王は矜恃で蘇る
初めて同じSランク……同格との戦いだ。
俺はまだ生まれて一年どころか半年も経ってないドラゴンちゃんだ。……なぜ強いんだろうな?さすドラ
もちろん同格どころかまともに強いやつとの戦闘なんて初めてだし、自分の戦闘スタイルすら確立していない。
まだまだ試せていないだけでできることは多いだろうし、正直俺のやっていることは身体能力と魔法のゴリ押しだ。技術なんてものはない。
俺にオークキングの戦闘スタイルも使う魔法も。それどころか役に立つ知識すらないからな。
そんな俺が目の前のSランクに真正面から突っ込んでいくのは危険すぎる。
相手の武器……鉄(?)っぽいもので作られた3メートルほどの持ち手のついた棒。一見大剣みたいだが刃のついているようには見えないから鉄棒と言ったほうがいいだろう。
そんな「僕、超接近戦型です!」感を嫌でも感じさせるやつに近距離戦なんて挑みたくない。
ひとまずは魔法で遠距離から様子を見るか。
〈電剣百華〉
俺の周りに作り出された電撃剣×100がオークキングへと遅いかかる。
電気……目に見えて映るもので例えるなら雷を想像してもらうとわかりやすいだろうが、電気と言うものは音速を超えたスピードを出すことが可能なモノだ。
俺の使う電撃魔法も実際のスピードはわからないが音速程度はあるだろう。それが……
あいつはものすごい速さでこちらに接近しつつも、電撃剣は避け、避けれないものは持っている鉄棒で弾いている。
あいつ速すぎだろ。目で追うのがやっとだぞ。
それにあの鉄棒。振るだけで電撃剣が消し飛ばされている。踏み込んだ箇所は地面がえぐれているし……。避ける動きはアクロバティックすぎてどう動いているのかわからないものもある。
マジでバケモン。
〈電檻〉
進路を塞ぐようにして電気の棒を出現させる。オークキング仕様に普段より1メートルほど長く厚みのある特別製だ。
動きの一瞬止まったオークキングを囲むようにして横、後ろに出現させる。
これで逃げられな……
バゴッ!
チッ。上に飛んで回避したか。
あの技がどう言うものかを見抜いて上への回避。
知能も魔力の感知能力も高そうだ。
だが、さすがにこれは無理だろう?
〈電玉連弾〉
オークキングの全包囲を囲うようにして電撃玉100個を作り出す。電玉連弾にした理由は電撃剣だと体を逸らすだけで簡単に避けられる可能性があった。たとえそれが100本あったとしてもさっきの〈電剣百華〉を凌ぎ切った動きからして空中でも弾きつつ、着地できてもおかしくはない。
ならば直径4メートルで避ける隙間もなく、棒でたやすく弾かれないように魔力を圧縮させた特別製を喰らわせる。
どうしても剣じゃ形や大きさ、想像の難しさの問題で電撃玉ほど魔力を圧縮して放たない。
電撃剣がスピード、斬撃という利点があるのに対し、電撃玉は火力、攻撃の範囲が大きいといった利点がある。
「ガァァァァァァアアッ!!!!」
ゴォッ!
は?おいおいマジかよ。あいつ体の捻りだけで空中で回転して全包囲の電撃玉を消し飛ばしやかだった。
それでも……
『さすがに無傷とはいかないようだなァ?豚野郎』
「ガァァ……!」
威力が足りなくて消し飛ばせなかったもの、あいつの回転攻撃を免れたやつをまともにくらって所々黒くなっていて、直撃を防ぐために体を丸めて盾にしたであろう左腕と背中の一部が骨まで見えている箇所がある。
俺の有利に進んでいるように見えるが……
「ガァァア!!」
バゴッ!
なっ……やっぱ目の前で見るのと遠目で見るのとでは感じる速さが違うな……!
地面を蹴り、一瞬にして俺との距離を詰めてくるオークキング。気づいたときにはもうすでに右手にある鉄棒を上段に構えていた。
身体強化をして纏いで多少の電気の壁を作った腕で防いだが……。
バキャッ!
あっけなく吹き飛ばされる。
おいおい大丈夫か!?俺の腕、今すごい音したぞ!?
「ガァァァァァ!」
受け止めきれないことはわかりきっていたから受け身をとって着地するが……目の前にはオークキングが。
……5メートルは吹き飛ばされたようだけどなぁ。それを一瞬で詰めるか。
「ガァァア!!」
「グラァァ!!」
それでも2度も同じようにはやられん!
