわいない話をしながら朝食を食べていた。
「そういえばレオルガ。今日は冒険者ギルドのほうに協力してくれるよう話に行こうと思うんだけど、ついてきてくれないかい?」
「おう!そんぐらいおやすい御用だ」
「まずはカーナの街のギルドかな。実際に悪魔の侵攻の被害にあっているし、あそこのギルドマスターは話がわかる人だからね」
カルナの街のギルドに行くのか。
そういえばテイルやメルテーナたちは大丈夫だろうかね?侵攻のあとはすぐにここに来たから会う機会もなかったしな。あ、そうだ。
『それ、俺もついて行っていいか?話したいやつもいるしな』
「あー………」
『? だめか?』
「正直に言うとね。君はドラゴンだし、体も大きいから目立っちゃうんだ。昨日はその悪魔にも会ったんだろう?目をつけられていないとも限らないし……」
こ、こんなことろでドラゴンの弊害が……。
『……わかった。今日は大人しくここにいる』
「ははは。そうしてくれ」
くそう。この憎めない笑顔は……イケメンめ。
「カルディアくんが【人化】を使えたらよかったんだけどね」
『【人化】?そんなのがあるのか』
「うん。属性竜以上のドラゴンはだいたい使えるよ。人間の形に姿を変える魔法……?のようなものだね」
『スキルじゃないのか』
「スキル?なんだい、それは」
『ん?スキルだよ。ステータスに書いてあるだろ?』
「すてーたす?初めて聞いたよ」
なに?ステータスはこの世界にはない概念なのか?じゃあ俺に見えているのは……転生特典みたいな?
ここで俺がうんぬん考えても可能性の域をでないな。まぁ、俺の転生についてはカミイルに聞いたらわかるだろ。何か知ってそうだったし、神だし。
『まぁ、ステータスについては忘れてくれ。……それで、人化ってどうするんだ?』
「うーん……人化したドラゴンに会ったことはあるけど聞いたことなかったな。ごめんね」
『いや、人間のお前が人化の方法をわざわざ聞く必要もないしな。自分で探ってみる』
「うん。カルディアくんが人化してついてきてくれるなら僕たちも心強いよ」
ここでまたイケメンスマイル。
くそ、なんて破壊力のある笑顔だ。こいつの可愛いよりのでの笑顔は同性の俺でもなんでも許せそうな破壊力だぞ。
「急ぐ必要はないからね。これが終わってからでもゆっくり身につけたらいいさ。そのドラゴンも紹介できるし」
『そうなのか?ぜひ会ってみたいな。どんなドラゴンなんだ?』
「ある国の守護竜をしている竜王だよ」
『おお!それは楽しみだ。学べることも多そうだし、何より強そうだ』
「はは。君はずいぶんと戦闘狂だね』
『戦闘狂?俺が?』
「うん。強そうだって、楽しそうな顔してるよ」
「俺もそう思うぞ。まぁ、ドラゴンはだいたい戦闘狂だがな。逆に嫌いなやつのほうが珍しい」
oh……精神面でも影響があるとは。
たしかに前世では喧嘩もまともにしたことなかったしな。それはもうごくごく普通な高校生でしたとも。
「よし、朝食も食べ終わったし僕達はそろそろ出かけるよ。ここは自由に使ってもらって大丈夫だから留守番よろしくねカルディアくん」
『おう。気をつけてな』
じゃあ、俺は訓練場で検証とか修行とかするかな。
人化とか試してみたいし。
++++++++++++++++++++++
まずは人化を試したみるかな。
検証とか修行を始めたら人化とかどうでもよくなりそうだし。
俺はドラゴンエンジョイ勢だからな。
人化できたとしても基本はドラゴンの姿だろうし。
とりあえずは俺が人の姿をしているところを想像すればいいのか?
うーん……。
ぬーん……。
はいやー……。
うん、しばらく試したみたけど全くできねぇや。
もしかしたら属性竜に進化したときの特典って可能性もあるし、そもそものやり方が間違っている可能性もあるしな。
ハルティスの言っていたみたいにゆっくりでいいか。
でも、この世界の人間の街に興味はあるからハルティスたちについて行ってみたいんだけどなぁ。テイルたちにも挨拶しときたいし。
まぁ、諦め……あ。
いいこと思いついた。
そうして思いついたことを試してみることしばらく。
ついにできた!!
そう心でガッツポーズする俺の姿は——
——二十センチほどのまるで小さなぬいぐるみのような姿になっていた。
これなら目立たないし、大きめの袋に入れて持ち運んでもらえれば街にも入れる!
ふっ……我ながら完璧だ。
これは【縮小】というスキルらしい。
対象を好きな大きさにできるスキルだそうだ。普通は武器なんかに使うんだろうけど。
この姿でハルティスたちを出迎えてびっくりさせてやる。グフフ……。
よし!今日はこの姿の検証だな。
++++++++++++++++++++++
これでとりあえずはいいか。
結果から言うと、普通の姿のできることは変わらない。魔法やスキルも普通に使うことができた。
ただ、攻撃のリーチは短くなるし、巨体を活かした攻撃もできなくなる。具体的に言うと、元の三メートルの体で踏みつけられると普通の人間は潰されて死ぬだろうが、この大きさじゃまず踏むこともできない。
それと大きさの調整は自由にできた。
元の三メートルから俺の具体的に想像できる手のひらサイズまで。
元の大きさ以上になるのは無理だし、それ以下は想像力の問題か無理だった。
王都の作戦までまだ時間はあるし、このスキルを戦闘に取り入れることも考えてこの姿での修行もしてみるか。いきなり戦闘相手の大きさが変わると、感覚の狂うだろうし、この大きさでいていきなり大きくなると不意をつける可能性もある。
ふふふ……。戦闘の幅が広がるぜ。
……こういうところが戦闘狂になってるのか?
++++++++++++++++++++++
「ただいまー」「帰ったぜー」
『おう、おかえり』
しばらく訓練場でこの姿の修行しているとハルティスたちの魔力が近くまで来ているのが察知できたから、リビング(もうリビングと呼ぶことにする)で待ち構えていた。
「あれ?カルディアくんどこだい?声はこの部屋から聞こえるんだけど」
『ふっ……下を見てみろよ』
「下?……ってええ?!」
『驚いたか?』
「う、うん……それはもう」
これだけてもこれを身につけた甲斐があったな。
「本当に……君は不思議だね……」
『だろ?まぁ、これでついていけるだろ』
「うん、問題ないよ。次からはカルディアくんにも声をかけるよ。よろしくお願いするね」
『おう、任せとけ』
それからはまたたわいのない話をしながら夕食を食べて眠りについた。
俺の体が小さくなったから同じ食卓で食べることもできたしな。まぁ、あいつらは座って俺は机に直接乗って食べていたが。
明日は出かける予定のないそうだからまた訓練場での修行だな。
リスアを助けるためにももっと強くなる必要があるだろうし、魔力もうまく運用できるようにならなければ。
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