Sランクとの衝突


 1体でもAランク、またはそれに相当する戦力をぶつけなくてはいけないAランクの魔物の出現に魔物たちも増え、さらにそれを統率しなおかつ戦況を変えかねない力をもったSランクの魔物“キング”たちの出現。


 Aランクの魔物たちはAランクの冒険者、それに匹敵するパーティのやつらが相手をしてくれるだろう。


 問題はそれに全力が裂かれるのと“キング”たちによって連携をとるなどの統率された魔物たち。

 そしてそれを統率するSランクの“キング”たちだ。


 俺やSランクの冒険者はキングたちを仕留めるのがいいのだろうがキングの元へ行くのを拒むように配置された魔物たちのせいでなかなか近づけない。こいつら一体どこからこんなにわいてくるんだ?

 ……このままじゃ押し切られるぞ


 どうしようかと唸りながら魔物どもを殲滅していると


「カルディアくん、少しいいかな」

『ん?テイルか』


 テイルが話しかけてきた。

 こいつは昨日の集会で話しかけてきたSランク冒険者の1人だ。ザ優男って感じで甘いマスクに話した感じは性格もよさげだ。さぞおモテになるでしょうな!


「この状況じゃあのキングたちを倒さないとこにはこちらが押し負ける。でも魔物がいてキングたちには近づけない……そうだろ?」

『ああ。そうだな』

「協力してくれないかな。僕たちのパーティ……“明星”が魔物を殲滅し、魔法で道を作る。カルディアくんにはその魔法の準備までの護衛、そしてキングの討伐をしてもらいたい」


 こいつらのパーティ“明星”はSランクの冒険者3人で構成されたパーティだ。全員が高レベルの魔法使いだ。


『だがキングの周りにはAランクの魔物もいる。雑魚どもを潜り抜けたとしてもそいつらを相手にしながらのキング討伐は、はっきり言って無理だぞ?』

「私も協力します」

「お、メルテーナくん」

「お久しぶりです、テイル」

『知り合いなのか?』

「うん。今まで依頼で何回かね」


 メルテーナが協力してくれるならありがたいが。


『協力といっても2人でしかけてもきついと思うが』

「それには考えがあります。まず、“明星”の方々が魔物を殲滅、道を作ります。できた道を私とカルディア様で進みます。ここまではいいですね?」

「……そこからなにか考えがあるのかい?」

「はい。キングの元まで近づいたとしても周りにいるAランクとキングを“同時”に相手にとるのは厳しい……ならば私がAランクの魔物を相手を足止めします。その隙にカルディアさんはキングと他の魔物を分断、一騎討ちへと持ち込んでください」

『お前は1人であの量のAランクを相手にして大丈夫なのか?』

「それは……」


 こいつもSランクの冒険者。人外と呼ばれる力を持つとは言え10は超えているだろうAランクの魔物たちを1人で相手にするのは無理だろう。


「俺たちも協力する!」

「君たちは?」

「代表して自己紹介させてもらう。Bランクパーティ“集いの刃”を率いるサルスだ。話は聞いていた、他のパーティたちにも声をかけて協力を仰ぐ。集まったやつらとメルテーナさんでAランクたちを相手にする……どうだろうか?」

「うん!それならいけると思うよ!」

「私も同感です」

『俺も異論はない』

「なら早速準備に取り掛かろう。サルスくんは人を集めて。カルディアくんとメルテーナさんは僕たちの護衛だ!」

「「『了解!』」」


 これならいけるだろう。

 あの魔物たちを殲滅するほどの魔法だ。あいつらの腕は疑っていないが準備にはある程度時間がかかるだろう。俺ならそこまでかからないが人間には“詠唱”があるからな。

 俺に殲滅を任せないのはキングと戦うために消耗させないためだろう。

 同じSランクでも魔物と人間。実力では俺の方が上だ。


 絶え間なく襲いかかってくる魔物を俺とメルテーナで討伐していく。

 そうして数分がたったか?サルスが集めてきただろう冒険者たちパッと見た感じ十数名が待機しテイルたちの魔力の高まり具合からしてもうすぐだろう。


「できた!今から魔法をあの群れにぶち込む!準備はいいかい!!」


『問題ない!』

「大丈夫です!」

「「「「「「うぉぉぉぉお!!!」」」」」」


「〈ギガファイヤーウェイブ〉!!」

「「〈ギガトルネードカッター〉!!」」


 テイルの放った〈ギガファイヤーウェイブ〉。青く、高密度の炎が波となって魔物に襲いかかる。

 明星の他2人が放った〈トルネードカッター〉は巨大な竜巻が魔物たちを巻き込み、その強い風によって切り刻みながら進んでいる。

 トルネードカッターによってギガファイヤーウェイブはさらに勢いを増し、さらにトルネードカッターも炎を纏って“蒼炎の竜巻”となりさらに威力は増した。


 これが明星の魔法か。

 ……それぞれの魔法の質もさることながら、それぞれの性質によってさらに強化もされている。さすがだな。

 しばらくたつと魔法が消え失せ、そこには魔物の姿はない。


「今だ!行け!!」


「「「「「「おおぉぉぉぉぉお!!!!」」」」」」


 メルテーナが先頭に。その後ろに冒険者パーティ、そして俺が続く形でキングへと接近する。

 キングは無事みたいだが何体か周りにいたAランクの魔物も明星の魔法を食らったようで手合のやつらもいる。

 メルテーナと冒険者パーティたちがAランクの魔物と交戦し始めた。


「カルディア様!今です!!」

『おう!任せとけ!!』


 身体強化を使って跳躍。飛べはしないが翼を広げて滑空するようにしてキングへと近づく。

 遠目からはわからなかったがオークキングか!


『さぁ!後ろで縮こまっているオークの王さんよ!俺と一騎討ちと洒落込もうか!』

「ガァァァァア!?」


 滑空のそのままの勢いでオークキングに突撃し、押すようにしてメルテーナたちから距離を取る。


「ガァァア!!!」

『吹っ飛びやがれ!』


 そこから纏いで電気を纏わせ、身体強化のかかった腕で殴り飛ばした。

 これでだいぶ距離は離せただろう。


「ガァァァァァァァァァァァァア!!!」


 随分と怒ってらっしゃるようで。


「グルァァァァァァァァァァァア!!!」


 さて、この世界に生まれてはじめての同格との戦闘だ。気を引き締めてかかろうか!


 

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