戦闘と会話


 この体……ドラゴンの鱗なら大剣を受けれるか…?

 ……大丈夫な気がする。っていうか大丈夫であって欲しい。

 赤い髪の男が上段から振り下ろした大剣を右手を使って受け止める。


「オラァッ!」


 ガキィン!


 おぉ!受け止めれた!さすがはドラゴン。


「チッ、かてぇーなァ!」


 そういいながら男はなんども大剣を振り回して攻撃してくる。

 ドラゴンの動体視力と硬さで全て受け止めているがやられっぱなしっていうのも面白くない。

 反撃だ!


 男の攻撃を今度は受け止めるのではなく弾き、その反動で生まれた隙を反対の腕でなぐりつける!


「ガッ……カハッ……」


 男は5メートルほどぶっ飛んだあと苦しそうに腹に手を当てながらもがいている。

 ………いや、よく人間が5メートルも吹っ飛ばされて無事でいられるな?…ファンタジーだからLv.アップか魔法で頑丈になってるのか?


「いってぇなァ!!本気でぶっ殺してやるぞ!!」


 なに!?今までは本気じゃなかっただと……!?

 

「我が魔力を喰らい、火の槍よ表現せよ!〈ファイヤーランス〉!!」


 ん?なんか詠唱みたいなのを言った後に火の槍が。

 ……詠唱っているの?まさかドラゴンが特別?

 なぜだ?…………さすがドラゴン?


 って、やば!はじめて聞く詠唱っぽいのあーだこーだ考えているうちにもう火の槍……〈ファイヤーランス〉が目の前に!

 あ、当たる……!


 ボスン……


 ……あ、なんか大丈夫だったわ。なんなら無傷ですわ。

 すっすげぇー。改めて実感してみると自分の体、ドラゴンの体にびっくりするな。

 その後もいくつか同じのを放ってきたが全て効果はなかった。

 

「我が魔力を喰らい、爆ぜろ!〈エクスプロージョン〉!」


 俺の体の中にある魔力の感覚…地球では感じたことのない独特な感覚なので言葉にはしにくいが、それが俺の周りに集まっている……?

 さすがにこれは危なそうだ。

 横に3メートルほどサイドステップで避けた。

 するとさっきまで俺のいた場所が爆発した。

 …まともに当たっても致命傷とまでならなかっただろうけど、無傷とはいかなかっただろうな……。


「これまでやっても無傷!?認められるか!!我が魔力を喰らい、我が体を強化せよ!〈フィジカルブースト〉!」


 再び男が大剣を担いで向かってくる。

 だが、さっきまでと比べて速度が段違いだ。

 〈身体強化〉っと言っていたからその効果か?やっぱりできるんだな。……それにしては効果が低いような気がするが。


 だがこちらとしてもただで俺のもとへこさせるわけにはいかない。

 〈電撃剣〉を5本ほど(この数じゃまだ〈電剣百華〉とは言えなさそうなので〈電撃剣〉だ。)を男にぶつける。


「はぁ!?なんだこれは!?」


 男は困惑した様子で対応しようとするも、5本のうち1発が命中した。


「ガァァアッ!!」


 男の反応からしてやっぱり【電撃魔法】はないのか?

 

 はじめての電気の感覚だからか、単純に男の身にはダメージが大きかったのかその場で固まる男。

 その隙を見逃すはずもなく一気に距離を詰め、次は仕留めるために爪を使った斬撃を振り下ろした。


「すみません、そこまでです」


 さっきまで傍観していた黒髪の女が俺と男の間にはいって剣で俺の爪を受け止めていた。


「私に戦う意志はありません。どうかおさめてくれないでしょうか?」


 そっちから先に仕掛けてきて「戦う意志はない」だと?どういうつもりだ?


「この者は先ほどからドラゴンを討伐すると言って聞かず、相手が属性竜ならば痛い目をみて現実を見てくれると思って傍観してましたが、さすがに黙って殺されるのを見ているわけにもいかず…… 」


 見る限り言っていることに嘘はなさそうだ。

 傍観せずに止めてくれと言いたくはあるが、この女に非があるわけでもないし、この女に負けるとも思わないが戦いたいわけでもない。

 人間とは仲良くしたいしな。ここは引いておこう。


「ありがとうございます。……ところで今更な質問ですが、あなた様は属性竜で知性はお有りでしょうか?」


 幼竜だが属性竜?なのには間違いないだろう。『電撃』幼竜だし。

 顔を縦にふって肯定を表しておく…これで通じるか?