同じように強化した右腕。その掌に小さな……それでいて先ほどとは比べものにならないほど高密度な電撃玉を作り出す。
オークキングの鉄棒と俺の電撃玉がぶつかる。
「ガァァ!?」
はっ。まさか自分が吹き飛ばされるとは思わなかったのだろう。
オークキングは僅かに困惑していた。
こいつもオークキングとなってから自分と“同格と呼べるようなやつと戦ったことがなかった”のかも知れないな。しかしそれが大きな隙となっている。
【電衣】
腕に電気を纏わせる【纏い・電気】
この纏われている電気。その魔力を圧縮。圧縮して圧縮して圧縮して圧縮して……。
腕を覆うガントレットのように纏わせる。
それは超高密度の電気によって、擬似物質とまで呼べるものに昇華された。
この前、【念話】を習得したときに魔力……それが【電撃魔法】として放たれるさいになんの性質もない言うならば“無属性魔力”が“属性魔力”に変換されているのに気付いた。
気になってあれこれ検証してみると魔法を放つ際、例えば電撃剣では
魔法の想像→体内の無属性魔力の確保→属性魔力へ変換→属性魔力による魔法という“現象”を作り出す→発射
と言った過程を辿っていた。
さっきからやっている電撃玉などの魔力の圧縮や特別製。これもより無属性魔力を確保し、さらに巨大化、圧縮などの過程を想像することで実現させている。まぁ、簡単に言えばより魔力を使えばもっと強い魔法が使えるよ!ってことだ。
そして新しく作った魔法【電衣】
【電撃魔法】などの魔法を“現象”として作り出す過程とは違い、【身体強化】や【纏い・電気】などは直接体に働きかける魔法。
魔法の想像→無属性魔力を確保→属性魔力へ変換→強化
となるわけだ。
消費魔力量が少ないのは魔法として実現させるまでのプロセスが少ないからなのかもしれない。
“魔法の改造”という技術においてこの仕組みを理解するのは必須だったようで。
おぼろげに魔力を使うぞ〜っていう想像ではなく過程まで想像する必要があったみたいだ。
使うだけならサクっといけたんだけどな。
結局何が言いたかったのかと言うと、“魔法の改造”……これによって現存の魔法をさらに強化や凡庸性を高めることができるようになった。
そして、体に直接影響を及ぼす“強化系”とでも言う魔法。それは魔力消費量が少なくその分圧縮へと魔力が回せ、それでいて慣れると己の体に使うのだから想像も他と比べて容易で維持もたやすい。
剣の形をした電撃。〈電撃剣〉とは違い……。
“擬似物質”なんぞを作れるようになるほどに。
電撃玉の圧縮による威力と強度の強化。
これは直接体に作用するから負担が大きくて使わなかったが……。
さっきの電撃玉で“圧縮”がオークキングに通用することがわかった。
見る限りはさらに手があるようにも思えない。
おそらくオークキングは【身体強化】による強化。それのゴリ押し。“たかが”その程度。
ならばーーー
両手に【電衣】により作られた“擬似物質”のガントレットを纏い、オークキングをも上回る速度で接近する。
俺の拳を受けてオークキングが吹き飛ぶ。
魔力の圧縮による、さらなる【身体強化】
それによって生み出された「纏い・電気】による高密度の電気のガントレット。圧倒的な身体能力に先程の電撃玉の上をいく強度に威力を纏った俺の拳。
ーーー俺の方が上を行く
バチィィィィイッ!!!
ガントレットから起こる放電。
強化された腕による攻撃。
それはたやすくオークキングを吹き飛ばした。
すんでのところでギリギリ反応したのだろう。しかし俺よりもさらに大きく10メートル吹っ飛ばされたオークキング。その左腕は跡形もなく消し飛ばされていた。
「ガ……ア……ァァァ……」
このまま押し切る!
一瞬で距離を詰めとどめを刺さんと拳を繰り出す。
オークキングも必死で抵抗し、抗おうとしているようだが……、全て無駄だ。
気づけばオークキングは防御に使っていた四肢が全て無くなり、地面に無様に転がることしたできなくなっていた。
『ここまでだ。お前も強かった。だがこれが差”だ。まだ戦場で仲間が戦っているからな。お前に構っている暇はやいじゃあな』
そしてこの何気ない一言が。
負けたという現実が。
なす術もなく見下ろされている現状が。
オークキングを…….
……“黒く”染め上げた。
「ナン……ダト……?“サ”、ダト……?」
「オレ二……オレ二、カマッテイルヒマハナイダト……?」
「ミクダシテ……!」
ブォッ!
瞬間、オークキングから魔力が溢れ出た。
それも見えないはずの魔力が……。
「グルァア?」
なんだこれは……?
「オレ…ハ、オークヲ……スベル、チョウテン……オウナノダ……!コノオレガハイボクスルナドアリエナイ……!ソウダロ?オレガハイボクスルナド……………アリエナイ……。アリエナイアリエナイアリエナイアリエナイアリエナイアリエナイアリエナイアリエナイアリエナイアリエナイアリエナイアリエナイアリエナイアリエナイアリエナイアリエナイアリエナイアリエナイアリエナイアリエナイアリエナイアリエナイアリエナイアリエナイアリエナイアリエナイアリエナイアリエナイアリエナイアリエナイアリエナイアリエナイーー」
なんだっ………これ!
この溢れ出た魔力……“可視化”されるほどの量と密度……。“圧縮”か!?
それにこの塗り潰されていっているような真っ黒な。ドス黒い、悪意や狂気を感じるこの魔力は……!?
「ーーマチガッテイル」
溢れ出た魔力が一気にオークキングへと収束している?
これはやばい。まるで嵐だ……!
魔力の収束が終わる……。
そこには……
あまりにも圧縮された魔力が体に収まりきれずに漏れ出し、それによってひび割れた地面の上に立つ……
先程のとは比べものにならないふざけた量の魔力と威圧……そして圧倒的な実力。
見る者に絶望と恐怖を与える、狂気を振りまく王がそこにいた。
マジでバケモンだろ……!
これ……さ。帰っちゃ……ダメ?
《特殊進化条件を満たしました》
《暴虐ノ豚帝に進化しました》
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