大きな出会い


 人間との会話を果たしてから3日がたった。


 この3日間は新しい寝床の探索もしながらこの前作った魔法の検証、新しい魔法の開発に勤しんでいた。

 やっぱり地球にはなく憧れたものが自分の思い通りに操れるというのは楽しい。

 男心がくすぐられ……なによりカッコいい。


 あの赤髪の男との戦闘で新たに思いつき、使い勝手も良さそうだから開発し狩りで試している。


 まずは【魔力探知】

 これは男が爆発する魔法を放ったときに感じたあの感覚が魔力ならば、それをもっと広い範囲で感じることで索敵や魔法の察知ができるのでは?と考えたからだ。

 これは魔法って言うよりは技能って感じだな。

 ものにするにはかなり大変だったが、使い慣れたいまでは獲物を探すときなどに役に立っている。

 【魔力探知】というスキルを習得し魔力がより鮮明に感じられるようになったおかげで魔力操作技術も格段に向上し魔法の威力も上がりコントロールも上手くなった。


 2つ目は〈麻痺撃〉

 ……ネーミングセンスは…許せ。

 これは男が俺の魔法を受けたときに痺れていたのをみて上手く電力をコントロールできれば相手を行動不能に……すくなくとも行動の阻害をできるのでは?と考えた。

 この技が1番魔力操作技術向上の影響を受けていると思う。

 間違いなく【魔力探知】を身につける前の俺じゃできなかった芸当だ。


 最後に【威圧の咆哮】

 属性魔法以外の無属性魔法とでも呼ぼうか?

 相手を威圧する意思をもった咆哮に魔力を強化するイメージをこめて乗せる。

 正直できたらいいなと面白半分でやってみたができてしまった。

 魔法ってなんでもありだと思う。

 強化具合や意思強さによって威圧の強さも変わるが効果は相手の強さや気合?も影響されるようだ。

 子を守るために戦った親の魔物には効きづらかった。確固とした「守る」という意思や決意があるのだろう。

 

 これらを試しつつも寝床の探索をしているとまた人間の姿が。

 筋骨隆々のおっさんとこの前の女の2人か、この前とは違う男の3人か。

 なんかこっちきたぞ。


「失礼する。すこし時間をもらっていいだろうか?」


 おっさんが代表して俺に話しかけてきた。

 これからやることはいつもと変わらないし、すこし休んだところでどうにかなるわけじゃないからいいか。


『ああ、大丈夫だ』

「俺は彼女たちが所属する冒険者ギルド、カーナ支部のギルドマスターだ』


 冒険者にギルドマスターか。

 異世界だなぁ……!


「先日彼女が伺っと思うが、俺はギルドの代表として確認のためにきた。何度もすまないな」

『いや、俺も詳しくはわからないがドラゴンとは人間にとってそれほどの存在なのだろう?悪意はないようだしな。気にしていない』

「感謝する。今回は確認とこれからの関係についての話に来た」

『これからの関係?』

「ああ。早速本題に入るがドラゴンは俺たち人間にとっては脅威だ」


 俺がどのくらいの強さかはまだいまいちピンとこないが、わざわざこうしてトップが話にくるということは相当なのだろう。


「俺たちギルドは無闇にお前に干渉しないとする。かわりにそちらも無闇に敵対しないでくれと言うものだ」

『この前みたいなバカがいるからあまり信用はできないのだが?』

「その件についてもすまない。ギルドの依頼や規則を守ろうとしないバカもいるのだ……。そういったバカ……そちらを害そうとする輩には罰を課し、そちらを攻撃した場合には遠慮なく反撃してもらって構わない」

『ふむ……まぁ、こちらとしても敵対する気はないし、逆に攻撃されても面倒だ。それで構わない』


 元人間だったのもあり逆に仲良くしたいのだがな。


『感謝する。……ところで最近この森の魔物が減っているのだが、心あたりはないだろうか?」

『ないな。俺もここに住み始めたのは最近だ。前の数すらしらない』


 「住み始めた」ってて言うよりかは「生まれた」んだけどな。


「そうか。わかった」

『用件はそれだけか?』

「ああ。では私たちはこれで失礼する」


 あの男しか喋らなかったな。

 あれを話すだけにここまできたのか…ご苦労なこった。

 人間は集団で行動する「社会」だ。いろいろあるんだろう。

 

 

 

++++++++++++



 ギルドマスターと名乗る男と出会った翌日。


 この生活にも慣れ始めた。相変わらず新しい寝床の目星はないが、人間では体験できなかったことが多くて毎日が楽しい。

 今日もすでに日課となっている探索と狩り(これしかやることのないともいう)にでかけた矢先……。



『キャァァァァァァッ!!!』


 ん!?なんだ?女の悲鳴か……?

 どうする……助けに向かうべきか……

 ……俺はドラゴンだが…元は人間。

 明らかに助けを求めた女の悲鳴を聞いて見て見ぬふりができるほど畜生に落ちたつもりはない……!


 俺は【身体強化】と【魔力探知】をつかって全速力で悲鳴の聞こえた方向へと向かった。




++++++++++++



 ここか!


 目の前には尻餅をついて震えている前世の俺とおなじぐらいの16歳ほどの女の子…とそれを面白がるように笑みを浮かべたオークたちがいた。

 

 オークたちに向かって〈電撃剣〉を放ち殲滅する。


 女の子は突然現れ、目の前の脅威を消し去った俺にオークどもを上回る脅威を感じたのか顔をさらに青ざめている。

 さすがにこのまま放置するわけにはいかないか。


『おい、大丈夫か?』

「なっ……!しゃ……ど、ドラゴン……!?」

『こちらに敵意はない。お前の声を聞いて助けに来ただけだ』


 女の子は俺の言葉を疑いつつも目の前でオークたちを殲滅した事実といつまで経っても敵意を向けない俺に納得したのか、糸が切れたようにその場に倒れ込んだ。


 ……このままにはできないか。


 助けたのならば最後まで責任をもとう。

 とりあえずは寝床に運んで……治療や看病なんてできないから護衛…かな。


 爪で傷つけないように注意しながら女の子を抱え寝床へと帰宅した。


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