「属性竜ならば人並みの知能を持つことは本当だったのですね……本当に先程はすみませんでした」


 属性竜ならば?普通の幼竜は知能はないのか?俺は持っていたんだが。

 おそらく俺が転生者だからか。

 

「質問ばかりで申し訳ないのですが、『念話』などでお話しいただくことは可能でしょうか……」


 『念話』?そういう魔法があるのか?使えないが……やってみたらできるか?

 こう……念じて言葉を飛ばすように…テレパシー?みたいな感じで……!


『テステス、聞こえるか?』

「っ!?き、聞こえます!」


 おお…できちゃったよ。

 …属性は俺の中で「電気だろ!」ってイメージが固まって電撃魔法以外だめだったが、仮に属性魔法?以外は例外だからいける感じか。


『先程の質問だが属性竜で間違いはないと思うぞ。まぁ、属性幼竜だが』

「私たちはこの森にドラゴンが現れたと報告を受け、調査しにきた者です」

『その割にはいきなり攻撃してきた気がするが』

「それに関してはたびたび申し訳ありません…あの男になんど調査と言っても聞かないもので…あなた様に対して攻撃をおこなった後も先程の理由から傍観しておりました」

『まぁ、怒ってはないからいいのだが』


 ドラゴンだからすこし偉そうに喋っておこう。

 なめられて下に見られても困る。


「確認ですが、あなた様は人間に対して無闇に敵対することはないのでしょうか?」

『そのつもりだ。俺としても人間とは仲良くしたい。……まぁ、先程のようにそちらから襲ってきた場合は例外だが』

「私たちに人間にとってはドラゴンはたとえただの幼竜であれかなりの脅威なので、そのお言葉が聞けて安心しました。もちろん、こちらから攻撃した場合はその者の責任ですので構いません」


 なるほど。ドラゴンは人間にとってはかなりの脅威なのか。

 ただの幼竜でもということは属性竜にもなるとそれ以上か?


「あなた様の容姿からして属性竜なのではと考え、ならば知性もあり敵対しないで済むのではないかと調査しに参ったしだいです」


 ドラゴンだからといって討伐ではなく、調査を選んだのはそう言った理由か。


「……鱗の色からしてあなた様は新種の属性竜かと判断したのですが、やはり先程の魔法は…」

『あぁ、俺は「電撃幼竜」でこの世界では俺だけらしいな』

「電撃……?

『電気のことだ』

「電気?」


 そこからか。


『……自然でいうと雷のようなものだ』

「なっ……!?雷をですか!?あれを生物に操れるとは…」

『意外と身近にあるものだぞ?金属を触った時にバチッとするのも弱い電気だ」

「あれも電気なのですか……」


 やっぱり電気を操ろうって発想がなかったみたいだな。

 まぁ、火などと違って目に見る機会は雷などと大規模でしかないから仕方ないないことなのか?

 ついでに気になったことも聞いてみるか。


『あの男の魔法を使う前に言っていた「言葉」は魔法を使う上で必要なものなのか?』

「詠唱のことですか?…ドラゴンは無詠唱で魔法を使えると…」


 やっぱり詠唱ってやつか。

 それに詠唱をするのが当たり前で無詠唱がめずらしいものだと。


「無詠唱は具体的なイメージを持ち高度な魔力操作技術がないと無理なものですが、そうも当たり前に使えるのならば属性竜ならば人間よりも高い知能と魔力操作技術を持つことになるのですね……」


 あんまり具体的なイメージではなかったと思うが?

 人間の感覚では具体的なレベルがドラゴンじゃそうでもないということか?

 ……ありえそうだな。存在がファンタジー代表みたいなものだから不思議ではない。


 あ、結構時間が経っているな。

 これじゃ狩りの時間がなくなってしまう。

 新たに作った魔法を試したいのに。


『…用件はそれだけか?』

「あ、はい!」

『では俺はこれで』

「はい…」


 俺はそこから離れた。


 後ろを見ると女も電気か殺されそうになったショックかで気絶していた男を担いで去るところだった。


 ふぅ…なんとか切り抜けたな……。


 人間との戦闘も、会話も疲れた……。

 今日はもう遅いし、やっぱり狩りはやめにしてこのまままっすぐ帰って寝よう……。

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