リスアとの生活


『目が覚めたか?』

「っ……!?」


 助けた女の子を連れ帰ってから一晩が開けた。

 襲われてこたえたのかずっと眠りっぱなしであり、朝になった今やっと目を覚ました。

 まだ状況を飲み込めてないのか、起きたらそばにドラゴンがいたことに驚いているのかそのばで固まってしまっている。


『一晩眠りっぱなしだったからな。どこか調子の悪いところはないか?』

「は…!い、いや!大丈夫よ……です」


 もう一度話しかけるとはっとしながらも返事を返してくれた。

 それにしても取ってつけた「です」だな。聞く感じ素がこの口調というわけじゃなさそうだ。敬語を普段使わないのか?


『昨日のことは覚えているか?』


 女の子はこくりとうなづいた。


『あの後気を失ったお前をそのままにするわけにもいかず、俺の住処に運ばせてもらった』

「そうなの…ですか。ありがとう……です」


 特別警戒はしてないようだがすごい緊張しているようだ。

 まぁ、ドラゴンは人間にとって脅威みたいだし、俺も人間だったときにドラゴンに出くわしたらビビるどころじゃすまなかっただろうし。


『それで?これからどうする?』

「………」


 そう尋ねたとたん、俯いてしまった。

 なにかあるのか?


「帰る場所がないの……です」


 帰る場所がない?異世界にはよくあることなのだろうか?……なわけないか。

 なにかわけありなのだろう。


『……俺はお前を助けた。最後までその責任はもとう。お前の身は守るし、当分ここにいてもらっても構わない』

「いいの……ですか?」

『ああ。構わん』

「……それではしばらくの間お世話になろうと思うわ……ます」


 女の子はしばらく考えたあと、そう言った。


「じゃあ、よろしく……です」

『おう。それとその取ってつけたような敬語……無理してそんな喋り方をしなくてもいいぞ?』

「え、でも」


 あきらかに無理して喋ってる感じだしな。

 無理してまで敬語を使っているのは俺がドラゴンだからか?…もしかして……。


『お前とは仲良くしたいと思う。俺はドラゴンだがこれからしばらく一緒に暮らすんだ。素のほうがいいだろ?』

 

 人間に対してなめられないようにしていた偉そうな喋り方と高圧的な態度をやめた。

 急に雰囲気の変わった俺に驚いたのか、驚愕した顔をしたあと、また何かを考え始め


「わかったわ」


 と短くそう口にした。






+++++++++++++++




 女の子……名前は“リスア”と言うらしい。

 リスアがここに住み始めて1週間がたった。


 最初は会話も少なかったがすこしずつ慣れてきたのか最近ではある程度喋るようになっていた。

 こうして誰かと話なせるとはとても楽しい。今まで喋ってきたのは襲ってきた連中だったり、ドラゴンとして警戒した相手だったりで素での会話は初めてだったしな。


「ねぇ、いつからここに住んでるの?」

『最近生まれたばかりでそれからだな』


 この1週間は外にいる時間よりも寝床にいる時間のほうが多い。

 リスアを1人にしては万が一があるからな。

 飯などに関しては俺が狩ってきた肉を調節した【電撃魔法】で焼いたものを食べてもらっている。

 初めて電撃魔法を見せたときは驚かれて、「それはなんなの!?」と問い詰められ冒険者の女と同じような説明をするとまた驚かれた。

 やっぱりこの魔法を使うのは俺だけなのか?

 風呂はないので湖で軽く済ましてもらっている。


「それにしてもあなたに名前はないの?呼ぶときにいつも『ねぇ』とかじゃ不便よ」


 そう言われてみれば名前……。

 前世では“裕人(ひろと)”という名前があったがステータスは空欄だったから前世の名前は反映されてないのだろう。

 うーむ……せっかくドラゴンに転生したんだ。違うカッコいい名前がいいな。


『名前はないなぁ。……リスアがつけてくれ』

「え?私でいいの?」

『リスアが初めて仲良くなった人間だからな。俺も名前が欲しいし』


 そう言うとリスアはしばらく考え。


「カルディア……あなたの名前は“カルディア”よ」

『おお!いい名前だ』

「そ、そう?ありがと…」


 カルディア……いい響きだ……!

 文句なし!



名前 カルディア

種族 電撃幼竜

Lv.64


スキル

【斬撃】【電撃魔法】【電爪】【身体強化】【魔力探知】【威圧の咆哮】


 うお!?びっくりした……

 ステータスって急に出てくるもんなんだな。

 ちゃんと名前として認識されたんだな。


『よし!今日から俺の名前は“カルディア”だ!!』






+++++++++++++++



 リスアと暮らしはじめて2週間がたった。

 今ではだいぶ打ち解けており、気軽に話せるぐらいにはなっている。

 俺はリスアにこの世界のことをいろいろ聞いた。


 まずこの国の名前は「アレストール王国」と言うらしい。

 世界で有数の大国で領土も広く、人の行ききも多いらしい。リスアの言うには善政を敷いているいい国だそうだ。

 しかしこの国の話をするときはすこし苦しそうな表情をしていたが…なぜだ?


 人類とされるものは人間……人族のほかにも、獣族、エルフ族、魔族、ドワーフ族、龍人族がいるそうだ。

 

 まさにファンタジー。


 種族間の関係はいいらしい。ラノベみたく迫害の対象とかはいないのか。いい世界だ。


 冒険者は世界各地に支部がある巨大組織らしい。

 ランクを下からE、C、B、A、S、SSそして特別ランクのXらしい。

 Sぐらいになると人外とされ周りからは畏怖されはじめ、SSはさらにそれを超える規格外……化け物、Xはもはや神の領域と呼ばれるほどだそうだ。

 もちろん尊敬もされ人間社会でもそれなりの権力があるらしい。Xにもなると国の王でも頭を下げるほどらしい。

 突然数は少なく、Sが7人、SSが4人、Xが2人だとか。


 ドラゴンについては魔物に分類され、

 幼竜、成龍、属性幼竜、属性竜、竜王の種類があり、後者になるほど強さ、脅威が増すらしい。

 魔物にも脅威度を表すランクが設定されているらしく、当然ある程度の個体差はあるが

 幼竜がB、成龍がA、属性幼竜がS、属性竜がSS、竜王がXとなるそうだ。

 属性竜とただの竜の違いは魔法が使えるか使えないか。幼竜のころに魔法を身につけることがなくそのまま育つか、魔法を身につけるかで進化の先が変わり、使える属性ごとの属性幼竜に進化し、属性竜になるらしい。

 竜王はそれぞれの属性竜の頂点でまさにXランクにふさわしい強さをもつ存在らしい。

 〈人化〉で人の姿にもなれるらしく、国の守護竜として人間に友好的な竜王もいるのだとか。


 そもそも竜という種族の個体数が少ないのでそうそうお目にかかることはないらしいが。


 ちなみに電撃幼竜って聞いたことあるかと聞いてみたが、やはりないらしい。


 魔法は詠唱を用いて使うものらしい。

 俺の使っている無詠唱は人間にも使える者はいるが、超高等技術で使える人はそれこそ冒険者でいうランクS以上でも稀だそうだ。

 属性幼竜以上はだいたいが高い知能を持つため無詠唱で魔法を使ってくることがほとんどらしいが。


 リスアは博学なのか、聞けばだいたい答えが帰ってきた。

 俺も多少はこの世界のことを知れたと思う。


 そろそろ進化して空を飛びたいとかそういう思いもあるが、今のこののんびりとした生活もいいものだ……。


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